魔王卒業しまーす
【勇者学校】
魔王に対峙できる最強の戦士、それは勇者
魔王が蔓延るこの世界、世界は勇者の誕生を待ち望んでいた。
しかし、レベル1の一般人から勇者迄、途方もない戦闘を繰り返し、勇者になれるのはほんの一握り、その勇者でさえも魔王軍にあっさりと敗れてしまった。
このまま魔王をこの世界にのさばらせて置けない、人々は立ち上がる。
各国から資金を募り、武器や防具開発会社をスポンサーに据え、魔王軍に立ち向かう逸材を発掘し育成する為の学校を立ち上げる事にこの度成功した。
そして各国から選りすぐりの才能の持ち主を一同に集め、今はまさに勇者育成が始まる。
「校長、た、大変です! こ、こんな手紙が!!」
勇者学校教頭、スネークラが細身の身体をくねらせながら慌てて校長室に飛び込む。
「何事だ」
入学式のスピーチの文章を確認していた恰幅のいい身体をした校長が書類から顔を上げ教頭を見る。
「ま、魔王軍頭領ハーデルンから当校校長宛に信書が」
「ハーデルンだと!」
校長のゼニトは教頭から受け取った信書を慌てて開封した。
『ちわーーっす、魔王軍頭領のハーデルンでーーーす、なんか俺様を倒す学校が出来たんだって? いやあ、頑張ってる所申し訳ない、こないだの勇者戦でこっちボロボロでさ、数十年掛けて作った俺様の軍も壊滅状態、俺様も年取っちゃってこっち元通りにするまでまた数十年かかっちゃうし、そんな事に資金使う位なら魔王辞めちゃって残った金で隠れて悠々自適な暮らしをする方が良いかな~~なんて思っちゃいました~~なので城に来ても、もう俺様いないから、宜しくね~♡、あ、そうそう城の鍵、同封しておいたので、後は宜しく( ・`ω・´)』
「は? なんだこれは?」
「まあ……そのまま書いてある通りで」
「これは……本物か?」
「はい、鑑定士にお見せしましたが、サインは本物との事です」
「そう……か……」
「ど、どうしますか?」
校長のゼニト震えていた、何故ならばこの学校を立ち上げる事により多くの私財を投入、さらに多額の借金並びに各方面への寄付を自分の責任に於いて募り
さらには、かなり強引に各国の協力迄取り付けようやく立ち上がったばかりだった。
そしてもし魔王が居なくなれば……
「今さらここを止められる分けがない、そんな事をしたら我々は……」
「こ、こ、校長、そんな事になったら職を失う所か、この世界で住む所も失ってしまいます」
「各国の王にはかなり無理を言った、私は少なくとも……もう二度と人前には出てこれないだろう……」
「校長……」
「この手紙は他には見せているのか?」
「内容が内容だけに封筒のサインは鑑定士に見せましたが中身迄は誰にも」
「そ、そうか良くやった、それならばまだなんとかなるぞ」
「本当ですか校長!」
「ああ」
「そ、それはどうやって、私に出来る事なら何でもいたします!」
「うむ……生徒を一人、ここに呼んで来て貰いたい」
「生徒……ですか?」
「ああ、一人凄い体力を持っていた少年が居ただろう?」
「えっと、少々お待ちください、ああ、はい彼ですね」
スネークラ教頭は持っていたファイルを1枚取り出す。
「筆記最下位、体力1位、体力バカの彼ですね、名前はアレス?」
「アレス……戦いの神か……体力といい……やはりピッタリだな」
「出身地不明? 両親不明? 身寄りなし?」
「ああ、私の所にどうしたものかと来たので覚えていた……そのアレスをここに呼んでくれ」
「どうなされるんですか? 校長」
「彼しか、彼以外にこの現状を打破出来る者は居ない、何故ならば今彼を知る者は居ないからだ」
「彼を知る者は居ない?」
「彼には…………魔王になって貰う……」