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知らない世界

 8月13日。



 翔と海に行く約束の当日の朝。

 翔が迎えに来たので、咲が玄関を開けると……。



 そこには翔の仲間が全員集合していた。

 これこそ伝説の赤井翔率いる暴走族『蛍』のメンバーだった。




「咲ぃ~!こっち!」


「翔君?これはどういう事?何の集まり?」


「いやぁ、俺が咲と海に行くって事をどっからか嗅ぎ付けて来てさ、何か全員来ちゃったんだよね」


「全員って?何人いるの?」

「さぁ?俺もよく知らねぇんだ。知んない奴もいるしな」


「咲ちゃ~ん、今日も可愛いねぇ」

「うるせぇぞ!!ったく本当は咲とふたりっきりで行く予定だったのによ」



 翔は不満たらたらで、文句ばかり言っていた。



「咲、ちゃんと掴まってな!行くぜ!」



 咲にヘルメットを被せて、翔はゴーサインを出した。

 翔の単車を先頭に、おおよそ3、40台の単車が一斉に走り出した。



 風になびく咲のポニーテール。

 短パンから伸びた細い脚。

 細い腕は、しっかりと翔の身体にしがみ付いていた。



 前を走る単車の赤いテイルランプが綺麗だと思った……。




 これが暴走族なのかな?

 でも、翔君がいれば恐くない。

 翔君を失くす事だけ、恐かった。

 こんなに誰かを大切だなんて思った事なかった。

 自分の命より大切な人に出逢えるなんて、思わなかったな。

 誰かに翔君を取られちゃわないかな……。

 そんな事になったら、きっとあたしは生きていけない。

 こんな楽しい日がずっと続きますように……。



「ねぇ、翔君。何処まで行くの?」

「あー....湘南、は混むから九十九里ー」



 九十九里?

 千葉県?

 随分遠くまで行くんだなぁ……。



 それはそうだ。

 翔は帰るつもりなんか、これっぽっちもなかったんだから。

 行き先なんて、何処でもよかった……邪魔さえ入らなけりゃな。


 こいつらマジで一緒に付いて来る気だしなぁ。



 エンジンの爆音と共にパパラパパラと鳴る音。


 咲の見知らぬ世界が、そこにあった。

 これが翔君のいた世界なの?


 単車を転がす翔の表情は、まるで子供がはしゃいでるみたいにキラキラしていた。



「咲ぃー、どうだ?初めての感想はよ?」


 翔のお腹にしっかり掴まって、咲は言った。



「うん!気持ちいいよぉー。翔君最高にカッコいいよ~」

「へへ……そうか?咲に褒められると、何だか照れるな~」


「お~い!そこのニケツのおふたりさん、熱いねぇ~」

「るせっ!黙れ!俺らの邪魔すんな!!」


「はいは~い、翔君怒らせたら恐いから、お邪魔虫は消えま~す」

「ったく、ぞろぞろくっ付いて来やがって、これじゃあ集会と変わんねぇじゃねぇかよ」


「集会って、翔君が話してたあの危ない事……?」

「あ、あぁ。ぶっちゃけそうだけど、もう俺には咲ちゃんいるから命は大切にします」


「絶対に本当に?もう危ない事しない?この間だってケンカになりそうになってたし」


「あれは咲に声なんか掛けて来た野郎が悪いんだぜ。俺悪くないもーん。お、咲。海だぜ!」


「うわぁぁ!綺麗~!海なんて何年ぶりだろ?」



 へへ……。

 やっぱり咲の水着姿はこうなったら盗撮でも何でもやってやるぜ。




「咲、水着持って来たんだろ?」

「ううん、もう中に着て来ちゃった」



 マジですかぁ~?

