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Red Tears  作者: 六土里杜
3/5

命令には逆らうな

命令に逆らうことも許されない、かといって謝っても許されない。それが凶悪犯里杜の掟。

一人も残さず殺せ。それが里杜の命令。一人でも残し、尚且つ殺害人数が一番低い奴から死刑牢。

えこひいきなんて役立たずなガラクタがほざくな。

払うのはてめぇらの命だ。


※本文抜粋(ところどころ省略)


お前ら、アレだろ。無名のテロリスト――あぁ、俺はたった今あっち側じゃねぇ、こっち側の人間だ。……だから、取引しねぇか? 

何が言いたいかって? つまりだな、俺が爆弾製作してやるってつってんだ。金も払わねぇで良い、火薬の仕入れも俺が全てする。お前等は何も払わねぇで構わねぇ。なぁ、そっちには得な話だろ?

だから、共犯者にならねぇか?

それ以外は必要ねぇし、何も払わねぇで良い。


 ――払うのは、てめぇらの命で構わねぇ。

 おい……。小さく舌を打って手に持っているボードを自分の肩に当てる。それほど痛くはないが、見ている方が恐怖で支配されているのだろう。そんな快感に浸りながら不機嫌な表情を作り出してボードを再び見下ろす。


1号:7人

2号:3人

3号:9人


 それぞれの数字が並べられている。大して多い訳でもないが、少ない訳でもない。全体で32、3人程の人数だ。3人をピックアップしただけで、他が良い成績だという事ではない。所詮使い物にならないガラクタなのだから当然だが。


「俺は何つった? 一人も残すなって言ったよな」


 爆破テロをする時の絶対命令。『誰一人生かすな、残さず殺せ』それが、毎回毎回命令違反。まぁ、それが目的なのもある事は誰にも言わないでおく。言ってしまえば意味がない。


「命令に逆らったらどうなるか、てめぇら味わってんだろ。おい、8号」


 声を掛けられ、8号は震えた。何て無様な野郎だと内心で嘲笑しながら表情は不機嫌で、「てめぇ、殺害人数0ってどういう事だ?」と問う。そうすると8号は言い訳する素振りを見せなかったが、だからと言って命令違反を許しておく訳にもいかず、舌を打ち「役立たずは死刑牢だってつってんだろ」そう小さく囁けば、8号は何度も頭を下げる。今度は仕留めるだとか、必ず成果を出してみせるだとか、そんな馬鹿な台詞を吐いていた。くだらないし、そんな甘ったるい事を許す訳もない。だからポケットに入れていた拳銃を取り出して一発、8号の脚に撃つ。当然8号から呻き声みたいな悲鳴みたいな声がする訳だが、お構いなく「死刑牢、行け。ガラクタ」と放った。


 死刑牢。役立たずが直行する牢屋。牢屋と言っても何日も過ごせる訳じゃない。過ごせやしない。死刑牢に入った者で生きた奴は居ない。そう、俺がこの手で始末する。簡単に言えば針地獄で串刺しにする。刺さった時の身が抉れる音や飛び散る血液、辺りに漂う血の匂いやその他諸々、そういうのが好きだから余計に串刺しにする。後始末はいつも成果が悪い奴ら。俺にとってテロリスト何てただの駒でしかない。俺の作る爆弾がなければ一瞬で警察側に捕まるだけの雑魚だ。


「許してください!」


 8号が死刑牢で叫ぶ。俺はその様子を無表情で眺める。これが此処の掟。俺が共犯している限り、此処の掟は全て俺が作る。理由なんてコイツ等に述べる必要もないし、今言う必要だってない。それに使えないガラクタを側に置いて置く様なそんな優しい人間でもない。だから、不良品はぶっ壊す。――レバーを下げる。そうすると、天上と壁一面、床から針が飛び出す。避け切れないし、逃げ切れない速さ、見た目は普通の誰もが想像する様な牢屋と変わりない。ただ、違うのは針が飛び出すだけ。


 ――グシャッ。


 本当はもっとえげつない音だったが、分かりやすくするなら、一番伝わりやすいだろう。糸も簡単に潰れ、俺の体中に8号の返り血を浴びる。俺の勝ちだ。一人、死刑牢の在る部屋でただ口角を吊り上げた。


**


 お前ら、アレだろ。無名のテロリスト――あぁ、俺はたった今あっち側じゃねぇ、こっち側の人間だ。……だから、取引しねぇか? 

 お前らが欲しがってんのは最高武器、テロだから爆弾とか銃とかだろ。今の仕入れ先の国、そろそろ戦争が始まるんだろ? そうなったら火薬とか値段がぶっ飛ぶだろ。そうなるとコストとかも面倒くせぇし、金もかかる。

 何が言いたいかって? つまりだな、俺が爆弾製作してやるってつってんだ。金も払わねぇで良い、火薬の仕入れも俺が全てする。銃は作った事ねぇが、銃なんざ要らねぇ爆弾作れば良い。お前等は何も払わねぇで構わねぇ。なぁ、そっちには得な話だろ?

 何が目的か? そんなモン決まってんだろ、お前等と一緒だ。だから、共犯者にならねぇか?

