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新しい日常

 ------朝-----





 翔の腕の中で目を覚ました咲は、自分が何も身に着けていない事に気付いた。




 そ……と、翔を起こさない様に、ベッドから降りようとしたその時。




「捕まえた。どこに行くの?」

「か、翔君、起きちゃったの?」


「とっくに起きてたけどな。咲の寝顔、ばっちり記憶しといたからね」


「やだぁ……あ、あたし裸「いいじゃない。俺もう咲の身体、隅々まで知ってるんだからさ。今更隠しても無駄だよ」」


「かけるくん、あの、あたし物凄く恥ずかしい……」



 そう言った咲の顔は、耳まで紅く染まっていて、それがまた翔には愛らしく映った。




 なんて可愛いんだろう。

 この子が本気で欲しかった。


 咲をひと目見たあの時からずっと、ね。

 それが今は俺の腕の中にいるなんて、夢の様だよ。



 誰にも触れさせるものか。

 咲は俺だけを見て、俺だけを愛してよ。

 俺は咲にとって、初めての男だからな。

 女は初めての男は忘れられないんだよ、咲。




 あと残る問題は、誰が咲を狙ってるか、だな。

 これが一番厄介な問題だな。



 間違っても、咲を今までの女の様な目に遭わせる訳にはいかないんだ。

 そんな事になったら、俺も正気ではいられなくなりそうだからな。



「ねぇ、翔君。今日って確か、平日だよね?」

「そうだけど、咲は多分まともに歩けないと思うよ」


「えっ、なんで?」

「じゃあベッドから降りて、立ってごらんよ。すぐに分かるからさ」



 言われた通りに立ち上がって、咲はそのまま尻もちをついてしまった。

 足に力が入らない。



 どうして?

 それに、身体に何か挟まってる様な違和感もあった。




「翔君、あたしの身体はどうなっちゃったの?」

「女の子は初体験の後はそうなるんだよ。しばらくその痛みは続くけど、じきに慣れるよ」




 翔はにっこり笑って、咲を抱き起した。


 これじゃあ、今日は学校は無理か。

 俺、そんなに無理させたっけ?


 まだ朝早い。

 チェックアウトまでまだ時間があるな。



 翔は、抑えていた分、今はそのかせが外れていた。

 咲の腕を掴んで、またベッドに押し倒した。



 きょとんとしてる咲に、昨夜と同じ手順でその行為を進めてゆく。

 咲も、翔にすっかりその身を預けている。




 が、いざその時になると、やっぱり激しい痛みが咲を襲う。

 咲が痛いのを我慢してる事に、もちろん翔は気付いていた。


 でも、止められない、止まらない。

 自分でもどうする事も出来なかった。



「ごめんな、咲。痛いんだろ?」

「う、ん……、でも、何だか幸せな気持ち……」

「俺も幸せだよ、咲が本当に好きだったんだ」

 



「まだ時間はあるか、少し休んで咲が歩ける様になったら出ようか」

「翔君、学校はどうするの?」


「ん~、どうしよっか?俺は別に休んでも構わないけど、咲ひとりで学校には行かせられないからな。ふたりで休んじゃおうか?」

「うん、そうだね。なんだかあたしも今日は学校に行く気になれないし」


「決まり!今日もずっと一緒にいようね」





 翔は本当に嬉しそうににこにこと笑っていた。




 つられて、咲も笑顔になる。

 楽しいな。




 今は翔君と一緒にいられるだけで幸せ。

 これが恋、なのかな?