 そ、それもっと早く教えてよ~。

 咲の生着替えが見られる……って、奴らがいるの忘れてたぁ。




「おい!お前ら、こっからは自由行動にしようぜ。じゃな!」

「お、おい。翔、って聞いてねぇよあいつ」


「きっと咲ちゃんの水着姿、俺らに見られるのが嫌なんだぜ。翔ってそういうとこ割と固いって言うか、独占欲強いしな」


「そうだっけ?今までそんなに女に執着してたか?翔って」


「咲ちゃんと付き合い出してから、あいつ変わったよ。マジで咲ちゃんには惚れてんだろな。あんなに女を大事にしてる翔、見た事なかったからな」



 ........



「咲、ここらでいいかな?」

「どこでもいいよ。荷物置いとくだけだし」


「んじゃ俺、パラソル立てるから咲は水着に着替えれば?」

「うん、じゃあここでいいよね?着てるもの脱ぐだけだし」




 そ、それは俺だけならここで全部脱いでもいいですけど……。

 周りの野郎どもの視線が咲に集まってる気がする。



 翔はパラソルの陰から、咲を見てる男共をにらみつけた。

 その顔は、今にも飛び掛かりそうな程だった。

 咲が気付かなくてよかったかも知れないが。



「翔君、着替えたよ」



 透ける様な白い肌に、まさかのビキニ姿。

 しかも真っ赤。白い肌が余計に際立つ。

 翔は茫然とそれを見つめていた。


「翔君……?どうしたの?」



 咲にそう言われるまで、翔は固まったままだった。



「翔君?あたし水着似合わないかな……?」


「い、いやいや全然。そんな事はこれっぽっちもないけど、まさか咲がビキニだとは思わなかったもんでちょっと、いやかなりびっくりしたわ」



 これは絶対に盗撮してやる。


 ん?待てよ?

 俺がこんな事考えてるって事は、周りの奴らもそんな事考えててもおかしくないよな。



 翔はそう考えて辺りを注意深く観察した。

 案の定、携帯をこっちに向けている奴が何人か、視界に入った。

 この野郎、俺でも撮らせて貰えねぇのに、いい度胸してんじゃねぇか。



 翔は、咲に水着姿を撮ってもいいか、と聞いて怒鳴られた事を根に持っていたのだ。

 だから今日は黙って撮る事に変更したのだ。


 けど、他の奴らまで咲の水着姿を撮っていい筈がないだろう?

 誰が許しても、この俺が絶対に許さん!



