表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/32

ひとすじの光

「翔君が待て、って言うんなら、あたしは待ってるよ。何年でも」


「そっか......うん、分かった。元気出せよな、咲。あと学校出て来いよ」


「うん、分かったよ」


「じゃな、どうせ学校で会うだろうけどな」


「翔君....ありがとう....あたし本当はね、死のうと思ってたの....生きてても辛いだけだし....。翔君の字、とぶって読むでしょ?だから....あたしも翔んじゃおうかな、って思ってたんだ....」




 そんなに思い詰めてたのかよ。

 俺が来るのが遅かったら、咲はもしかしたらもう....。

 この世にいなかったかも知れなかったのか?




「バッカだなぁ。こんなろくでもない奴の為に、死ぬ事なんか、ねぇだろ?お前を裏切った男だぜ?」


「....それでもあたしには翔君しか、いないの。色んな男の人を見て来て、それで出た答えだから」


「そっか。咲も成長したんだな。俺も負けてられねぇかな?」


「うん。負けたら一生笑いものだね」



 あの日以来封印してしまった咲の笑顔が、戻って来た。

 咲....。

 やっと笑ったな。


 やっぱり咲は笑ってる方が可愛いよ。

 その笑顔を、奪ったのは俺だけどな。


 皮肉なもんだぜ。

 咲を笑わせられるのも、俺だなんてよ。



「咲、やっぱりお前は笑ってる方が可愛いよ」


「えっ?あたし笑ってた?あの日からずっと笑う事なんて、無かったのに」


 無自覚で笑ったのか....。

 そんなにお前には俺が必要なのかよ。

 ひとりじゃ笑えない程にかよ。



「咲、もうこんな店で働くな。俺の事、待ってるんだろ?」


「あー....、やっぱり。翔君だったら絶対にそう言うと思ってたよ。でも、言われる日は来ないと思ってたけどね」


「何で俺ならそう言うと思ったんだ?だって咲がここで働いてるのは、知ってたんだぜ?」


「翔君、自覚ないんだね?本当はすっごい焼きもち焼きで、独占欲が強いのに」


「あぁ?俺がか?そうだっけ?そんなに執着してたかなぁ?」


「してたよ。だから翔君があたしの傍にいた時は、誰も寄り付かなかったもん。でもいなくなった途端にハエみたいにたかって来てたよ」


「ハエか。そうかも知れねぇわな。咲は俺にとっては、本当に特別な女だったからな」


「特別かぁ....翔君もあたしにとっては本当に誰も代わりになれない程、特別な存在だったよ....今でもそれは変わらないよ」


「そっか....俺の事まだそんな風に想ってくれてるんだな、咲は。あの頃と何にも変わってねぇんだな....変わっちまったのは、俺の方だよな」


「でも、今日来てくれてあたし本当に嬉しかったよ。翔君に会えたから、あたしまだ生きてても、いいのかなって、翔君の事待っててもいいのかな、って....」


「生きて待ってろよな、俺の事。出直してくるからよ、今度こそ本当に咲だけを幸せに出来る自信がついたら、その時は迎えに来るからな」


「うん、あたし待ってるよ。もし....また、死にたくなったら「そん時は電話して来い!分かったな?」」


「え?う、うん。分かっ.た...その時は電話するよ....何だか懐かしいな、翔君に怒られるの」



 咲はそう言って、ふんわりと笑った。



「咲....本当に辛い思いさせてたんだな、俺は。お前から一番大事な笑顔を奪う程によ....」


「でも、翔君今日来てくれたし、あたしに待ってろって、そう言ってくれたから、だから、あたし待ってるからね」



 今度は本当に咲はにっこり笑った。

 翔と付き合ってた時の笑顔そのままに。


 封印してしまった笑顔を、翔の一言で取り戻した。

 そんなに俺が必要か?咲?


 俺だって、あの時の理恵は本当は遊びだったんだぜ。

 咲に見つからなけりゃな。


 だからあの日は来るなって、言ったのにお前来ちゃうんだもんよ。

 誤魔化せねぇよな.....。


 何やってるんだろな、俺は。

 失くして初めて気付くなんてよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=549147387&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