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咲の最後の大会

 季節は秋。



 咲の誕生日ももう少しに迫った10月5日。

 チアガール部の県大会当日。



 咲率いる紅葉学園チアガール部も、県大会に臨んでいた。

 この日を迎えるために、咲達は毎日の練習時間を増やして頑張って来た。



 それも今日決まる。

 ここで金賞を取る事が出来なければ、全国へは進めない。



「みんな、今日が本番。いつもと同じに、固くならないでリラックスして行きましょう」



 咲は中心に立って、みんなに話す。



「「はい!!」」



 元気な声が返って来た。

 大丈夫。

 いつも通りに踊ればいいんだから。


 県大会とは言っても、特殊な部なので、どこの高校にもある訳じゃない。

 出場校はそんなに多くはない。



 なので採点で決まる。

 審査員はどこかの大学教授だったり、音楽教師だったりする。

 その審査員が満点から失敗があったりすると、減点してゆく。



 金賞を取るには、ミスは許されない。

 完璧に踊り通してこそ、得られる賞なのだ。




 課題曲と自由曲、二曲を踊って採点される。

 課題曲は全校同じ。

 自由曲はその高校独自で選んで、振り付けも自分達で考える。



 いつものステージではなく、体育館全部を使って踊る。

 位置の感覚もずれて来る。


 それでも踊らなければ、ならないんだ。


 最初の学校の課題曲の演技が終わった。

 咲達の順番は、三番目だった。



 緊張して、喉が渇く。

 でもあたしが緊張してたら、みんなが恐がる。



「咲、これがあたし達にとって最後の舞台。頑張ろう。」



 泉…。

 ありがとう。



 もっとしっかりしなきゃ。

 こんな時、翔君が付いててくれたらなぁ....。



 でも、この大会が終わったら、あたしの誕生日。

 翔君とディズニーランドに行く約束、してるんだ。


 だから、頑張って来いって、言われたんだ。

 翔君が見ててくれると思って踊ろう。


 頑張れ!咲!

 もうすぐあたし達の番だ!



「三番目の学校は、スタンバイお願いします」



 いよいよ声が掛かった。

 咲達の番が回って来る。



「みんな、いつもと同じに頑張ろう。行くよ」

「「はい!!」」



 この曲が終わったら……。

 あたし達の番なんだ。


 翔君、あたし、頑張って来るよ。

 心の中でいいから、応援しててね。





 その頃、翔は……。


 もうそろそろ咲の出番かな。

 誰もいない屋上に、ひとり、遠くを見ていた。

 咲、頑張れよ。

 終わったら、一緒にディズニーランド行こうな。



 体育館の床全部を使うと、ものすごく広く感じる。

 いつもはステージの上の限られたスペースしか、使ってないからだ。



 大会前には、他の部が帰った後で、床の広さを体験する為の練習もした。

 ……傍にはいつも翔君がいたけど。



 今日はいない。

 それは仕方のない事。

 これは遊びじゃないんだから。



 咲達が位置に着いた。

 音楽が流れる。

 そのリズムに乗って踊る。



 そう、いつもと同じ事。

 違うのは、翔君がいない事だけ。



 頑張れ、咲!

 きっと翔君も、応援してくれてる筈。





 自由曲の演技も終わった。

 あとは審査の結果を待つだけだ。



 この瞬間が、一番怖い。

 もし、金賞を取れなかったら、ここで敗退。



 咲の三年間、積み重ねて来た思いも、消える。

 それでも、精一杯踊った。


 もう、悔いは、ない。

 ここで終わるのなら、それも仕方のない事。



 咲達に全国に行く資格がなかっただけの事。

 それでもやっぱり、行きたい。

 全国の舞台へ。




「これより審査結果を発表します。出場校は集合して下さい」


「咲、行こう。どんな結果が出ても、あたし達は出来る限りやったんだからさ」

「うん、そうだよ咲。これが最後になっても悔いはないよ」



 晴美もそう言ってくれるの。



「そうだね、じゃあ行こう」


「それでは審査結果の発表です。銅賞、常盤高校。銀賞、紅葉学園。湊高校。金賞、国際高校。以上です」



 わっ……と、歓声が上がった。

 同時に、泣き声も混じっていた。



 銀賞だった。

 ここで敗退だ……。



 咲の瞳から涙が零れた。

 とめどなく溢れて来る涙。



 終わったんだ。

 翔君、ごめんね。

 あたし、全国行けなかった。


 ホールに集まるそれぞれの高校。



 金賞を取った学校の生徒は、本当に嬉しそうに笑っていた。

 対象的に、銀賞銅賞で終わった学校からは、すすり泣く声が聞こえる。



 咲はすっかり泣き腫らした目をしていたが、一言だけこう言った。



「あたし達が叶わなかった夢を、いつか叶えてね」


「咲先輩……すみませんでした……」


「誰も悪くないんだよ。だって、みんな頑張ってくれたもん、だから自分を責めたりしないで。来年に向けて頑張ってね」


「「は……い」」



 さすがにみんな元気がなかった。


 でも、これが結果。

 もう変わる事はない事実。




「あたし翔君に電話しなきゃ」



 携帯を探すが、目の前が涙で見えない。

 溢れる涙を拭いながら、携帯を探した。



『咲か?終わったのか?どうだった?』

「....ごめんね翔君。銀賞しか、取れなかったよ」


『そうか....。でもよく頑張ったよ、咲は。俺はずっと見てたからな』

「ありがと....翔君....」


『咲?泣いてるのか?早く帰って来い。俺が慰めてやるからな』

「うん....ありがと。これから帰るね....」



 咲の三年間のチアガール部の結果は、銀賞に終わった。

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