 そう思いつつ、携帯をこっちに向けていた奴の所に行ったのだが。




「おい!誰を撮ってるんだ?」

「え?なぁんだ、翔じゃねぇか。何やってんだ?ひとりで。咲ちゃんは?」


「直樹かよ。お前今何撮ってた?」

「えっ?い、いや、別に大したもんじゃねぇよ」


「ふぅん……まさか咲の水着姿の写真撮って、売ろうなーんて考えてねぇよな?」


「な、何言ってんだよ。あれ?翔、咲ちゃんに男が言い寄ってるぜ」

「何ぃ~!おい!こら!咲にちょっかい出すんじゃねぇ」

「翔君、よかった。何処に行っちゃったのかと思ったよー」

「何?こいつ君の彼氏?「バキッ!!」」



 言い終わらない内に、翔のパンチが相手の顔面にヒットした。



「いってぇー、何だよいきなり殴るなんて「ドカッ!!」」




 今度は蹴りが相手の腹に命中した。

 うめきながらその場に崩れる男。

 それを鬼の形相で見下ろす翔。



「翔君?やめて!どうしてそんなに怒るの??」



 咲の叫び声を聞いた翔の仲間が集まって来た。



「咲ちゃん、どうした?あーらら、翔、咲ちゃんと一緒にいる時はやるなって言っておいたのになぁ。ったく短気なんだからよ」


「翔君?何をそんなに怒ってるの?」

「別に……何でもねぇよ」



 翔は不機嫌なままだった。

 見かねた清志が翔に言い寄った。




「翔、咲ちゃんは悪くねぇだろ?お前、また咲ちゃんを泣かすのかよ?」

「あぁ……そうだったな。咲、ごめんよ。俺って頭に血が上っちまうと周りが見えなくなっちゃうんだ」



 清志が「おい、あんた。大した怪我じゃねぇんだからよ、もうあの子にちょっかい出さねぇ事だな。次はどうなるか知らねぇぜ」と、言って追い払った。


「翔君って、本当にケンカ強いんだね。あたしちょっとびっくりしたけど……。でもよかった、あのままあの人殺しちゃうのかと思ったよ。でも、何をそんなに怒ってたの?」



 この咲の言葉には、翔と清志、ふたりとも顔を合わせて苦笑するしかなかった。

 咲には、翔の怒りの原因が自分だなんて、想像すら出来なかった。



「清志よ、分かるか?俺の苦労がよ」

「あぁ、何となく分かって来たぜ。翔、咲ちゃんは天然か?」


「そうだよ、それも半端じゃねぇ程の天然なんだ。だから俺は咲を守り切れるのか、自信がなくなって来たんだよ」


「翔、俺らも付いてる。お前は咲ちゃんを守ってやれ。何か情報を掴んだらすぐに知らせるからな」


「さんきゅ、清志。お前がいてくれて助かったよ。直樹なんか咲の水着姿勝手に撮ってるしよ。あいつ絶対売る気だぜ」


「マジでかよ。ったく直樹もしょーがねぇなぁ」

「俺ですら水着姿、写メ撮らせて貰えないのによ」


「へっ?翔お前まさか咲ちゃんに言ったのか?水着姿撮りたいなんて」


「勿論言ったさ。だってこんなチャンス滅多にないだろうよ?逃したくねぇもん」


「それで?咲ちゃんは何て言った?」

「街ん中で『変態ー!』って絶叫されたよ。お前と会った、あの時だよ……」


「あぁ!あん時かぁ。そーいやお前なんか噂になってた様な……何だっけな?」

