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Red Tears  作者: 六土里杜
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嘘吐き

下らない事に時間を費やす暇はない。今する事は、『お前』を処刑台に立たせる事。

 昔から可愛いものや女物が好きだった。それは悪いことじゃないと言われた記憶はあるけれど、その事をいつしか隠す様になった。男である俺が持つべきものではないと、偽りの自分を作ってまでも自らを否定し続けていた。その結果、尊敬する兄が犯罪者になった。その事実は本部中で噂が火を付けて、莫大な嘘に変わり――いつかは悪口や陰口に成り果てた。それでも、俺はいつか戻って来ると兄を信じていた。他人にあまり興味を示さない兄だけど、犯罪に走るようなゲスな人間ではなかった。


『ア、アー。マイクテストマイクテスト。ヘルゥ! 今日も能無しの雑魚は生きてんのかァ? ――ま、生きてなきゃガラクタに意味はねぇんだけど。これからお前等全員被害者なって言った奴、今すぐビルから飛び降りろ。今からお前等はと~っても貴重な実験道具だ。じゃ、そういう事でドッカーン! バイバーイ』


 巨大モニターに映し出された映像を見つめながら、何ヶ月も前の映像を目に焼き付ける。会議室に忍び込んで何ヶ月前の映像を再び再起動させ、変わり果てた兄を見つめる。かつては同じ場所に立っていた兄はどこに消えたのか。どうしてその場所に居るのか、俺には分からない。教えてもくれない。台詞に連動して建物が次々に爆破され、跡形もなく消えていく。そしてたまに映る俺の姿。いつもの様に出勤して、出動してたまたまカメラの中に入り込んでいる映像。兄の映像は全てが自撮りの様でどこかの研究室だったり、何てことのない街中だったり、けれど絶対変わらないのは最初の挨拶だけ。


『ヘルゥ!』 ――Hell、ヘル、地獄。


 そこにどんな意味が込められているのか、俺には知る由もない。ただ、毎回「Hell」というのは変わらない。同じ台詞を聞いて同じ映像を見て、机を殴って、歯を食いしばって、モニターを睨み付けて、怒りを植え付けて、絶対処刑台に立たせてやると言い聞かせて、再起動させたデータの電源を消して、会議室を後にした。

 乱暴に閉めたドアの音はよく響き舌を打つ。鼻で笑い、壁に拳ぶつけて、結局会議室のドアを蹴破った。


「お前なんか殺してやる! 殺す! 処刑台に立たせてやる! 首吊り、ギロチン、射殺、全部やってやる! お前なんか、お前なんて――」

「連夜さん!」


 言いたいことぶちまけて、思ってもない事言って、八つ当たりして、サーベルに手を伸ばした所で後輩が駆けつけて俺を押さえる。俺がこうして狂った時は必ず誰かがやってくる。後輩だったり先輩だったり、同期だったり。昔みたいに、兄が駆け寄って「何してんだよ」と声を掛けてくれる事はない。


「うるせぇ離せ!!」


 もうどうでも良かった。兄が居ない世界など楽しくもない。力技で後輩が勝てた事はないから、押さえられていたのを無理矢理引きはがし、後輩の胸倉を掴んで壁に叩きつける。


「お前に何が分かんだよ。何にもできねぇ死に損ないが、ただ死ぬ事しか出来ねぇガラクタが、俺に盾突いてんじゃねぇ」

「れ、んやさん……? 急に、どうしたんですか……」

「どうした? どうもこうもしねぇよ」


 そう言って俺は後輩から離れた。下らない事に時間を費やす暇はない。今する事は、『お前』を処刑台に立たせる事。

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