第十四話 過保護三馬鹿トリオ
それから会議室に後日案内され、私も招かれた。
ミディ団長は忙しそうにしながらもついてきて「行こう大事なことだね、きっと」と真面目に言っていたから、何か問題でもあったのかと思ったのだけれど……。
席に座れば茶菓子とお茶が用意され、各自に前に試着した私のドレスデザイン画が配られて一気に顔を赤くしてしまった。
まさか。今から始まるのは。
「それではこれより、奥方様のドレス投票兼魔崩れ作戦会議を始めます!」
シラユキが眼鏡をかけながら、ホワイトボードを叩き、気合いを入れていた。
横に居る兄様の袖を引っ張り、様子を見てみると、兄様は「どちらも大事だな……まさに兼任すべき話題だ、効率がいい」と唸っていた。
効率どうみたってよくないでしょう?!
真面目な話と、不真面目な話が混ざってない!?
「まず最初のお色直しにこの蒼いカクテルドレスをお勧め致しますわ。黒いベルラインの素敵なドレス。ですが側近のラクスター曰く、水色のドレスもお勧めとのことです。桃色と水色はとてもグラデーションとして映えるとかで」
ちゃっかり何意見通してるの、ラクスター!? 興味なさげだったのに! 絶対場を引っかき回したくて言ったでしょう!? 目が合えばあの堕天使、てへって笑っていた。
「あ、あの、アルギス退治の会議は……」
「ウル様! 今は此方が大事な話です! 後で宜しいのです。ウル様だって、一生に一度のお話ですのよ! もっと話に集中してください!」
ぎゃ、逆に怒られてしまった。
「白いドレスは駄目なのか、デザイン違いの」
「お目が高いですわね、勇者。それも考えたのですが、やはり女性目線ならではの意見としては色違いのドレスを最優先します。白いドレスは、式場でまっさきに着ますので」
「魔王の花嫁としては、漆黒のドレスは必須だと思うんだね!」
「ミディ様、魔王の花嫁イコール黒いドレスの時代はもう古いのです!」
「な、何だって!? 僕は時代に取り残された者だというのかね?!」
「勇者との間を取って、グレーはどうですじゃ??」
「セバス様、グレーは今ひとつ映えないと思いますわ!」
「あの……ゼロはどのドレスが……いいの?」
私は挙手し恐る恐る聞いてみると、視線が一気にゼロに集まる。
ゼロは少し考え込んでから、ふっと笑う。
「無論、全部着て貰う」
「そうか、全部着るって手があったか! 見直したぜ、魔王!」
「なるほどな、うちの姫さんならどれも似合うな!」
……私は、ゼロ、お兄様、ラクスターの三人はきっと感性が似ている上に、私を大事にしすぎているような感覚を覚えた。
擽ったい感覚で、私はデザイン画に顔を埋めた。
私の保護者三馬鹿トリオだわ……!!
「提案なんだがな、真っ赤なドレスもいいだろう」
兄様の言葉に場の衝撃が走る。
「そうね、血のように炎のように赤いドレス……素晴らしい提案だわ! 流石実兄様、というわけで、最初のお色直しは此方のデザインを赤くしたドレスで如何でしょう!?」
『異議なし!』
誰かこのツッコミ不足の空間から助けて……。
会議が夕方まで続き、休憩を挟み終わった頃に、やっと魔崩れの作戦会議が始まった。