「絶対、赤井翔は彼女に変態呼ばわりされてるとか、そんなとこじゃね?あん時結構周りに人、いたしな」


「まぁ、気にする事じゃないだろうよ。別にケンカに負けた訳じゃねぇんだし」


「じゃあお前なら変態って噂になっても平気なのかよ?」

「別に気にしねぇけどな」


「あ!お前確かB型だったよな?咲もB型だった。そうか血液型のせいなのか……咲の天然も、俺の変態説も……」

「翔、変態説って何だよ?ちょ、待てよ。笑えるからやめてくれよ」



 清志が堪えきれずにげらげら笑いだした。

 それでも翔はずっとぶつぶつ呟いていた。

 赤井翔変態説がよっぽどこたえたらしかった。


「翔君……?どうしたの?海入らないの?」


 咲には翔が落ち込んでるなんて、気付く筈もなく、ただ不思議そうに声を掛けて来た。


「お、おぉ。そうだな、ここで落ち込んでても仕方ねぇもんな。よーし、咲、行くぞ~」



 翔、お前咲ちゃんとお似合いだよ。


 バカップルにしか思えねぇけど、それ外側からは見えねぇもんな。

 外見だけなら、ふたりとも最高なのになぁ。



 波打ち際で、はしゃぐふたりを見て、清志はそう思った。

 ま、ここは邪魔しないでふたりきりにさせてやるか。





「きゃー....冷たい~」

「咲、もっと奥まで行こうよ!」

「えっ?あたし泳げな「俺がいるだろ?泳ぎだって自信あるんだぜ」」



 本当は人気のないとこまで行きたかった。

 夏の海水浴場なんて、何処行ったって人ばっかだもんな。


 余計なオマケはゾロゾロ付いて来るしよ。

 ったく、誰も呼んでねぇっての。



 咲とふたりになりたくて海に行こうって誘ったのによ。

 俺の壮大な計画をぶち壊してくれたよな。





 …----ポ---ン…---



『本日の海水浴場の営業時間は午後4時までです。4時以降は監視員もおりませんので、遊泳禁止とさせて頂きます』



 アナウンスが流れた。




「翔君、もう終わりなんだって」

「いいじゃん、海に入んなきゃいいんだろ?俺さ、一度やってみたかったんだよね」


「何を?」

「ほら、よく映画のワンシーンであるじゃん。恋人が夕日をバックに波打ち際をさ、手を繋いで歩くシーン……ベタだけどな」


「あぁ~!何かの映画かドラマで見た事あるある。いいねー、翔君とだったら何処まででも歩けそう」


「んじゃあ、ついでに記念撮影もしとこ」




 へへ……。

 これで咲の水着姿の写メゲットだぜ。

 しかも咲のやつ、気付いてねぇもんな。



「うん!今日の記念だね!こうやって翔君との記念の日がいっぱい増えてくといいな……」



 あ、あれ?

 何か物凄く喜んじゃってる。

 俺、何だか騙してるみたいな気がして来たな。



「増やせるよ!咲が行きたいとこなら何処だって、連れてってやるよ」


 うん、騙したお詫びも兼ねてな。


「本当?じゃあ今度はディズニーランドに行きたいな、翔君と一緒に」


 にっこり笑って咲は翔の顔を見上げた。


 ドクン!!


 な、何だよ?

 咲の事なら俺は全部知ってる筈なのに、なんでこんな何でもない仕草にドッキリするんだ?