 ――そうだな、次のテロん時、俺が作った爆弾だけで成功したら俺に爆弾製作、作戦、健康管理を任せてくれ。それ以外は必要ねぇし、何も払わねぇで良い。あぁ、分かった。じゃぁ、それで。


 ――払うのは、てめぇらの命で構わねぇ。


「……またあん時の夢かよ」


 最近よく見るようになった夢。同じ内容ばかり。重たい頭を持ち上げてベッドに腰掛ける。今は何時だ、そんな事気にしてもしょうがないし意味がないが、何となく時計を見た。午前10時20分、そろそろアイツが姿を現す頃だろうか。


 コンコンッ


 ドアがノックされた。あぁ、思った通りだ。入室許可を与え、ソイツは部屋の中に入って来る。


「里杜様、朝食の用意が出来ましたが……」


 言葉に詰まったようで、どうしたら良いのか分からないのだろう。多分、俺が起きていたんだと思ったから余計だろう。寝起きだという事に気づき、だけどいつもこの時間帯に朝食を持って来ているから困った表情をしていた。


「あー……わりぃ。今起きたから、後で食うが取り合えず持って来てくれ」


 他の連中とは違う喋り方という訳じゃない。至って普通だと思うが、他の奴からしたら違うんだろう。そういう陰口なのは聞いた事があった。だからと言って死刑にする程鬼ではない。どれだけ陰口を言おうと有能であればそれで良い。


「かしこまりました」


 丁寧にお辞儀をして、廊下まで持って来ていた朝食を部屋に入れる。何処かのお屋敷で使われているその台は、俺が買った物だ。火薬より安い。朝食がテーブルに並べられ、寝起きなので紅茶を淹れられる。


「具合でも悪いのですか?」


 不意に尋ねてきた。コイツ、今は召使にでもしておこう。この召使にだけは俺に話しかける事の出来る権限を与えた。他の奴等は用事がない限り、一切話しかけるなと命じた。この召使にだけ、用がなくても話しかけても良いという権限を与えたのは、役立たずの飯やこのアジトの掃除などをして貰っているからだ。あと、二人きりの時は敬語を外せとも言った事がある。返答はしっくりこないだった。


「いや、別にそんなんじゃねぇよ。つか敬語外せよ、誰も見たり聞いたりしてねぇぞ」

「そうですが……。私は住む場所もなく、食べる物もなかった時に里杜様に拾って貰って頂いて居る身で、まして何も知らなかった私に勉強など教えてくださり、さらには仕事まで与えて貰っているので……」


 言いたい事は分かったので小さく溜息を零す。仕事と言っても犯罪者のお手伝いだから楽しいのか何て分からないが。頭を掻きながら「別にアイツ等が居る時でも話しかけて構わねぇし、敬語外しても構わねぇから。拾って貰ったから敬語を使わねぇといけねぇ理由なんてねぇから」と言うと、やっぱり否定の言葉が返ってくる。そんな無礼な事出来ないとか、あぁ、本気で拾われたってだけでこの召使には生きる希望があったんだなと思った。だから、強制はしない。不意に敬語がなくなったら違和感だろうが、それで腹を立てるつもりはない。


「そうか。まぁ、お前の好きにしろ。言葉遣いと態度はな」


 鋭い目つきで睨んでやると、召使の肩が震えている。隠し通せているとでも思っていたのだろうか。


「これやるから食え」


 テーブルに乗っている朝食を取り、召使に差し出す。恐れ多くて受け取れない何て台詞が聞こえるが、そんなのお構いなしだ。この召使が他の連中からどんな扱いをされているかなんて百も承知だ。えこひいきだとか、図に乗っているだとか言われているが、俺に言わせれば役に立たないガラクタが何を言っているだ。元々この召使は「俺の身の回りの事を担当」として此処に居る。アイツ等は「俺の作った爆弾でテロを起こす」という役目で居る。元の契約が違う事も知らない馬鹿共から、召使が食事制限をされている事も知っている。初めは自分自身が気にしているのかぐらいだったがあまりにも様子が可笑しい事に気がつき、盗聴器を召使に仕掛けたところ、食事制限や暴力が行われていた。


「で、ですが……里杜様の朝食で……」

「また殴られるってか?」


 そこまで驚く必要もないのに、かなり驚いていた。あぁ、本人も知られてないと思っていたのか。


「じゃぁ、俺の部屋使え。ただ寝て食う為の部屋だ。お前が来てもスペースは十分あるだろ。俺の部屋にはお前以外近づかねぇよう言ってるからな」

「し、しかし何故そこまでして私を守る、と言いますか……えっと」

「アイツ等には使えねぇガラクタは始末って、つってるけどお前には違う言い方しねぇとな。ただ、お前を側に置いていたい、じゃ不足か?」


 召使は俺の今ふっと思いついた言い訳でも満足したようで「それだけで満足です」と言った。そして俺は召使にほぼ強制的に飯を食わせた。


「里杜様」


 飯を食い終わらせ、俺も残ったのを食した後声を掛けられ、召使に視線を向けると「私は里杜様にどこまでもお供します」何て言われた。これじゃまるで本物の召使のように思えたから「ついて来れんならな」と、少し意地悪な返答をした。

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