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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

作者: bora

夢について書くのか恋愛について書くのか悩みながら書いてたら質パ濃度0.2%の砂糖水みたいなのが出来ました。

あまりにも中途半端だったのでその他に分類させていただきましたが、少し恋愛要素的なのあります。


あ、教師は女性です。

灰色の世界で、大粒の雨水に打たれながら帰る生徒達。


突然の雨なので、傘を持っている者は少ない。


みんな馬鹿だね。普段から1本くらい学校に置いておくか、折り畳み傘でも持ち歩けばよいのに。


かく言う私も、傘を持っていないのだが。


「やあ、柳瀬君。こんな所で何をしているのかね?」


白衣に、肩まで伸びた白髪に、少しハスキーな声に、まるで小説にでも出てきそうな話し方。

小さな頃に憧れた科学者(大学教授)にそっくりである。


「なんなんですか、突然。まだ勤務時間内なのでしょう?お仕事をなさったらどうなんです?」


雨具を持たぬ者を嘲笑した手前、雨宿りをしているなどと言えるはずもない。


「何か勘違いをしているようだね。私の仕事は教育だけじゃない。教育は勿論のこと、君達生徒を見守ることも、私達の仕事なのだよ」


「そんなことくらい知っています」


真面目な表情で他人と変わらないことを言う先生に、私は失望した。


雨音の中、いつの間にか隣に座っている先生は、俯いて何か深く考えこんでいるようである。






外の音を背景に、先生の白髪を眺めているのは、何とも言えぬ感じである。


特別好きな感覚というわけではないが、不快でもない。


「柳瀬君」


突然顔を上げた先生に驚いて、私は咄嗟に前を向いた。


「君には夢があるのかね?」


「今は、ありません」


「そうかい。まあ、私の話を聞いてくれたまえ」


先生は、私の悩み事を見抜いてしまわれたようである。


「私もな、昔は大学教授に憧れていた」


「だがな、やはり非常に狭き門なのだよ。あのレベルとなると努力だけではどうにもならないだろうな」


「私は考えた。悩み続けた。そして、丁度受験期を迎える頃に、気づいたのだよ」


「結果的に、夢を超えるだけの幸せを手に入れることができれば、何の問題もないということに」


「まあ、本当にそれが可能なのかは分からないのだが、私は少しずつ着実に積み重ねているよ」


こんなこと、社会人はみんな知っているのだろう。

こんなこと、社会人はみんな実行しているのだろう。

それなのに私は、惹かれていって、大事なものを捨てる決心が着いた気がする。


「入学試験の面接で、将来は科学者になりたいと言ったそうじゃないか」


「君にはなれない。とまでは言わないが、相当厳しいぞ。まだなりたいと思うのか?」


「いえ、今は思いません。ぼんやりとした夢で、科学者になりたいと強く願ったことはありませんが、小さい頃からのものだったので何となく諦めきれなかっただけですし」


「そうか」


校門が閉まる時間が近づいてきたので、教室を出て、廊下を歩きながら会話を続ける。


「すまないね。私の考えを押し付けてしまって」


「いえいえ。押し付けられたなんてこれっぽっちも思っていません。あの考えを受け入れたわけではないので、私の人生に影響を与えることもないでしょう。気にしないでください」


「ただ、惹かれてしまいました」


「それなら、既に影響を受けているではないか」


「いえ、私が惹かれたのは先生の考え方にじゃありませんよ」


「ほう、面白いことを言うのだな」


「意味、分かってますよね?」


「ああ、私は最低な教育者だよ」


「ええ、本当に」


「ところで傘、無いのだろう?私のを貸してあげるよ」


「何故それを知っていらっしゃるのですか?」


「私が校内を見回っていた時の会話を思い出してみたまえ。柳瀬君は見回りも教師の仕事の一環であることを知っていた上で、私に仕事に戻れと言った。君はプライドが高いからね。忘れ物をしたことを知られたくなかったのだろう。あんなの持ってきている方がおかしいくらいなのに」


「折り畳み傘を常備するとか、常に学校に置いておくとかあるじゃないですか。予測できなくても平気な方法。それに、先生は持っているのでしょう?」


「まあね。で、要るのだろう?傘」


「はい。お借りします」


「予測できなくても平気な方法があるんじゃないのかね?」


「意地が悪いですね」


「あ、それと。学校は傘を忘れた生徒に対して貸し出しをしているからね。次からは活用するといい」


「え、それなら今回も学校のものを借りればよいのでは?」


「いや、まあ…そうではあるが…。雰囲気というものがあるだろう?」






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