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止まったし、記録する

もしもの話をする。もし世界の時間が止まったとして、自分はそれを認識することができるだろうか?

もしもの話をする。もしそれを認識してしまったら、自分は何者なのだろうか?超能力者?科学者?はたまた人間ではなくなってしまうのではないだろうか?

観測者という言葉は知っているだろうか?簡単に言えばそいつはボッチだ。それを証明する方法もないし伝えようもない。たとえば、私が見ている赤と、ほかの人が見ている赤を同じ色だと証明する方法がどこにあるのだろうか?それと同じで観測者もその情報を口には出せても、いやこの話は一人スレッドで書くべきものではない。まぁ、みるひともいないんだろけどね、結論から言えばなんということはなかった。どこにでもいる、男子高校生はいつものように食事と睡眠授業部活をそつなくこなしそしてなおかつ友人との交友関係も維持しながら生きてきた。そんなさる八月のこと、突然。


世界は止まったのだ。それさえわかってくれればいい。


それは下校中のこと、スマートフォンをいじりながらの帰り道、友人と別れ、一人帰る午後七時半のこと。住宅街の帰り道。蝉のうるさい街。突然スマートフォンはフリーズした。タップしようがしまいが応答せず仕方なく強制終了した。がそれもできず暑さににイライラして手汗が出たのを覚えている

それは待てども待てども復活しないからしまうことにした。


「っくそ、ショップに行くしかないか、って痛!おっさんなにつったてんだよ!」


目の前をあるいていたはずのその人にぶつかりしりもちをついてそう吠えてみた。


「あんた道の真ん中で止まったら迷惑だろうが!おい!聞こえてんのか!」


そういっても応答しない、こいつおれをばかにしてんのか?


「サッサトどけ・・・よ?あれ?何も聞こないな」

初めに襲ったのは静寂、何も聞こえない上に

これといった変化を感じられない。これは異常だ。おい、いったいなにがおこってるんだよ・・・

「おい?おいおいおい、なんで誰も動かねぇんだ?みんなさっきまであるいていたよな?

なんだこれ?」

これが今から「四年前」のことである。


そう打ち込んで俺は椅子から立った。時計は「四年前のさる八月の七時半」を指していた

そう、この悪夢は終わっていない。おれはこの悪夢を四年生き残っているんだ。


まず自分の部屋を出るために半開きのドアの隙間から抜けるようにでる。これは何も開けるのがめんどくさいわけではない。かといってかなり古くてあかないわけでもない。極端に「動かないのだ」動くことができないのだからこういう隙間をすりぬけるしかないというわけだ。


そして階段を降りる。四年もたつのにこの階段は埃一つとして積もってなどいないとても衛生面がいいものだ。おっとよけなければ


「おはよう母さん」


返事がない


「いや?もうこんにはかな?」


そういって置物のように動かないそれをよける。しかし邪魔だ掃除機を持ってあがったりなんかするから狭くてしょうがない。本当にじゃまだ。「あの日」に止まった家族を見たときは悲しく、絶叫したものだがいまではもう置物でしかない。いうなれば俺は絶滅危惧集に指定された「人間」だ、今更種族を残すすべなんてないし世界は俺一人だ。そんな動物は今までどれほどいただろう、日本のトキなんてきっとこんな気持ちだったのだろうか、まったくもって不快だ。


ベランダに出て深呼吸する


「ラジオ体操第一!ちゃんちゃららららら、ちゃんちゃららららら、らららららららららららららーはい」


ラジオ体操は日ごろの日課だ。


「一、二、三、四」



「さて、今日の食事は何じゃらほい」

そういってダイニングテーブルの椅子に座る。無論座れるぐらいの隙間のある椅子だ。そういって飯が食えるわけではないし、特別食う必要もない。そう、食べなくても別にいいのだ。四年前から止まってしまっていて。食べ物はすべて固まって食べることなど鼻からできない。だから最初は餓死するんだと思っていた。しかし一か月食べなくても腹さえすくことができずにいた。


このように俺は生存が特に厳しいわけではなくこれと言って何不自由なく生きることが可能となったのである。ゆえに、この四年間で多少なりともいろいろわかることがある。二回から持参したカメラの録画機能をONにして続ける。


「記録、第千四百六十回さる八月の午後七時半。これはおれにおこった現状を整理するために記録するものである。まず俺は星遼太郎、四年前の時は中学二年生、今は順調にいけば高校に入っていただろう、この世界は今日も耳鳴りしか聞こえない」


こんなことを記録すること自体に意味はないのかもしれない。


「だが俺は今日も生き延びている。」


しかし、そうだとしてもやり続けるだろう。


「今日の記録はこの世界の性質についてだ、まず一つにこの世界の物体はほとんどが動かないし壊れもしない、それは埃ひとつにしたってそうだ」


そういって頭をかく。


「じゃあ残りのもので動くものは何か、それは二年前に発見したこのカメラと二階のPCそして身に着けていた携帯時計、理由についてだがわからない、だがカメラはわかった。あれは撮影しているときに落とすそぶりをした人が近くにいたけど地面に落ちていたカラだ、つまり例外的に言えるのは空中にあった物ということ、これから考えるに「あの時」地面に接していなければすべて動いているということだ、そしてそれは簡単に証明できた、ハウスダストだ、空中に浮いているハウスダストは今も普通に浮いているのだ、現に俺もあの時しりもちをつく間宙に浮いていたのだ」


「二つ目、この世界では「あの日」以降気温が一定だ。いや当時八月だったんだが今はそんなに熱くない。これはおそらくもう俺は気温を感じる能力を失ってしまったんだと思う。」


「そして重要なのはこの三つめなんだが、あの日から動かなくなったこの世界は、水は鉄のように固く、人はマネキンとかし拾えるものは限られている。特に人間は殴ってもまったく反応しない。かなり固くなっている」


「そっして一番重要なものがある、それは俺は鏡に映らないということだ」

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