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異世界行ってもボスとは・・・・  作者: 神成泰三
ルセインとボス編
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少女、世界


「…そうですね。ですがその前に、ボスにお聞きします。貴方は、どの程度この世界のことを理解していますか?」


「…俺が知っているのは、アメリカが数千年前に滅んだことと、俺が使い魔としてこの時代に飛ばされたこと、後は魔法とかいう訳のわからない力が存在していること、ほかにもいろいろ言いたいことがあるが、とりあえずそのくらいだ」


ボスの回答に男は口に手を当て、数分ほど静かになると、またルセインに顔をむけた。今更どんな答えが来たとしても、今以上に不可解な現実など存在はしないのだ。ルセインは拳を握りしめ、男の回答を固唾をのんで待つばかりだ。


「順を追って説明しますと、先程も申し上げたように、アメリカ合衆国は滅亡などしておりません。地上から地下に拠点を移しただけです」


「…地下に? なんでそんなことをするんだ?俺が見た限りでは、まだまだ地上は住めるように見えるぞ?」


「それはここ最近、約三百年間の話です。それまで地上は、少なくとも人類の住める環境ではありませんでした」


「…ここ三百年間だと?」


ルセインは男の話に、若干の違和感を覚えた。ここ三百年で人類が外に地上に出られるようになったのならば、少なくとも、ルセインの知っているアメリカ並みの科学力までは回復しているのではないだろうか? 少なくとも、地下に生存できる区間を作る技術はあるのだから、可能性は高い。というよりも、そもそも地下で暮らさず、さっさと地上に出るべきではないだろうか?


「三百年もありゃ元の科学レベルに戻ったろ。なんで中世レベルにまで後退してるんだ? そもそも、今日の今日までなんで地下に籠ってたんだ?」


「…それは、地上攻勢に欠かせない最後のピース……ボスの存在が、必要不可欠だったからです」


「………はあ?」


男の話が、あまりにも突飛しすぎてついていけず、思わず悪態をついてしまった。男の地上攻勢というう不穏なワードも気にはなるが、それ以前に、ルセインなしではできないという言葉が、よりついていけない。男はルセインを使って、いったい何を企んでいるというのだろうか。


「全く話がみえない。もっとわかりやすく説明できないのか?」


「そうですねえ……長くなりそうなんで、話さないことにしていたのですが、少し歴史の話をすることにしましょうか」


男はルセインと対面するように椅子に座り、一呼吸を置くと、口を開いた。


「ボスがこの時代に飛ばされた日より僅か三年のことです。NASA管轄下のゴダート宇宙センターが、三十光年先に、強い光線を放つ天体が、突如として発生したと報告がありました。この異常事態に、政府は混乱を恐れて公表せず、トップシークレットとして天体の観測に全力を尽くしたのです」


「……天体、ねえ」


「……ボス、私はいたって真面目に話しています。この貴重な時間を無駄にしないようにです。なんたって、この地上でこうして会話をしている人類は、私と、ボスだけなんですから」


男の言葉に、ルセインは大きく目を見開いた。地上で話している人類はたったの二人? では、今日の今日まで共に過ごしてきた彼らはいったい何者だというのか。確かに一部例外はいる。デュランダルは物質に化けることができるし、マリーは人にしては耳が長い。しかし、他はだれがどう見ても人ではないか。傷をつければ血は流れ、愛する者が死ねば感情のままに涙を流す。そんな彼らが、人ではない? そんな話、簡単には信じることなどできない。


「お前、あいつらが人類じゃなければ、いったい何者だっていうんだ!? 俺はこの世界で長いこと奴らと接触してきたんだぞ! あいつらと俺に、多きな差があるなんて思えない!」


「信じられない気持ちはわかります。しかし私は嘘など言ってはおりません。今は、私の話を聞いてください」


男は興奮するルセインを宥め、男は話を続けた。


「天体を観測していくうちに、一つ明らかになったことがあります。天体は、電磁パルスを駆使して、我々にモールス信号を送っていることが明らかになりました。解読すると、用意、または準備、といった内容のメッセージでした。その報告を聞いた政府は、宇宙からの攻撃に備え、アメリカ戦略軍とボス機関に、秘密裏に予算を追加し、予期せぬ事態に備えたのです…メッセージを受け取ってから五年後、天体からのメッセージが、準備から攻撃に切り替わるとともに、悪夢が始まりました」


男が懐からたばこを取り出し、深く吸い込むと、少し疲れたようにため息を吐いた。久しぶりにパッケージが印刷された煙草を見た。やはり、男の住んでいる地下には、それなりの科学力がまだ残っているようだ。


