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採用は手腕にかかってます

春都ということあってあちこちに咲き乱れている花はみな春に咲くものばかり、とても豪華であると同時にしっかり整備されている証拠でもあった。周りに見える建物はどれも古臭いような新しいようなよくわからんものだった。大正時代の建物と考えるべきかもしれない。和洋折衷というような建造物は皆木材と石でつくられてはいるが屋根は瓦ではなく一枚岩のようなものだ。ひょっとしてコンクリートなのかもしれない。


「どうだ同士?なかなかだろ?」


影は街に入ってから蝶に対し「少し歩かないか?」と提案していた。それに賛成して今は歩きながら八宇治様の元へといっている。もしかすると影はこの街を自慢したかったのかもしれない。


「そうだな、いくら住んでいるんだ?」

「おおよそ十万ほどと聞いているよ」


なるほど、空から見て小さいなーと思ってい来てみっればこいつらでごった返していたからびっくりしたが人口密度が高いようだ。ごもっとも人みたいなのは影とかがメインで人らしい人はあまりいないんだが。


「そりゃすごい、東京の約百分の一かー」


「へ?そんなに住んでるの?」


「住んでる住んでる、正確には約1340万だったかな?」


「・・・」


どうやら自信を無くしてしまったらしい。先ほどまでの威勢はどこに行ったのだろう。


「ま、まぁそれでもここが中心地なんですよ?」


「お、おうそうらしいな、後で観光でもするか」


「はい、結構な賑わいを誇りますからね」



確かに、ここらは俺の過ごしていたところに比べればとても騒がしく、人?もいきかいしてにぎやかだ。だがこの虚しさは何だろうか?すさまじい虚しさがこの街を占拠しているような気がしてならない。


「八宇治様はどこに住んでるんだ?」


「八宇治様はこの街の中心部に住まわれてます。周りは堀と塀ですからすぐにわかりますよ?」


「そんなお屋敷に住んでるの?」


「はい、長ですからね」


そうこういっているうちに確かにその屋敷の門に到着した。堀があり、塀があり、巡回する守衛の存在も見受けられた。なんか五メートルはありそうなんだけどあの守衛。骸骨で鎧をまとっている。


「守衛は皆鎧で武装しているのか?」


「はい、私もその一人です、待っていてください今開けるように言いますから」


そういうと蝶は門の守衛のとことまで行き何やら話し始めた。


「なぁ影、何だかこの街はあまりいい気がしないな」


「どういうこと?」


「なんていうか、こんなに同士がいるのに、まるで一人でいるようなそういう感覚に陥るような気がするんだ」


「ふーん、まぁ別にいいんじゃない?どんなところも住めば都というやつさ、それにここは住む以外に目的はないしね」


「は?わかりやすくいってくれよ」


「いいかい?君たちの世界にあったはずだ、自分の友人知人親族を除けば誰だかわからない。そんな人たちで構成されている町はいくらでもあったはず、東京もそうじゃないかい?」


何をいっているんだ?まったくもってわからない。もっと言わせてもらうならそれは当たり前のことではないのか?


「君たちにとってそこはどういう町だった?」


「どういうって、俺にとっては友人と遊んで帰る家があって・・・それで遊ぶところがあって」


「君にとっての町は生きるのに困らない、退屈しにくい、そしてすべてがあるという考えでいいのかな?」


「ああ、その通りだ」


「ならここは東京だ、娯楽はある、住居も私という知人もいる、まったくもっておなじじゃないか?」


「そうか?それにしてはつまらない雰囲気があるが?街にしては足りないものがあるんじゃないか?」


「それはなんだい?」


「活気というべきだろうか?いや違うな」


「君は賢い、よくその感覚を覚えておくといい」


「みなさん!移動しますよ!」


その声を聴き視線を向けると門が開いていた。中に入ってみればなんてことはない縄文時代を連想させるような卑弥呼、いや伊勢神宮のような木造建築だ、この世界は混ざりすぎなんじゃないか。


「それではこの部屋でお待ちください、間もなくお見えになります」


なんだかとても広い部屋に案内された。あたりは風通しがよく作られているのか障子や壁といったものがなく柱と天井というシンプルな作りだった。その中央には洋式の宝石で宝飾された玉座が見えた。


