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嫉妬という魔物

 それは突然咲を襲った。




 届いてくる大量のメール。

 そのどれもが、咲には思い当たらない相手からの送信。

 咲はそのメールを見て「何?これ?」と叫んだ。



 驚いた泉が、咲の携帯を取り見る。



 内容は殆んどどれも似た様なもので『赤井君と別れなさいよ。ちょっとモテるからっていい気になるんじゃない』『絶対に赤井君を取ってやるから覚悟しな』といったものばかりだ。


 泉はそのメールを見た途端、もの凄い勢いで怒りだした。



「何よ?これ、咲をバカにするのもいい加減にしなさいよ。自分が振られたからって、咲には関係ないじゃないの」


「やっぱりあたしが翔君と付き合ってるからなのかなぁ……」うなだれて落ち込む。


「しっかりしなよ、咲。とにかく赤井君に話した方がいいよ」

「あ、そうだね。電話してみる」



 泉はまだ怒りが収まらない様子で、苛々してるのは誰の目からも分かったのだろう。


 数人、クラスの女子が集まって来て「泉、なんかあったの?」と、声を掛けて来た。




 そうしているうちに翔が教室に飛び込んで来た。



「咲、一体何があった?」

「ちょっと、赤井君。咲をちゃんと守る約束だったよね?見て、この咲に届いた大量の悪趣味なメール」



 泉は咬み付きそうな勢いで翔に迫る。



「メール?なんだこの内容は?これ全部そうなのか、咲?」

「うん、全部そうだよ。送り主に心当たりはないから、それ全部きっと翔君のファンからのメールだよね」


「ああ、文面から見ても送り主は俺の関係者だろうな。とにかくメアドすぐ変えよう」

「メアドを変える?なんで?」



「まぁ、多分ただの時間稼ぎぐらいにしかならないだろうけど、これが毎日続くよりはマシだろ?その間に俺に出来るだけの事はやってみるからさ。ここにいる人は大丈夫かな?泉先輩?」


「みんな咲を心配してるし、この中に赤井君のファンはいないと思うよ」


「分かった、じゃすぐに新しいアドレスに変えよう」

「新しいアドレスって、どうやって変えるんだっけ?」



 咲はまるで他人事のようにポカンとしていた。


 あまりのショックで何処かの感情がショートしてしまったらしい。

 それを素早く翔は見抜いた。



「咲、携帯貸して」

「あ、うん」


「アドレス、俺が決めてもいいね?」

「うん」

「じゃあ……kakeru-loveでいいな」


 咲は「翔君、何そのアドレス?」と、真面目に聞いた。


「ん?なんかおかしい?」



 その場にいた女の子全員が爆笑した。


 翔は「なんかおかしかったかな?」と照れながら聞いた。


「赤井君、それはウケ狙いだよね?」

「え、俺は大真面目だけど」



 泉をはじめ、全員がまた爆笑の渦に包まれる。



 咲ひとりを残して……。

 今の咲には、冗談に笑う余裕が全くなかった。



 募る不安。

 見えない敵。


 それでも咲の唯一の救いは、翔の存在だった。



「とにかくこの件は全部俺が何とかする。俺のダチにも協力して貰うから、誰の嫌がらせかはすぐに分かるよ」

「翔君、相手が分かったらどうするの……?」


「もちろんタダでは済まさないさ。咲を傷付ける奴は俺にとっても敵同然、情けはかけるつもりもないよ」


「お~、カッコいいね。赤井君、咲のためなら何でもするって訳だね?ま、そうこなくちゃ咲を安心して任せておけないけどね」



 泉は感心してそう言葉を放った。

 咲を囲んでた子も同じく頷いていた。


 でも、咲は翔の『タダでは済まさない』の言葉が引っかかっていた。



 一体何をするつもりなの……?翔君?

 翔君の友達って、話してたケンカ仲間の事だよね?



 でもこれはどう考えても相手は女の子だよ。

 女の子相手にケンカするの?


 翔の言葉とは裏腹に募る不安が咲を襲う。



「咲?どうした?まだ何かあるのか?」

「ううん、何でもないよ。でも翔君、相手は女の子だよね?」


「なんだそんな事気にしてたの?女には女への仕打ちってのがあるんだよ」にやり、不敵な笑みを浮かべた。


「なにそれ?恐いよ翔君」


「別に殴ったりするわけじゃないから、咲は心配しなくていいんだよ。じゃあ、俺は早速調べてみるから泉先輩、咲を頼んでもいいかな?なんか変わった事があったらすぐに知らせて欲しいんだ」


「おっけー。咲の事は任せて、早くその変な奴捕まえてよ?」

「うん、それじゃ咲、また後で来るよ」



 それだけ言うと翔は教室から走り去った。



 咲のクラスから出た翔はまず携帯を取り出すと、短い文面で仲間にメールを送った。



『今夜8時、いつもの場所に集合』



「これでよし。心配なのは咲だな……。メールの嫌がらせだけで済むとは思えない。けど俺は授業中は傍にいられない、どうする?」



 翔の自問自答は続いた。


 どうする?


 咲を守るには、俺が傍にいるのが一番手取り早いけど。


 さすがにここは学校。

 その自由はない……。



 とにかく一刻も早くあのメールの送り主を探し出す事が最優先だな。

 咲が次の被害にあう前にな。



 少しすると、一通のメールが届いた。

 親友の直樹からだ。




『翔、一体何があった?』

『俺の彼女が狙われてる。力になってくれ』

『翔の彼女を狙うバカがいるのか?分かった、とにかく詳しい事情は今夜聞く』



 直樹……さんきゅ。

 お前が親友で良かったよ。




 ーーーーーー・・・・


 夜8時。


 いつもの潰れたボーリング場の駐車場に、12人の翔の仲間が集まっていた。




「翔、お前からの集合なんて珍しいな。何があったんだ?」


「俺が今付き合ってる彼女が狙われてる。嫌がらせのメールが彼女の携帯に大量に届いた。彼女に何かされる前に何とかしたいんだ」


「翔、マジなんだな?惚れたのか?」


「ああ、その内みんなにも紹介するけど、俺がずっと片想いしてた子なんだよ。学園の中でも有名な子だよ。年上だけどそうは見えない可愛い子なんだ」


「へぇ~、それは楽しみだな。とにかくその子を守りたいって訳か……で、何か考えはあるのか?」


「それを一緒に考えて貰おうと思って集まって貰ったんだ」


「成る程な、みんなは何か考えある奴いるか?」


「翔のファンの仕業なのは間違いないだろ?だとすると犯人を見つけるのは難しいんじゃね?」


「まぁな、でも学園の中の人間なのは間違いないと思うんだ。俺が彼女と付き合ってるのを知ってるのは、学園内にしかいないからな」


「取りあえず犯人が動き出すまでは、翔が彼女の傍にいてやるしかねぇだろ?」


「やっぱりそれしか方法はないか……。そうだよな、俺のせいだもんな」



 翔はうなだれて考え込んでいた。



 そんな翔を励ます様に、仲間達が一斉に「翔、落ち込んでるなよ。お前らしくねぇよ。今は彼女の安全を考えろ」そう言った。



「とにかく俺ら全員でこの犯人を見つけよう」

「よし!翔、心配するな。俺達全員が必ずそいつを突き止めてやるからな。その間お前は大事な彼女を守ってやれ」


「分かった、この件は任せる。俺は彼女の傍に付いてる事にする」


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