「世界中の都市部で原因不明の地割れが起こり、そこからアメーバ状の生物が噴き出してきたのです。この時のために準備していたアメリカ戦略軍を主軸としたアメリカ軍が奮戦したのですが、アメーバ状の生物には銃弾はあまり効果はなく、一次はワシントン、ボストン、ニューヨーク等を放棄する事態になりました。しかし、アメーバ状生物の有効手段が銃弾ではなく、火炎放射器などによる攻撃だと判明した時から好転し、すべての主要都市を奪還してあと一息、というときに、アメーバ状生物が、突如として気体となって、世界から消えたのです。はじめは、我々の勝利だと喜んでいたのですが、世界中で不審死が急増してから、まだ戦いが終わっていないことに気づきました。アメーバ状生物は、気体に姿を変え、我々に攻撃を続けてたのです……ボス、少し休憩しましょうか?」


男が心配そうにルセインに声をかけると、ルセインは首を縦にふった。正直、そんなことが世界で起こっていたかと思うと、気が動転しそうだが、そんなこと言っている場合ではない。ルセインが今欲しているのは、男のいう真実なのだ。


「では話を続けます。気体と化したアメーバ状生物はインフルエンザのように人の体に入り込み、急速に細胞を破壊していくことで人を殺すことが確認されますが、それに対する対抗策が考え付かず、政府は最終手段を講じることにしました」


「最終手段?」


「ええ、それがボス機関がアメリカ戦略軍とともに予算追加された理由であり、ボス機関が大統領から命じられた指令…超巨大地下シェルターの建造です」


「…それが、今のアメリカ合衆国ってわけか」


ルセインの問いに男は無言で頷いた。


「シェルターはアメリカ国内に数か所設置され、アメリカ戦略軍が時間を稼いでいる間に建造されました。最大三百万人避難できるように作りましたが、アメーバ状生物の猛攻激しく、どの避難所も、大統領を含めた政府関係者を除いて五千人前後を避難させるのがやっとでした。そこから、地上攻勢という政府のスローガンのもと、政府は人口と国力の回復に、そして我々ボス機関は、アメーバ状生物の観察を始めました。おおよそ4千年ほど、アメーバ状生物は気体と個体を繰り返していたのですが、今から千年前に、変化が起きたのです」


男の話に、ルセインは眉をひそめた。


「…まさか、そういうことなのか?」


「はい。アメーバ状生物は、人型へと変化したのです。最初は半透明だったのですが、徐々に肌色に着色され、人と同じように、有機物を食べ始めたのです。アメーバ状生物は、地上で暮らすのに人型のほうが暮らしやすいと判断したのです。今日までにボスは遭遇したかと思いますが、体を物質化させる人型と、魔法を放つ人型…あれらはすべて、アメーバ状生物時代の名残です。魔法は自らの体の一部を気体し、彼らが四千年の間に身に着けた物質変化を駆使して発動させています。体の物質化も原理は全く一緒です。しかし発動には個体差があり、我々と変わりない何もできない人型がほとんどのようです」


「……なんてことだ」


ルセインはがくんと肩を落とし、余りに理解しがたい現実に心が虚ろになる。一昔前のルセインならば、与太話だと一蹴してしていただろう。しかし、この男の話を否定する材料が、ルセインには一切なく、しかもボス機関を名乗る男の話だ。一蹴出来るわけがない。マリーも、デュランダルも、アルシーも、魔女も、その他の出会った人物全員、男の言うアメーバもどきだとは、到底信じがたい事実だが、もしアメーバもどきなら、説明のつくことが多すぎる。頭を抱えたまま項垂れるルセインに、男は肩に手を置いた。


「心中お察しします。しかし、ここで貴方にくじけてもらうわけにはいかないのです。貴方は、我々の大いなる希望なのですから」


「…なんで、俺が大いなる希望なんだ?」


「それは「ルセイン、誰と話しているの?」


突然の第三者の声に、男は顔を向けると、デュランダルが不思議そうな顔でこちらを伺っていた。姿を見られたと男は慌てて立ち上がり、「明日の昼下がり、またここで」とだけ言い残し、闇夜に隠れるように逃げ去った。男の不審な行動を目の当りにしたデュランダルは、少し警戒しながらルセインに近づき、口を開いた。


「…ねえ、あの男は誰?何を話したのよ?」


デュランダルが問いかけるが、ルセインは全く反応せず、先ほどと変わらず肩を落としたまま固まり、おおよそ三分後に、ルセインは口を開いた。


「デュランダル、頼みがある」


「貴方が私に? 珍しいわね」


「……今すぐ俺を殺してくれ」




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