「咲、身体、大丈夫?かなり無理させちゃったから、ちょっと心配なんだ」

「あたしの中にまだ翔君がいる様な感じがする……」



 それを聞いた翔は思い切り吹き出して笑った。





「それは咲が俺のものになったあかしだから、仕方ないね。それ以外は大丈夫?」

「だるい……」


 それを聞いた翔は更に爆笑しながら「俺そんなにしたかな?」と言った。




「翔君、何がそんなにおかしいの?あたし変な事言ったの?」

「いや、咲のはいたって普通の感想だと思うよ」



 取り敢えず身体は大丈夫そうだな。





「咲、腹、減らない?」

「ん~、よく分かんない。減った様な気もするし」



 相変わらず咲の食は細いんだな。



 でも、これからは俺の為に、少しずつでも食べて貰わないと倒れたりしたら大変だからな。

 これからは俺がちゃんと食べさせてやるよ。




「さて、と、そろそろ時間なんだけど……咲、歩ける?」

「うん、もう大丈夫だと思うよ」


「じゃあ出てから何処かでご飯食べよう」

 翔は慣れた様子でフロントに電話を掛けて「チェックアウトお願いします」と告げた。



 咲は、その様子をじっと見ていたが『どうして翔君はこんな事よく知ってるんだろ?』と、ふと思った。



「ねぇ翔君はこういう所入った事あるの?」


 唐突な咲の問いに、翔は「そりゃあ随分遊んでたから」と、ありのままを答えてしまった。




 咲がそれを聞いて不機嫌にならない筈はない。


 翔が咲に「出るから支度して」と声を掛けた時、咲の瞳から涙がこぼれて落ちた。


 翔はその咲の涙を見て「えっ?なんで泣いちゃってるの?どっか痛い?」と、おろおろしながら咲の涙を拭おうとした。


 次の瞬間、咲は「いや!翔君のばかぁ~」と翔の手を払いのけて、ベッドに突っ伏して泣いた。




 翔には何が起こっているのかすら分からなかった。


 今まで本気で女の子を好きになった事のない翔には、咲の涙が嫉妬の涙だなんて想像出来なかった。




「咲?なんで泣いてるのか、理由ぐらい聞かせてよ?俺、なんか悪い事したのかな?」


「……翔君、今まで何人の女の子とこんな事、して来たの?」


「えっ?なななな何でそんな事聞くのか、俺には分かんないんだけど?」


「だって、あたしは翔君しか知らないのに、翔君を知ってる女の子は他にもいっぱいいるんでしょ?」


「……もしかして咲、妬いてる?」


「違うもん!翔君を誰かに取られちゃったら、あたしは、あたしは……」


「咲、落ち着いて。俺の話しをちゃんと聞いて……確かに俺を知ってる女が咲の他にもいる事は本当の事だし、それはもう消せない過去の事だから何も言えない。でも、これだけは約束するよ。俺は咲以外誰も好きにはならない。今までの遊びとは違うんだ、だから俺を信じてよ」狼狽えながらも釈明する翔。


「……本当?あたしは今も翔君のファンから狙われてるんでしょ?そんなに翔君の事を好きな子がいてもあたしだけを好きでいてくれる?」



 潤んだ瞳のままで、咲は翔に問う。




「当たり前だろ!言っただろ、咲は俺が初めて本気で惚れた女なんだって。咲を狙ってる奴は必ず見つけ出すから。俺のダチにも紹介する約束してるしな」


「翔君の、友達?あのケンカ仲間って言ってた?」


「そうだよ、俺は今まで女をダチに会わせた事はない。みんな俺が遊びなのは知ってたしな、女は知らなかったんだろうけど。でも咲は違う、今回の犯人捜しにダチにも協力して貰ってるから、ちゃんと会わせておこうと思ってな」



