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第九章ー1

   第九章 共存共栄


     1


(もう少しで誕生日だけど何買ってもらうんだよ。先月発売された最新携帯ゲーム機か? それともラジコンか? 洋服? かっこいいのでも見つけたの? え? かわいいの……)


(俺を想ってくれる気持ちはうれしいけど、そんな趣味ないんだよ。ゴメン)


(聞いた聞いた? 富良野くんって、どうやらあっち側の人らしいよ)

(ええ~ちょっとショック。でも、そういう雰囲気というかなんというか、云われてみれば納得ね。かっこいいというより、奇麗だもん)

(なんだか気持ち悪いわね)

(ほんとほんと、早く進級してクラスが変わってしまわないかしら。同じ空気を吸っているって考えただけでもイヤだ~)


(教育が間違っていたのか? とにかく、俺は許さん!)


(家出してきたんだ? でもそういう境遇の子、この世界じゃ多いからね。ま、あとはあんたの器量や努力次第だから頑張ってね)


(こんなに長く人気を保っていられるなんてさすがね。この業界は寿命が短いのよ。それを、すばらしいわ。あなたならもっと上を目指せるんじゃないかしら)


(え、家に帰る? まああんたの人生だから無理に止めるようなことはしないけど。でもこれだけは忘れないで

 すべての親が、血の繋がった子を、許すとはかぎらないよ)


(ただいま~。ごめんなさいね遅くなっちゃって。あれ? 帰ってないのかしら?

 お父さん、お父さん? な、何やってるの? あんたは誰? この盗人! 早く離れなさい!

 え? まさか)


 お、お前は、(あきら)なのか?


 あははははは


     ☆


 南先輩と富良野が争う音でボクは眼を覚ました。激しく咳き込みながら眼を細めに開けるとふたりは窓際でもみ合っている。富良野は左手で南先輩の胸ぐらをつかみ、もう片方の手で翼を握っている。

 み、南、先輩。か細い声でそう呼びかけるのがボクには精一杯だった。それでも彼女は気づいてくれた。

「恵造くん! 無事でよかった」と、南先輩が云った瞬間、次に口をついたのは絶叫。半透明の綺麗な翼が、半分くらいの位置からむしりとられたのだ。噴き出す血飛沫。その衝撃で南先輩の足がもつれる。危ない、とボクはふらつく身体に活を与え駆け寄る、しかし、遅かった。背負い投げのような形になり、富良野は窓の外に投げ出されたのだ。下を覗き込むと、富良野は両手を上に伸ばしたまま落下して行った。『ダイハード』の最後を彷彿させた。

「どいて」と、南先輩が片足を窓の(ふち)に乗せる。

「ダメだよ先輩! 翼をケガしているじゃないか!」と叫んだが遅かった。

 空へダイブ。南先輩は富良野を空中でキャッチする。翼を広げる。羽ばたく――が、落下する。云わんこっちゃない、とボクは足元にある輪状(りんじょう)に巻かれているロープを発見。おそらく矢野未殺害のために用意していた余りだろう。それを拾い上げカーテンレールに結び、ロープの反対側を自分の右足首にも結ぶ。すぐにボクも、ダイブ!

 南先輩は翼を負傷しているといっても半分は残っているわけで少しだけ効力が残っていた。落下のスピードが遅い。だからボクは追いつくことに成功した。南先輩! というボクの声がとどき、彼女は見上げる。富良野は南の手の中で気を失っているようだ。そして、南先輩が腕を上空に伸ばす。ボクはそれをしっかりと捕まえる、つもりだった。突然ガクンとボクの身体が急停止。ロープの長さが尽きたのだ。見る見る小さくなる南先輩と富良野。やがて、ドチャリ、と聞きなれない音が薄闇の中から響いてきた。


     ☆


 静かな住宅街が喧騒に包まれた。何事だと顔を覗かせる者たちを警官たちは必死に外へ出るな、と警告する。それでも好奇心を抑えられない何人かは警官の善意を無視して、顔を出す。そして後悔することになる。

 八人いた警官たちはすでに三人に減っている。もう何発、発砲しているかわからない。何度、応援を呼んでいるかわからない。

 パニックの中、蘭はそれでも警官たちを守ろうと身を(てい)した。しかし、ひとりまたひとりと命を落としていく。しまいには近所の連中も出てきて、もちろん男の場合は殺害される。止めることは出来ない。次から次へと被害者が増える。可子が振り下ろす腕、繰り出される脚は、みんなの未来を根こそぎ破壊していく。もうダメ、とあきらめかけたとき、ひとりの警官が蘭に近づいてきて云った。

「ここを離れて。とても君を守れそうにない」

 蘭はその言葉を耳にして、感動した。何処をどう見ても自分のほうが力は上で警官たちを守っているのに、彼はそう云ってのけた。気持ちの表れ。信念の表れ。男としての誇り。

「もう少しで応援が来る。だから大丈夫。早く」

「ありがとう。お言葉に甘えさせてもらうわね」

 もちろん離れるつもりはなかった。否、離れることも奮闘することも出来なかった。次の瞬間、蘭は腹部に激痛をおぼえ気を失ったからだ。


 舞亜が恵造の元へ駆け出してからわずか数分、一帯は、血の匂いが立ち込めていた。


つづく

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