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失ったもの

　駅前のファストフード店の二階から、ロータリーにある喫煙所が見える。吸わない俺から見るとそれは実に滑稽だ。我慢ができなくなった者が集まり、得のない煙を吸っては吐き出す。ストレス解消というなら他にもたくさんあるだろうに。

　店を出て駅に向かった。東京駅まで四十分くらいだろうか、スマホでもいじっていればあっと言う間に着くだろう。

「大阪旅行に行こうよ！」

　彼女が旅行情報誌を開いて俺に向けた。テーブルに身を乗り出す勢いで、タンブラーの中の麦茶が波打った。

　付き合って三ヶ月の彼女の提案を二つ返事で承諾した。お盆休みだと混む上に料金が高いので、六月一週目の土日に連ねて有給休暇を使い、二泊三日の予定を立てた。一ヶ月ほど前のことだ。

　今日がその当日。待ち合わせは東京駅。帰りは一番街でスイーツやラーメンを食べて帰る予定も立ててあった。

　新幹線が出発する十五分前に到着した。さぁ、乗り口まで急ごう。

　ただ、一つ問題がある。それは、昨夜彼女にフラれてしまったことだ。