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止まった世界ではあらがえない!


結局のところ歩くほかない、そう悟った。それははじめから決まっていたという確信からくるものだった。奉仕とは漢字からくるようにそういうことなのだろう。その言葉の重さを再確認し、また、自らがしたのであろう契約に絶望した。その現実は正直、認められそうにない。



「ねぇ、遼太郎、今年の夏は何をする?決まってないなら海行こうよ」


なんてことはない普通の帰り道だったんだ。


「は?こんなにくそ熱いのに何かやるって病気かよ?」


俺はあの時になるまでそういっていたんだ。何とも懐かしい記憶だ今から四年も前のことなんて信じられない。いや、『四年』は実際立ってないんだが。


「なんでそういうの?いじめ?このセクチーな私の水着が見たくないわけ?」


そういってふくれっ面になる彼女は今もわすれることができないでいる。無論、忘れたい記憶ではないが。


「んん?え?え?せ・く・しー?ですか?」


そういえば暴力を振るわれることぐらいわかっていたことなのに、俺はそのあとに少し苛立っている彼女の顔が見たくて、ちょっかいをかけてしまうんだ。


「ふん!発展途上、発展途上だよ!そのうちナイスバデーになるんだよ!高校に上がるころにはなるんだよ!おっぱいがでかくなるんだよ!」


「どこをどうしたいかはわかった、でもよ、それを公の前で言うのはどうかとおもうけどな」


「っは!」


彼女は気づくには遅すぎた。おそらく最後のセリフが強調されて聞こえたのだろう道行く人々は少し、また少しと遠ざかっていく。無論こちらに目を向けてるる人の目には暖かいまなざしが紛れていたことは言うまでもない。


「う~、くそぉ、はめたな?」


彼女はその場に立ち止り耳まで赤くなったのを悟られぬよう、両手で顔をかくしてこちらをにらんだ。


「何のことやら、恥ずかしすぎて汗が出てきていることかまったくわかんねぇっすわ」


それは言わん方がよかったと今でもそう思う。あれ以上茶化したのが悪かった。そうしなければ俺の首はあらぬ方向に行くことはなかっただろうし、もっていたカバンも飛ばさずに済んだはず。


「うごごっご首がぁ~エクソシストになっちまう!」


「もう!いい加減にしてよ!」


そうこういいつつも、俺は歩くし、彼女は髪を整える。そしてしばらく沈黙をして歩いていく。おれにいつもいびられてもついていく彼女には正直感服しているし、差に近いものを感じられる。


彼女は俺の同級生、肩まで髪を伸ばし、きれいな顔立ちでくっきりとした鼻、そして透き通った目を持つうえ何に対しても勤勉な才色兼備なかただ、だが、この活発的な性格はもう少し控えていただきたい、声でかいし。


「んで、さ遼太郎」


沈黙を破り彼女が話しかけてきた。少し緊張気味な物言いだ。


「本当に、行かないの?私、結構楽しみにしているんだけどよね」


「去年行ったのにか?」


「そんな一生に一回行くようなところじゃないでしょ・・・」

  

「ま、マジでいかないけどな」


「どうしても?ふーんそうなんだ・・・」


「なんだ?寂しいのか?友人と行けよ」


「え?さみしくはないよ、でも遼太郎と『二人で』行きたいなー、なんておもってたりするんですよ」


彼女のその突っかかるような言い方は今でも覚えているし、忘れるはずもない。話の主旨もある程度察するところがある。そうなればいうべき言葉も分かってはいる。


「知らねーよ、勝手にいってろ」


「そう・・・」


明らかに落ち込んでいる、単純すぎるよ少しは隠そうよ!