 翔君は嘘は言ってない。




 確かに翔君の言う通り、翔君の過去は変える事は出来ない。

 でも、あたしは翔君を信じたい。




「……翔君、そのお友達にいつ会わせてくれるの?」

「いつでもいいよ。そうだ!今日これから会わせてやろうか?」


「えっ?随分唐突だけど、お友達にも都合があるんじゃ、ないの?」

「大丈夫、俺が彼女を紹介するって言えばみんな集まるぜ。可愛い子だって、話してあるからな」



 そう言うと、翔は携帯を取り出しメールを送った。




「これでみんなから返事が来るよ。何時頃なら集まれるか、ってね」




 程なくして翔の携帯が鳴った。

 メールじゃなくて、着信だった。



「おっ、電話かよ。もしもし、清志か?」

『翔、今からその可愛い彼女に会わせてくれるのか?』


「あぁ、彼女も会いたがってるんだ。みんなの都合はいいか?」

『そりゃ翔に合わせるさ。楽しみだな、お前が惚れた女に会えるなんてな』


「じゃあ、どっかの店で落ち合うか……いつもの店でいいか?」

『いいぜ。これから向かうからな、じゃな』



 翔は電話を切りながら、咲に言った。




「俺達の溜り場になってる店があるんだ。そこで落ち合う事にしたよ」

「翔君達凄いね。でも何人いるの?」


「全部で俺も合わせて13人だよ」

「そんなにいっぱいいるの?それをメールひとつで……みんな集まるなんて、凄いね」





 その溜り場と翔が言っていた店は、どう見てもスナックだった。

 駅に近い飲み屋街のひとつにその店はあった。





「あの、翔君。本当にここが翔君達の溜り場なの?どう見てもここって、未成年は入れないところなんじゃ……」

「ここはダチの直樹の母ちゃんが経営してる店なんだ。大丈夫、何も心配する事ない。」




 咲ににっこり笑いかけると、何の戸惑いもなくその店のドアを開けた。




「いらっしゃ……何だい、翔じゃないか。また全員集合かい?」




 少し掠れた声をしたその女性は、翔が女の子を連れているのを見て、驚いた様に言った。





「おや、随分と可愛い子が一緒なんじゃないか。翔の彼女かい?初めてじゃないか。お前が女の子を連れて来るなんて」

「俺の一番大事な彼女だからね、今からみんなに会わせる約束なんだ」


「また悪ガキ共が集まるのかい?仕方ないねぇ。で、何飲むんだい?」


「俺はビール、咲はどうする?」

「あたしお酒飲んだ事ないよ?ってか、こんなお店も初めてだし」


「じゃあ、ジュースにする?」

「うん」




「あと、お腹空いてるよね?ご飯食べる筈だったもんね。ママ、オレンジジュース。あと、何か食い物出してよ」


「はいよ、ほら、ビールとジュース。金払わない奴はお客じゃないからね。自分でやりな」


「ほら、咲。喉渇いてるだろ?」

「う、うん……でも落ち着かないよ」


「俺が一緒だから、大丈夫だって。そろそろ来る頃だな」




 と、翔が言ったその時。

 ドアが開いて、数人の男の子が入って来た。





「翔、早かったな。その子か?お前の惚れた子ってのは」


「うん、咲って言うんだ。咲、こいつがこの店のママの息子の直樹、で、こっちがさっき電話して来た清志。あっちのデカいのが山根」


「工藤咲です、よろしく……」




 咲は翔の友達の迫力に圧倒されながら、自己紹介を辛うじてしただけだった。



「これは翔が惚れる訳だな。想像以上に可愛いなぁ。ねぇ、咲ちゃん?翔じゃなくて、俺と付き合わない?」

「おい、冗談でも咲を誘惑なんかすんじゃねぇ。咲は俺の宝なんだからな」


「ははっ、冗談冗談。翔がそこまで惚れてる子じゃあ、気合入れて守んなきゃなんねぇな。なぁ、みんな」


「だな!けどよ、翔の彼女って知ってて、何かして来る様な命知らずがいるのか?」

「多分相手は女だ。だから余計に厄介なんだよ」


「女かぁ……。じゃあお前が捨てた奴じゃないのか?」

「そんなの、心当たりが多過ぎて解かる訳ねぇだろが」




 と、話して翔は『しまった!』と思い、咲の顔を覗き込む。



 咲は、この場の空気に馴染めない様で俯いたままだった。

 翔は今の話しを咲が聞いてなかったと思い、ほっとした。



 が、咲の口から突然「翔君、今の話し、本当なの?」と飛び出したからびっくりした。

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