第十二話 真の花嫁
治療行為を続けていくと、一部の魔物達は徐々に婚礼のことを口々に噂し始めた。
楽しみだと口々にし、人間の文化について聞く魔物もいたりしたけれど、それはゼロからあまり口外しないほうがいいと止められている。
それこそ人間の弱点となる部分がばれたら、意図的ではないといえ種族を裏切ることになるだろうって。
何だかんだでゼロは人間に好意的なのかもしれない。元から人間が好きなのかもと感じた。
休憩に魔力補給のポーションを飲んでいると、ミディも休憩中なのか隣にやってきて腰掛ける。
「ミディ団長、暗い顔ですね、どうしました?」
「面倒な奴に絡まれた、会議の時に」
「会議だったのですね。道理でさっきまでお姿が見えなかったと」
「うん……次の戦いで、今度から治癒団を連れていってもいいのではという意見があってだね。勿論断ったのだけれどね。それは、だってフェアじゃない。人間側が代表して闘うのは勇者や戦士。傭兵だ。治癒する教会もあるのだろうけれど、彼らの物資には限りがある。僕たち魔物は限界が人間と比較するとないんだね」
「人間のことお好きなのですか?」
「いいや、僕もかつて家族を勇者に倒された身だ。嫌いだし、憎い。しかしだね、それ以上に敵とは言え相手を侮辱する奴も、見下して利用する奴も嫌いなのだね。何より……戦場は危険だ、そこに貴方を連れて行くのは嫌だと思う」
「……どうして、ですか。頼りないですか、私」
「貴方は元人間で今は魔物だ。戦い合う光景で冷静ではいられないだろうし、辛いだろう?」
「……ミディ団長。私、分かっているんです。いつか。いつかは、人間を見捨てないといけないって。人間を嫌わないとって。それは兄様だって例外じゃありません。というか、兄様が一番の私達の敵ですから。でも……和解の可能性も、いつかはって思うんです。可能性を捨てきれない」
「……強いんだね、君は。もしも本当にそれができたなら。その時こそ、真に魔王の花嫁なのだろうね。誰も否定できることのない」
「そうありたいんです。生き返らせてくれた、ゼロのために」
「本当にそれだけかね? 恋慕とかはないのかね? 僕はちなみに、薬開発が恋人だね!」
「ミディ団長の口から聞くと、違和感しかないですね」
くすくすと笑い合い、休憩をもう少しで終えようとしたところに、シラユキが飛んで部屋に入ってきた。
「勇者がきたわ、セバスチャンとラクスターを連れて! 二人とも傷一つなく帰ってきたの、至急来てあげてくださいませ、ウル様!」
「ミディ団長、すみません、失礼してもいいですか?」
「きっと魔王様命令でもあるから遠慮無く行き給え。そのまま仕事は今日は終わりでいい」
ミディ団長の計らいに感謝し、私はシラユキと一緒に駆けていった。