「じ、じゃあよ、咲の誕生日10月だったよな。その時にディズニーランド行こうぜ」

「あたしの誕生日?本当?嬉しい~翔君!」

「咲が喜ぶんなら、何処でも連れてってやるよ」


「でもね~翔君。あたしは翔君と一緒にいられれば、他になぁんにもいらないよ」

「俺と一緒にか~。じゃあ天国まで一緒だ。咲!」

「きゃはは~天国ぅ~。じゃああたしと死ぬまで一緒にいてね~」




 いてやるさ。

 俺の心は咲、お前だけのものだからな。

 勿論もちろん、咲、お前の全てもこの俺のものだ。



 俺の全てを掛けて守って来たんだからな。

 ただな……。

 咲、お前は男の本当の怖さをまだ知らねぇんだ。


 俺の仲間が咲に手を出す事は絶対にない。

 けどよ、そんな常識が通じるのは、俺の周りだけなんだぜ。


 咲を騙すなんて、簡単な事なんだ。

 お前は人を疑うなんてしねぇからな。

 だから危なくて見てられねぇんだよ。



 夏の夕日も沈むと、海辺は漆黒の闇に覆われる。

 明かりが付いているのは、海の家と、点在する民宿やホテルのみ。




「……すっかり真っ暗になっちゃったね。もう帰るの?」

「いや、予約入れてあるんだ。あそこのホテルに」



 翔の計画的犯行に抜かりはなかった。



「ふぅ~ん、予約取ってあったんだ?じゃあ今日もあたしを帰さないつもりだったんだね?」


「い、いや、ほら今日はちょっと遠いし、単車で夜道を咲乗せて事故る訳にいかないし……」


「あれ?バイクの運転には自信があったんじゃ、なかったっけ?それともあたしの聞き違いかなぁ?」


 うっ……。

 痛いところを突いてくるぜ。

 さすがに頭はいいな、咲はよ。


 天然さはこういう時にこそ出て欲しいアイテムだな。



「うっ、は、腹が痛い……。咲ぃ助けてくれよぉ……」



 我ながら仮病とは情けないと思うよ。

 女をホテルに連れ込むだけに、こんなに手こずった記憶はねぇからな。




「えっ?翔君、大丈夫?予約してあるホテルの名前は?」

「国民宿舎サンライズ……」


「じゃあタクシーで行こう、って、バイクはどうすれば……」

「咲、大丈夫だ。単車で行こう、そんなに遠くないから」


「う、うん……でも運転大丈夫なの?」

「そん時は咲だけ乗っけて押してくよ」





 ....そのホテルは九十九里浜の、ほぼ真ん中辺りにあった。




「いらっしゃいませ」

「予約しといた赤井だけど」


「赤井様でございますね、それではこちらの宿泊カードにご記入をお願い致します。ただ今お部屋をお調べ致します」


「……お待たせ致しました。お部屋はスイートルーム二名様でお間違えないでしょうか?」

「それで間違いないよ」


かしこまりました。こちらお部屋のカードキーで御座います。ただ今係の者がご案内致します」


「それではお客様、お荷物お持ちいたします。お部屋は3階になります。……どうぞこちらで御座います」



 カチャリ…---

 その部屋に入った時、漆黒の海が窓の外に広がっていた。




「うわぁぁ~すご~い!これ朝は日の出が見えるよね?」

「はい、こちらのお部屋は全てオーシャンビューになっております。また、展望風呂からの景色も絶景で御座います」


「展望風呂?あたし入る~!」


 おいおい……。

 今になって、天然キャラ炸裂かよ?

 もっと早く発動してくれりゃよかったのに。


「翔君、ありがとう!」



 咲が翔に飛び付いてその頬にキスをした。

 翔は……何故かさっき見た夕日の様な顔をしていた。


 えっ?

 俺何か顔熱くねぇ?

 鏡に映った自分の顔を見て翔はまたびっくりしていた。

 え?え?何で?俺の顔赤くなってんの?

 咲が俺にキスしただけじゃねぇか?






「翔君ってば、お風呂行かないの?さっきから言ってるのに」

「あ、ごめん。じゃあ行こうか」



 確かここには混浴はなかったんだよな。

 俺だけならいいけど、他の野郎に咲の裸体を見せる訳にはいかねぇからな。




「……じゃあ先に出た方がここで待つ事にしよう」

「うん!じゃね翔君」




 今度は咲の浴衣姿かぁ。

 これもレアアイテムだよなぁ。

 脱がす前に写メ撮らねぇとな。

 あ~でもそこまで我慢出来るかなぁ。

 何だかすっかり咲のペースにはまってる気がするな、最近。



 ガラス張りの、展望風呂からの眺めは確かに綺麗だった。

 こりゃあ明日は咲に早く起こされるだろうなぁ。




 その頃、咲はお風呂からの景色に心をすっかり奪われていた。


 なんて綺麗なんだろう……。



 よし!

 明日の日の出はここから、って、そしたら翔君が一緒じゃないんだ。

 だったら部屋から一緒に見よう。

 そうしようっと。



 すっかりのぼせ気味になって、咲は展望風呂から上がった。

 持って来た浴衣に着替えて外に出ると、もう翔が待っていた。



 翔君の浴衣姿、カッコいい~!!




「翔君、浴衣似合うね。カッコいいよ!写真撮ってもいい?」

「へっ?俺の浴衣をか?別に構わないけど、そんじゃ俺も撮ってい?」

「いいよ?」




 マジでぇ~?

 何なんだよ咲ってば。

 水着の時はあんなに怒ったくせして、浴衣はあっさりオッケーするなんてよ。




 さて、夕食も済ませて、いよいよ翔の待ちに待った時間がやって来た。



 思えば今日は長かったぜ。

 ここまでの時間がよ。

 でも、咲があんなに喜ぶんだったら、それもいいのかもな。



「咲……」



 翔が咲の身体を抱き締めた。

 そのままそっとベッドに倒した。

 咲はまだ慣れないのか、翔の顔を直視出来ないでいた。

 それがまたいいんだよなぁ~。




「咲……俺、多分咲の事、壊しちゃうくらい愛しちゃうかも知んない」

「うん……あたしも、同じ気持ちだよ……」



 その夜、咲は初めて痛みから解放されて、女として翔とひとつになる喜びを知った。



 幾度目の夜の事だったのだろう。

 この時から、咲は翔に心を全て持って行かれてしまった。

 翔しか愛せない女になっていった。

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