まどろみの中で
夢を見た。視界にはいっぱいの桜並木、それは全部綺麗に開花している。
暖かで心地のいい風に、花びらが飛ばされ、綺麗に舞う美しい夢。
毎年、この季節になると繰り返し何度も見る、美しい夢だった。
夢の中の俺は意識が割とはっきりとしており、綺麗な桜並木を歩きながら、物思いに耽る。
そしてこの夢は、毎回必ずあるところで目が覚めることを思い出して、足早にその場所に向かっていた。
見る度に、今度は目が覚めぬことを願いながら、そこへ向かう。
桜が散る、風が吹く、春の匂いが鼻腔をくすぐる
匂いが強くなり、やがて開けた場所にたどり着く。
そこは一面の野原。綺麗な緑の中にポツンと、見覚えのある、がしかし見知らぬ背中が見えてきた。
俺はそこで1度止まって、今度は何と話しかけるか、どういう風に接するのが正解か、頭をどうにか回して、必死に考える。
結局何も思いつかなくて、いつものように「初めまして」と話しかけようと合点する。
息を大きく吸って深呼吸、再び歩み出す。
5メートル、まだ遠い
3メートル、あとすこし
1メートル、もうすぐ手が届く
「あ、あの、初めまして」
彼女が振り向く―――……
「またダメか…… 」
見覚えのある天井。
僅かに空いた窓からは気持ちのいい風。
春の到来を感じながら体を起こした。
ワイの書く小説のお題は、『春』『見知らぬ人』『夢』です。
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