「あ!そうだ!じゃぁほかの男友達のこといっちゃおうかなー」


誘うように視線がこちらに行く。


「行けば?」


「え、えーとぉ、色々イケナイことやったりとか」


ここで何か適当に言っておかないとこのジレンマから抜け出すことができない。そう確信した俺は心にもないようなことを言う。


「やめろよ、妬いちゃうだろ」


無論、そんなことはない。


「え?」


「うん、まじで」


「え?あ、ふ、ふーんそうなんだ、フーン遼太郎は私がほかの男の子といると妬いちゃうのかーへぇ」


ニヤニヤとこちらをうかがい始めそのあと嬉しそうに笑いやがった。どうやら成功したらしい。


「それじゃいってくれる?」


「・・・まぁ、浮くぐらいで済ましてくれるならいいか」


「やった!絶対だよ?」


本来ならば行くことはないだろうし、すっぽかしていかない。そんな男になんで彼女はこんなにも積極的にかかわろうとするのかはまったくもって理解できない。でも、正直かまってくれるのはうれしい。そんなことを考えながら俺は帰り道を歩くのだった。


「なに?どうしたんだ同士?疲れたか?」


そして久しぶりに思い出に浸っていたのにも関わらずこいつときたら、水を差すようなことを言う。それは現実に感覚を戻したため、薄暗い土のトンネルに視線が戻った。


「うるせぇ!なんでもねぇ」


俺が拗ねているのを察してか、少々面倒くさそうな雰囲気を影はだし、俺から離れて歩くようになっていた。


「そうか、じゃぁ歩こうもうすぐ着くからね?」


「・・・はぁ、帰りてぇ」


「同士には帰りたいところがあるのかい?」


「あるさ、俺にはにわわねぇ女の子がいるんだよ、そいつと一緒にもう一度学校帰りてぇ・・・って何言わすんだボケ!」


俺は影に蹴りをくらわそうとするも華麗に影はよける。もう手加減はしないようだ。


「いい加減にしないと、気絶させてさっさと送るよ?」


「ッチ、わーったよ」


「それでいい」


それから俺と影は蟻の掘ったトンネルをしばらく沈黙にて通った。すると、先から光がもれていくのがわかった。


「ひょっとして出口か?」


「だね」


「どこに出るんだ?」


「見てみればわかるさ」


「・・・こいつはすごいな」


俺が見たのはどこまでも続く草原だった。そこにはまぶしい日光が降りそそぎ、時間が動いているのか風があった。草木は踊り周りは何とも穏やかな雰囲気が充満していて、さながら極楽のようなところだ。季節で言うなら春、ここは永遠の春に包まれているのだろう。だけどこの人工物のなさは異常に思えるのは都会育ちゆえだろうか。


「ここはなんだ?」


「八宇治様が納める国、いや?地域かな?そこの端っこ」


「地域?じゃあ、ほかにも統治者がいるのか?」


「いや、さっき話したとうり、この世界には王は一人、神は一人なんだよ」


「?」


「さぁ、ここで待つんだ、じきに迎えがくるからそれまで世間話をしよう」


そういって影は草原に座り込みただ草原を見渡していた。


「じゃぁ聞くけど本部って何だ?」


「本部ってのはこの世界の統治する八宇治様のサポートをする組織さ、考えても見てくれこの世界君の世界とうり二つなんだよ?その世界を統治するのにいくら万能な八宇治様でも限界があるってものさ」


「つまり、命令を伝える組織ってことか?」


「八宇治様非公認だけどね」


「そうなのか?」


「本人はそんなものなくても自分でできるって言っているからねぇ」


「八宇治様ってどんな人なんだ?」


「不思議な人さ、俺たちを作ってこの世界を維持しようとしていることしかわからない」


「お前らは元は何者なんだ?前の説明だとその姿は八宇治様からもらいうけたものだとは分かるけどもその前のお前は?」


「俺はおれさ」


風が強く吹き始めている、空から何か来るのがわかる。それは太陽を背に向けているので何者かはわからない。だが近づいてくるおとは独特なものだった。金属がこすれあうようなそんな音が聞こえる。


