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第二章ー3

     3


 帰宅途中、舞亜は終始無言だった。事件のことで頭がいっぱいなのだろう。その証拠に、「男の人について口を閉ざしたということは外向リンの行動に何かしら関与があるということ。出ました謎の人物。ふむふむ。その男は学校内で行動できる、怪しまれないで侵入できた、教師? いや、教師なら外向リンは『男の人』ではなく、『なになに先生』と云ったはずだ。用務員? 事務員?」と、声に出して独り言を云っているのだから一生懸命推理しているとわかる。

「じゃあボクはここだから」「ふむ。また明日」という簡単なやりとりでボクたちは別れた。

 家に入る直前、隣の家から蘭が飛び出してきて「くおら~さんざん心配させといて何処に行ってたのよ~」と叫びながら左ネコフックをわき腹へ。心配させといてって、誰がボクを保健室送りにしたんだ、とは考えただけで口にはしなかった。蘭にいろいろ詮索され、舞亜といっしょに空子の家に行ったことを話して聞かせると、案の定、自分を置いて調査に乗り出したことに憤慨した。なんとか蘭を落ち着かせる。彼女には自分の考えがあるらしくて、それを聞けと、半ば強引にボクの家に上がり込んだ。追いだすことはできない。おじゃましま~す、あら蘭ちゃんいらっしゃい、という蘭と母親のやりとりを聞きながら二階の自分の部屋へ。

 蘭の考えとは、こうだった。


「みんなはリンが天井までどうやって行ったのかを探ろうとしているけど、もしかして、天井まで連れて行かれたんじゃないかしら」


 それは鋭い可能性だ。なるほど。面白い。犯人は、トリ? あり得る。否めない。


「ありがとう蘭!」と云って、無意識のうちに蘭に抱きつこうとしたら見事にネコアッパーを食らってノックアウト。意識を取り戻したのは翌日の土曜日だった。


     ☆


 生物を受け持っている(ひょう)()は自分の運命を呪っていた。

 何処で道を誤ってしまったのか、と。

 『あれ』を利用することによって至上の快楽を手に入れられるはずだった。

 それがどうだ。今は命を脅かされている。

 暗い廊下を走る。自分でまいた種。自業自得。という罪にさいなまれながら。

 殺人鬼は何処だ? あれは大丈夫か? あれは大丈夫だ。ばれっこない。


 何故こうなってしまったのだ? それは、『発見』がいけなかったのだ。そうだ、すべては『発見』が悪いのだ。『発見』それから『喪失』のせいで人生が狂いだした。


 準備室に来た女生徒のあの眼は、眼光は何だ? 女が準備室に来てほんの数秒後だ。女の口の中にある牙がいびつに光ったのだ。

「復讐する機会を与えてくれてありがとう」

 そう云った。誰に云った? たしかにあの女の口はそう動いた。

そのあとすぐ、女が眼の前にあるテーブルを俺に投げてきたのだ。大理石。男ひとりではとうてい持ち上げられない。テーブルは殺意の塊を載せて、まるで重力を無視したかのように一直線に飛んできた。それから頭をかすめ、背後の壁にめりこんだのだ。


 兵児は転ばないように、しかし速度を落とさないように、階段を下り続けた。

 復讐? 成績を理由に女子生徒を生物準備室に呼び出し、薬で眠らせていろいろやった。

 復讐? 身に覚えがありすぎる。しかし、何故、『彼女はそれを知り得たのか』

 まあいい、と兵児は逃げながら考えた。ここを何とか切り抜けて、ゆっくりと殺人鬼を罠にかけて、それから殺してくださいと叫ばせてやる。それでもなぶってなぶって殺さない。生かし続ける。生かし殺す。

 一階へと到達する。止まらずに外へと向かって駆け出す。正面にあるドアの窓からもれている外灯の灯かりが自分を手招きしている。

 兵児の口もとがいびつに吊りあがった。

 解放。勝利。悦楽。復讐。

 覚えておけ、俺を怒らせたのは間違いだったと、後悔させてやる!

 外へと飛び出た兵児は天を仰ぎ、大声で吼えた。明日への――未来への雄叫び。

 視界の片隅に映るひとつの影。

 気づいた次の瞬間、兵児は闇の奥底へと呑み込まれた。


                      つづく

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