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必ず朝は来る

 三年生が、最後の期末テストに入ったその日。

 午前中だけのテストを終えて、帰ろうとした咲の携帯が鳴った。


 名前の表示は、翔。

 最近ちょくちょく電話が掛かって来ていたので、咲はテストの結果でも聞くのに掛けてきたのかと思いながらボタンを押した。



「もしもし?翔君?」


『咲か、今日はもう終わりだろ?』


「うん、そうだよ。期末テストだけだから」


『....話しがあるんだ。どっか人目のないとこ....そうだな、裏庭まで来てくれるか?』


「いいけど....どうしたの?改まって?」


『咲とふたりきりで話しがしたいんだ。だから裏庭で待ってる』



 電話じゃダメな話しなのかな?



 取り敢えず翔君が待ってるって言うんだし。

 咲は泉に「ちょっと出て来るね」とだけ言って裏庭へ向かった。



 ....懐かしいな。

 ここで翔君に告白されて、付き合い出したんだっけ。

 まるでもうずっと昔の事だった様な気がするよ。



 あれから色々あり過ぎたからかな。

 楽しかった思い出いっぱいこの胸に詰まってるよ。




「咲....お前早いな....」


「翔君、どうしたの?そんなに息切らして?」




 咲は不思議そうに翔を見ていた....。


 が、次の瞬間。

 翔に腕を掴まれて、その懐かしい胸の中に抱き寄せられた。


 余りにも突然の事で、咲には何が起こったのか、判らなかった。

 ただ、懐かしい翔の、タクティクスの匂いがした....。




「あ、あの....翔君?どうしたの....?」


「咲、ここでお前に告白した日の事、覚えてるか?」


「う、うん....差出人のない手紙であたしを呼び出したね」


「あぁ、あの日で三日目だったんだ。あの日咲が来なかったら、俺は二度と手紙を出すつもりはなかった」


「え....」



 じゃあ、あの日あたしが来なかったら、翔君と付き合う事もなかったの?



 咲はあの手紙は、咲が行くまで届くと思ってたのに。

 全くの反対だった。

 まぁ、翔の性格なら、きっと、そうなるだろう。



「あたしはあの手紙は、あたしがここに来るまで続くと思ってたよ....だからあの日ここに来たんだ。ひとりじゃ危ないって言われて、それで泉に一緒に来て貰ったの」


「じゃあ本当に奇跡みたいな出会いだったんだね、俺達」


「そうだね....本当にこんなに好きになれる人に巡り合えるのって、奇跡かも知れない....もう翔君以上の人にはあたしは出会えないから」



 ふ....と、見上げると、そこには懐かしい顔があった。

 翔君の顔をこの角度から見るのって、何か月振りかなぁ....。

 もう何年も経ってる様な気がするよ。



 翔は咲の腕を掴んだまま、その顔を見てはっきりと言った。



「咲、俺さ、いつだったか別れた女とはよりを戻さない、って言った事あっただろ?」


「そう言えばそんな事言われたっけ。でも、それがどうしたの?」



 相変わらずの天然だなぁ。

 ここまで来ると、本当は全部知ってて知らんぷりしてるのかとも取れるよな。




「咲、だからさ俺改めてもう一度咲に告白する事にしたんだ」


「?何を?」


「はぁ~....お前ここまで言っても、まだ気付かない?」


「だから、何に?」




 何だか拍子抜けして来た....。

 しかも俺、泣きたくなって来た。


 もういいや。

 咲に普通の反応を期待した俺が間抜けだったよ。




「工藤咲さん、俺と付き合って下さい」


「え....?」


「咲、俺と付き合ってくれるか?」


「はい」


「よかった~。やっと通じたみたいだね?咲?」



 そう言って翔は咲をまた抱き締めそのまま「もう二度と放さないから覚悟しろよな」そう言った。



 咲はと言うと....。

 相変わらず混乱してるみたいで、まだ自分の置かれてる立場がよく分からない、という顔をしていた。


 さっきの返事は多分条件反射みたいに出たのだろう。

 翔の腕の中で、よくよく考えてやっと気付いたみたいだった。



「翔君....あの、さっき言った事って、本当?」


 またしても見当違いな質問が飛び出した。


 へっ?

 咲もしかしてまだ分かってない?




「咲?お前さっき俺が付き合ってくれって言った時、はいって言ったよな?それって咲が俺の彼女になる事、オーケーしたって事なんだぜ?」


「え....?彼女?あたしが翔君の彼女?本当?」


「何回でも言ってやる、お前はもう俺のものだ、咲。分かったか?」


「分かった....。翔君何か怒ってる?」


「お前があんまりにも状況を分かってねぇからだ。これからは俺の女だからな、勝手な事は許さねぇからな」



 くす....。

 咲が笑い出した。



「な、何だよ。何かおかしいか?」


「ううん、あたしって翔君には怒られてばっかりだなぁ、って」


「俺ってそんなに咲の事、怒ってるか?」


「うん、でもそんな翔君が大好きだよ」



 そう言って、咲は翔の唇に自分の唇を合わせた。

 これには翔の方がびっくりした。



 今まで咲からキスして来た事なんて、あの海の時だけだったから。

 でも、まぁ、いいか。

 翔はそのまま、咲の身体を抱き締めて、今度は翔が咲にキスした。




「もう放さない。咲は俺が絶対に幸せにしてやるからな」


「あたし翔君と一緒にいられれば、それだけで幸せ....」


「俺もう絶対に咲の事、裏切ったりしねぇから」


「うん、ケジメが付いたからこうなったんでしょ?」


「あ、あぁ。まぁな、そうだけどよ....」


 くすっ。

 咲が笑ったのを見て、翔も笑った。

 咲の笑顔は本当に幸せそのものだった。




 長かった....。

 思い出しても色々な事があった。



 思い出したくない程、辛い日々が続いた。

 いっそ死んだ方が楽だと、そればっかり考えていたんだっけ。




 ここまで来るのにふたりで遠回り、しちゃったね。

 ふたつに別れてしまった道が、またひとつに重なった。



 もう二度と別れたくないから。

 このまま天国まで連れて行ってね。



 いつか、約束したでしょう?

 あの夏の海の夕日に約束したよね?



 一緒に天国まで連れて行ってくれる、って。

 あたしが愛せるのは、この世にただひとり。



 翔君ただひとりだけだよ....。








            【完】


        神崎真紅 著

この小説は、私が本当に経験したことを元に書きました。

あの頃の辛かった思いを、何度も思い出しては、パソコンの画面が涙で滲んで見えなくなりながらも、僅か一か月という、ペンの進みの遅い私にとって、驚異的な速さで書き上げました。

そして今、「紅い糸」は完全に結ばれています。

咲と翔という人物像に置き換えた私達の実話、どうぞ読んでそして是非、感想を聞かせて下さい。


応援して戴けたら、続編を書けるかもしれないです。


                              以上 神崎真紅 拝




※この小説は、E☆エブリスタに掲載してあるものを転載いたしました。

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