「同士」


かげがこちらを向いて話しかけてきた。その口は微笑んでいたが俺には口しか見えないのでさるの威嚇にしか見えなかった。


「お別れだね」


「そうだな、お前にとってはうれしいことじゃないのか?」


「まぁね、これでこの世界から解放されるからね」


「っへ、それにしてはあまり喜ぶ口調ではないなぁ」


「まぁ、いろいろあったんだよこの四年間」


「そうそう、聞き忘れたがなんで俺は四年もまたされなきゃいけなかったんだ?」


「わかるようになるさ、そのうちね」


「それにしても、もうすぐ八宇治様とご対面かぁ、なんだか緊張してくるな」


「そうそう、君は神様にあうんだかからそんぐらいの気負いでないと困るよ」


「なぁ、おれはどんな命令を受けるんだろうか」


「まぁ、本人に聞いてみないとわからないけど簡単なものじゃないよ」


ドン、ドンと太鼓の音が聞こえ、どうやら俺が長く待った八宇治様がくるようだ。廊下から気配が近づいてくる


「ふふふ、坊や、久しぶりぃ」


これが八宇治様か何とも若い顔立ちでかしこそうな人だ、いや、あの凶暴な目と艶やかな体型には見覚えがあるような気がする。夢か、何かで。


「八宇治様、こいつが新しい臣下として奉公にきた星遼太郎でございます」


「影、話には聞いていたけどこの子が遼太郎ねぇ、会うのが恋しかったわぁ」


「は、はぁ」


とたんに影に頭をなぐられた。おれは気づけば正座もしていなかったのである。


「すいません!こちらが不徹底でした!何分何も知らない餓鬼だったもので!」


「まぁまぁ、気にしないでぇ、あなたはやるべきことをやったまで、それ以上は命令してないもの、私ははそのお返しに帰らせてあげなくちゃね、長年のお勤めご苦労様」


「いえ、私はやるべきことをやったまでです!」


ずいぶん今までとしゃべり方が違うな、それほどこの人は偉いんだろうか。


「それじゃあ、あなたは別室で待機、私はこの子としゃべってから行くからね」


「はは!では失礼いたします」


影はそういうと直列不動に立ち上がり深い礼をした、この動作の合間、俺に目を合わせることはなかったが「無礼のないように」といわれる雰囲気をかもし出していた。いわれんでもわかる。そして影が退室したときこの場所は二人だけの静寂で周りの環境に干渉にない世界になったような錯覚に陥った。


「さて、遼太郎さんついに二人だけねぇ」


「はは、そのようで、俺はこれからどうすればいいんでしょうか?自己紹介?でいいんですか?」


「貴方はもう客人ではないわ、私の臣下でしょ?なら、私のほしい情報を頂戴」


まいったな、そういうのが一番困るんだよねぇ。


「星遼太郎、日本生まれ東京育ち」


「違う」


「幼少期に骨折して以来体の軸がずれてしまう」


「違う」


「通ってた中が」


「違う」


「・・・うがー!じゃあなんていえばいいんだよこの野郎!っは」


しまった。つい素になっちまった。やべぇよ、これはやべぇよ。八宇治様怒っちまったか?

確認してみれば驚いた様子も起こった様子もない。いや、無表情だ。彼女の目は俺に対する興味を示してはいたがそれだけであった。


俺は気づいた。これが八宇治様の恐ろしいところなんだ。何を考えているのかわからない。それだけじゃない。考えてみれば彼女はあってから愛想笑いすらしない。それほど彼女はおれに興味を示していないのだろうか。それとも表情乏しいのか。どれにしろこの状態は決してよろしくない。


「・・・はぁ私ね、最近とても退屈なのよぉ」


どういうことだ。俺の話はもう飽きたのか?それとも何とも思ってないのか?


「なんでかわかる?貴方みたいな暇人がこの街にはいくらでもいるからよ、あなたも死人の時はもう少し面白い人だったけどいまではもう別人ね」


「・・・そうですか」


「貴方にはこの街はどう見えた?優雅で豪華で繁栄しているように見える?それとも寂れてくすんで見える?」


「後者ですかね?」


「はぁやっぱりつまらない、言われた選択肢しか答えられないなんて想定しているなかで一番退屈ね」


く、なかなか手ごわい人だなぁ。いやめんどくさい人か。


「質問してよろしいでしょうか?八宇治様」


「なに?」


彼女は爪をいじりながらこちらに返答した。


「八宇治様はなぜ俺をこの世界を連れてきたのですか?」


「私は連れてきてなんかいないわ、あなたが勝手に来たのよ?本来時間の止まった世界は私が招待でもしない限り誰も来ることはないわぁ」


「ではこの世界はなんですか?死後の世界ですか?それとも神々の住む世界ですか?」


「どれでもなくわたしの世界」


「貴方は神様ですか?」


「ねぇ?今あなたの話をしているんじゃなかった?」


少々いらだったような口調で彼女は言った。


「話を遮ったのは貴女でしょう?神様ですか?」


「神様と言えなくもないけど、違うわね」


「OK話を戻しましょう、俺は星遼太郎です」


「聞いた」


「貴方は?」


「八宇治」


「何か質問は?」


「ない」


「じゃあこの話は終了で」


「へ?ちょっとまってよぉ、それじゃあ命令についてとかできないじゃない」


「やっぱりそういう題材を探すためのものでしたか」


「!!」


彼女は多少驚いたのか、口を引きつっていた。


「あなた、私を誘導尋問してたの?」


「何のことかさっぱりだな」


「してたのね、わからなかった」


「わかってたろうが、こんな安っぽいのにかかる分けねぇだろあんたそのあとおおかた不採用にしようとでも思っていたのか?臭い三文芝居しやがって」


「やっぱりそれがあなたの素なのね」


こいつやっぱりか。どうも、ねっけられてるなと思ったぜ。


「貴方も、そういう風にしゃべるんですね」


「そ、まぁ少しボロが出たけどね」


「これでお互い素で話せますね」


「・・・遼太郎、ひょっとしてそれが目的でひっかかってきたの?」


「まぁまぁ、そういわずに」


「これで本当に退屈なら命令出す前に消えてもらうからね」


そうか、命令をもらう前にこんな試練が待っていたのか、消えるって存在自体ってことだよな?さてはて影はなんで教えてくれなかったんだ。


「貴方は何者なの?」


くそ、思ったよりめんどくさい質問だな、こういう時はどうすりゃいいんだ。

「それを知りたければ一つ何か命令を」



「・・・ふーん、ま、たしかに面白いか」


そう彼女は『一回も笑わないで』言った。わかるだろうかこの恐怖、俺はいうなれば『絵』とお話をしているようなものである。相手は瞬きも感情もあらわにしない絵だ。


「よし、命令権を行使し、この世界の神八宇治が命令する、従わなくては臣下ではないと覚悟せよ」


途端に張りつめた雰囲気が漂う。


「貴方はこの世界を『滅亡』させなさい」


すまないが日本語ではなしてくれないか。

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