01 プロローグ
またやってしまったて…………(;゜ロ゜)
夜の東京は喧噪に包まれていた。
仕事を終え足早に家に帰ろうとする者、酒場には上司への愚痴を友人に話す青年。夜遊びをしている高校生もいる。金座のスクランブル交差点には人が蟻のように群がっていて、どこか別の世界を見ているかのようだ。
人々の動きが、吐く息が、熱を持って東京を包み込んでいる。
こんな暑い夏の夜、子供達は夜中まで起きているとよく親にこう言われるのだ。
『早く寝ない悪い子には怪が来ちゃうよ』と。
怪。
それは何時頃から語られ始めたのだろうか。
誰からも気にされない。
誰の記憶からも残らない。
そしていつの間にか消えてしまう神隠し。
それが怪。
そんな都市伝説信じていなかった。
噂は噂。
私だって、信じていなかった。
けど、いざなってみると以外とつらいものだ。
ガス灯の下に立つ半透明の私に気づく人はいない。
そして私を素通りしていく人々の本音を視る度、透けていく。
会社員らしきメガネをかけた男が素通りしていく。
ああ、なんて醜い。
ヒトはなんて醜い生き物なのだろう。
そしてまた一人、熱気溢れる東京から、誰にも知られず消えていった。