世界の崩壊を変える為
かつては人々の笑顔溢れ、高層ビルが沢山立ち並び、自然派豊かだった。しかし、今は人々は誰1人として姿がなく、高くそびえ立つビルは崩れ去り、大地は激しく燃え上がり焦土と化している。そんな世界を1人の男が寂しく歩く。
「はぁ…… はぁ…… ここもダメか……」
男は絶望に駆られながらも歩き続ける。服はボロボロで髪色は赤い。左腕がなく、歩くのが辛そうだ。よく見ると右足も本来の味ではないようで義足だ。男はそんな崩壊しきった街を見て呟く。
「世界の終わりか…… あれからどれ程だったのだろうか。 僕はこんなにも強くなったのにもうこの世界には誰もいない。 何故なんだ! この力があればどれだけの者を救えたか!」
そんな悲痛な思いを叫ぶが、誰も答えない。
(分かっていたことだ…… 僕は最後にやるべきことがある。 だからここに来たんじゃないか)
男は赤い石を取り出し、頭に掲げる。空は地獄と化した地上とは違い、青く平和である。それを見て何故だか涙がこぼれ落ちる。
「なんでだろうな…… もうこの世界を救うのが無理だと分かってしまったからか? この街でこれを使えば本当に過去に繋がるんだよな? 頼む…… 僕は無理だったけど、できるだけ多く救ってくれ。 だから、早く気づいてくれフェニックス」
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その世界はいくつもの島と国に分かれている。その中の1つの小さな島をジーナスといい、A〜Z地の26つに分かれている。形状は日本を彷彿させ、星も地球に酷似しており現代を想像すればいいだろう。しかし、その世界は技術が高いので現代よりも少し先を思わせる。
「頭痛い…… そうか、もう朝か……」
赤髪の20前半であろう青年がベット起き上がる。彼の名前は鳳凰寺 隼人、昨日正式に職に着いたところだ。そして、今は時間にしては7時50分を針が指しており、そろそろ準備をし始めないのいけない。
「なんか覚えてないけど変な夢だった気がする…… まあ、気にしてもしょうがない。 今日から討伐士の1人で働けるんだ。 楽しみだな」
満面の笑みでそう呟く隼人はベッドから降りると支度を始める。パンを食べながらスマホを弄る。そんなことをしていると30分が経ち約束の時間となる。玄関を出るとそこにはツインテールの美少女と青髪の眼鏡が立っていた。
「やっと出てきたか。 何度も連絡しただろう」
「ごめん、翔太」
彼の名前は南雲 翔太。小さい頃からの幼馴染である。
「私達が迎えに来てあげてるんだから遅れずにでてきなさいよね」
「本当にごめん、歩美」
彼女の名前は佐藤 歩美。高校時代に友達となり、同じ道を進んでいくにつれて迎えにきてくれるまでの関係になった。
「それじゃあ、行くぞ」
「ああ、行こう」
「楽しみね、私達の初めての仕事」
3人は語り合いながら彼らがこれからよく使うことになるだろう討伐士司令本部に向かい始めた。
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G地は約18の地区に分かれている。他の地も同じようなものであり、討伐士司令本部は1つの地に3つほど存在する。そもそも討伐士とは何か。それは獣魔というどこから来たかわからない存在を倒す為の存在である。討伐士になるには専用の大学に出る必要がある。獣魔は人類を脅かしている––訳ではなく、寧ろ獣魔は狩られる対象だった。
「なあ、翔太」
「なんだ隼人」
討伐士司令本部の更衣室で隼人に問う。
「ここには仕事服に着替えに来るだけだよな?」
「今のとこはそうだな」
「だったら来なくていいんじゃないか?」
「今はそうだが、もし緊急になったとき必要だ。 だから、我慢しろ」
「そんな緊急が必要な時は来ないだろ。 だったら楽な職業No.1にはならない思うけど」
「まあ、それは言えてるな。 1つの地区に3千人を超える人数がいるのだからどんな奴が来ても安心だな」
「そういうことだ。 よしっ、着替え完了! 翔太も早く着替えないと歩美にどやされるぞ」
「大丈夫だ、あいつはいつも着替えに10分以上かけている。 今はまだ5分程しか経ってないから大丈夫だ」
「そうか…… じゃあ先行ってるぞ」
「ああ、後で行く」
隼人は余裕たっぷりのゆったりとした足並みで更衣室を後にした。