「きたようだね」


そういってしりを払って影は立ち上がった。


「同士、彼女は優しい口調だが気をつけろよ?噛みつく癖があるからね」


そしておれのまさに目の前でそいつは着陸した。そこにいたのは古臭い恰好をした女の人だ、戦国時代の鎧をまとい、帯刀をして髪を一つに結ったとても穏やかな表情の人だ。


「お久しぶりですね影?報告は聞いていますよ?貴方口ができたんですね」


微笑みながらそう彼女は話す。女と会うなんて四年ぶりだ。女かわからんが。


「きれいだ」


思わずそう漏らしてしまった。が影の忠告を思い出す。


「この景色」


「っぶふふふ」


笑うんじゃないよ、影。


「そうですか?中心地に行けばもっときれいなところに出ますよ?」


「そうなのか?」


「ええ、八宇治様にあったら是非いらしてください」


「そうなのか、ぜひ来るよ」


ゴホン、影が咳払いする。


「そういえば蝶、八宇治様からの使者ではなかったかい?」


蝶?それにしては羽も触角も見当たらない。生えてるようには見えない。しかし蝶ということはこの人はカゲやアリと同じ人で八宇治様から仮の姿を借りているってことか?そして蝶が故、こんなに背が大きいのだろうか?俺は172ほどあるがこの娘は167ほどあるぞ。


「あ、すいませんでした、久しくよその人とは会っていなかったので、そういえば貴方ともしばらく会っていませんでしたね?影」


「え?そうだったかな~?そういえばそんな気もするような」


「そうですよ、たまには顔を見せにきてもらいいんじゃないですか?昔はよくあったじゃないですか」


「昔?、おい影お前は何年影をやっているんだ?」


「え?まぁそこそこかな?」


「何言ってるんですか影!あなたも私も古株で・・・むぐむぐ」


「蝶さーん!そろそろ行きましょうか~!」


「???」


「ケホケホ・・・すいません主旨がずれてしまいました、それでは行きましょう!我らが神の八宇治様のところに」


「え?うお!」


そういうと風が地上から空に吹き俺達を浮かせ低空飛行を始めた、まるで、見えない自動車にのっているようなそういう感覚だ。


「目いた!風強い!」


無論、防風の窓のない車だけど。


「当然です!私はこの世界で一番速いんですから!」


となりから大声でこちらに彼女は言った。彼女はどこぞの戦闘種族のように一直線にした体と地面を水平にして風をよけるがおれはそうはいかない。そんな大勢はできないの大の字になって風を受ける。


「何にも見えないんですけど!」


「同士、水の時と同じで細く目を開ければ問題ないよ?」


そういった影は風の影響を受けないのか立ちっぱなしで動こうとしない。



「え?あ、本当だ!」


そこに見えるのは瞬間的に移動する草原で、こうやって高速に動けば結構草原も凹凸がありごつごつしていることがわかる。


「どうですか!すごいでしょう?」


蝶が笑いながらこちらに向けてそう言い放った。それは誇らしいように、それは自慢のように、また褒めてほしいようにも見えた。


「そうだな!これいつつくんだ?」


風の音がうるさいので大声で話す。


「すぐですよ!同士!」


「なぁ!俺も同士って言っていいのか?」


「ええ!いいんですよ!八宇治様に仕えてる者『同士』仲良くしましょう!」


「わかったぜ!同士!」


と、同時に疑問がわいたので率直に質問した。


「なぁ!お前はなんで影を同士と呼ばないんだ!?」


「なんでそんなこときくんです!?」


「え?なんとなくかな?」


「ふるーい仲だからです!旧友ですよ!」


「影!そうなのか?」


「え?まぁうんそれほどで」


「ふかぁーいなかですよね!?影!とっても深―い関係ですよね!?」


「おい!同士気になるぞ!話してみろ!そういう仲なのか!?」


おいおい、恋の話も四年ぶり過ぎて顔がにやにやしちまう。


「同士!いえることは一つだ!異性の知人とは恋愛だけでなくふかーい友情があってもいいんじゃないか?」


影のその言葉に蝶は反応し、少し影に視線を向けた。その眼は少し思い出深いようなとにかく熱意のような眼差しがあった。そして、風にまじり何かつぶやいた。


「・・・いけず」


「なぁ蝶!もうすぐ着くか!?」


影が話を変えたがってそういった。


「もうすぐです!ほらあの町!あそこが八宇治様の住処である「春都」です!」


そういわれるとなにかごちゃごちゃした人工物が見える、あそこがそうなのだろう。


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