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Red Tears  作者: 六土里杜
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犯罪者と警察官

 国際犯罪者と共犯中のテロリスト。ほぼ無名だったテロリストの名を挙げたのは、この凶悪犯だ。名を六土ろくど 里杜りとと言う。天才科学者で主に、爆弾の製作を行っている。

 自分で作った小型爆弾を売るのと、作戦、各員の健康状態を監視しているらしい。金髪に肩に届くぐらいまで伸ばされた髪、両耳には赤いピアス、指には何個も指輪をつけ、腰には自作の爆弾をぶら下げている。たまに口からチェーンが覗いている時があるが、大体は自作の飴を舐めている時だと思われる。


「今回の事件もコイツか……。絶えないな」


 資料室から聞こえる小さなため息。後輩が発したもので、特に注意する事ではないので何も言わずただ聞き流す。


「そう言えば連夜れんやさんって、里杜と戦った事ありましたよね?」

「あぁ。任務で出向いた先に居ただけだ」


 俺の所属している課は主に里杜主犯で行われている犯罪に出向く。というかそれしか任務がない。全く事件がないときはないで暇だが、あるときはあるで忙しいのだ。課の名前は長くて忘れたがいずれどこかで言う事でもあるだろう。


「やっぱ強かったですか?」

「……ある程度はな」


 互角に戦えば負けるだろう。右側にある刀をそっと撫で、ぼんやりと画面の中を見つめる。

 敵いはしない。何度も言い聞かせ、負けを認めた。そういう時に限ってコイツは、攻撃の手を止めて撤退する。理由なんて分からない。こじれた関係なのだから聞くこともない。


「それで、何か情報は掴めたのか?」

「それが、全く……。次の行動や、場所、時間など全く分からないです」


 落ち込む姿はいつも通りか、心中で呟きながらモニターの中を見つめる。これまで行われてきた犯罪の数々。少しくらいはパターンがあるはずだ。それさえ掴めれば場所の特定ぐらいは出来るだろう。一体、何が目的だ。一つのマップに廃墟が映る。次の爆破現場だろうか、今までの行動を分析すれば、何か手がかりになるかもしれない。


「ここの廃墟。今までの行動を分析して調べておけ」

「はい!」


 正しく敬礼した後輩は、資料室で一人、里杜の分析をパソコン相手に始めた。


 **


 真っ暗の部屋の明かりを点け、壁に凭れる。前までならこういう状態のとき、支えてくれる手があった。今は当の昔になくなっている。久々に疲れた、ような気がした。右目に激痛が走る。思い出してはいけない、何もなかったようにしろというように。過去の記憶を蘇らせてはいけない。もし、蘇ってしまえば、俺はここに居られなくなる。


「……もう、昔の話だろ」


 誰も居ない、元々二人部屋だった部屋でそっと呟く。クローゼットの中に仕舞ってあるのは代えの隊服。サイズが合わないのが面白い。何故置いているのかと後輩達に良く聞かれるが、大して気にしていないし、気にする必要性もないと思っている。この身になってから、サイズが合っていた隊服も大分大きく感じる。きっと気のせいだと思っている。


 あの日、あの事件の時――。何かが終わった。


『バカ、逃げろ!』

『うるさい』

『意地張ってる場合か! 良いから行け!』

『嫌だ』

『ったく、どうなっても知らねぇぞ』

『お互いな』


 息を殺して泣く声。何度も謝罪する言葉。必ず仕留めるという言葉。それだけが聞こえて後は何も覚えていない。そこに居た筈の人物が急に居なくなって、気がついたらこうなっていた。

 右目の痛みを耐えるように右の布を掴み、蹲りながら小さく息を漏らす。ないはずの義眼から何か流れ出る感覚を覚えながら。

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