騙された!
「マスターどうなさいましたか?」
俺はその場に崩れ落ちた、やられた……騙された。
「えっと……キャンセルって出来ませぬか?」
とりあえずダメ元で聞いてみた。
「キャンセルでございますか? キャンセルは出来ませんが辞める事は出来ます、現に前当主は卒業すると城をお出になられました」
くすんくすんと泣きながらもベルは俺にきちんと説明をする。
「じゃあ……俺も」
「ただし、一度魔王におなりになられますと、当然もうどこの国にも受け入れて貰えませんが宜しいですか?」
「は?」
「何処かでひっそりと誰にも見られない様に暮らさなければなりません」
「えっと……見つかったら?」
「モンスターに狩られた遺族が討伐しに来ます」
「ええええええ、でも魔王なら返り討ちに」
「いえ、もう魔王ではありませんから、援軍は来ません、護ってくれる人は居ません、一人では数に押しきられてしまいすね、恐らくかなりの賞金も掛かっていると思いますので」
「マジか……」
「引退なされますか?」
「いや、ちょっと待ってくれ」
は? なんだこれ、どういう事だ? そ、そうだ俺は書簡を届けに来たんだ、これを渡せば分かってくれるかも……
「えっとベル、これを多分君に渡せと……俺はそう言われただけなんだ」
そう言って俺は筒を渡す、ベルは筒を開けると中の手紙に目を通す。
「畏まりました、これで完全にアレス様が魔王として認定されました」
「え?」
「手紙は2通、1通は鍵の正当な受取人はアレス様と言う事が書かれております、もう1通はアレス様宛てでございます」
そう言って俺はその手紙を受け取り内容を確認……
『ごめーーんね、魔王居ないと学校潰れちゃうの、後は宜しく!』
「なんじゃこりゃあああああああああああ!」
そう言う事か、魔王が引退、学校の存続の危機、多分身寄りの無い俺なら学校の関係者とバレない、だから俺なのか! あの校長やりやがったなくっそ
「バラしてやる、俺が学校の命令で、校長の命令で魔王にさせられたと」
「お言葉ですがアレス様、多分もう無理かと」
「へ?」
「そう言った事ですと恐らくもう国中、いえ世界中に新たな魔王が誕生したと告知されております、そしてアレス様の記録も学校から完全抹消されている事と思われます、そこでそう言った事を言われると、学校に恐れをなしていると益々校長の株が上がるかと存じます」
「くっ、そうか……身内が居ない俺だとそれが嘘か本当か分からないって事か、だから俺なのか」
すると突然ベルが俺を抱き締めるってえええええええ!
「マスター……天涯孤独でお寂しかったでしょう、私はマスターのシモベ、そしてマスターの家族です」
フワリと甘い香りがする、柔らかいベルの胸の感触に包まれる、その時俺は不覚にも涙してしまう、そう夢が叶いこの世界に来たものの、誰にも相手にされず、何も出来ずに右往左往していた、ようやくたどり着いた学校でも騙され貶められた。
前魔王の使い魔なのだろう彼女にだけ俺は信頼されているのが分かった、この夢だった糞みたいな世界に打ち砕かれた俺を今彼女が救ってくれている。
「ベル……一つだけ聞かせてくれ……魔王になったら……ハーレムは作れるか?」
「魔王の力を要すれば容易い事でございます」
「君はそれを止めたりしないのかい?」
「私はマスターのシモベ、如何なる命令も拒否出来ません、死ねと言われればこの場で死を」
「わ、分かった、そんな命令はしないから、そうか……ふふふふ、あはははははは、なんだ勇者になるより簡単って事か、やるよ、やってやる、魔王でも何でもそして、俺はハーレムを作る!!、この世界でハーレムを作ってやるぞおおおお!」