少女、剣闘士
「あ、そろそろ武闘会が始まるみたいですよ」
そう言ってレイスは闘技場の方を見た、ボスも見てみると、二人の剣を持った男が闘技場に立っていた、よく見ると二人の男は剣以外鎧などの武装はしていなかった。
「鎧は着ないのか?」
「はい、武闘会といっても手合わせみたいなものですから」
ふむ、流石に古代ローマ帝国のようなコロッセオでの剣闘というわけじゃないわけか。
「まあ、それでも危険なんですけどね、確か去年の武闘会の時は相手を黒焦げにした軍人がいましたからね」
「相手どうなったんだよ」
「死にましたよ?」
前言撤回だ、やっぱり古代ローマ帝国のようなコロッセオだったりした。そう心の中で呟くと、レイスが少し笑いながらボスに言った。
「ふふ、安心してください、いざと言う時は私が回復魔法で助けてあげますよ」
「はは、それを聞いて安心した」
そう言っていると、闘技場の方では二人の男が剣を抜いて構えていた、そろそろ始まるらしい。
「レイス、始まりの合図はなんなんだ?」
「えっと、鐘が鳴りますと始まりの合図なんです」
そう言った直後、鐘が鳴り始めた。ゴーン、ゴーンと重低音が闘技場に反復している頃には二人の男は既に剣を交えていた。
ギィィィン、カン、キン
二人の男は激しいく剣と剣をぶつけて金属音を立て、両者一歩も引けない接戦となっていた。
民衆用の観客席からは熱狂ぶりが伝わり、闘技場は喧騒に包まれた、だが、剣の音はその喧騒を掻き分け、聞こえてきた。
「なかなか終わらないな、これじゃあ見ている奴ら飽きないか?」
ボスがレイスに向かって言うと、レイスはわらいながら
「最後まで見れば面白さがわかりますよ」
そう言われボスは大人しく二人の男の剣闘を見ることにした。
やがて二人の男のうち、片方が腕を空に向け、腕を振り下ろした、すると闘技場の地面に魔法陣が浮かび上がり、地面から無数の氷が突き出てきた、が、その攻撃をもう一人の男が難なく避け、先の尖った氷の上で二人の男はまた激しく剣闘をしはじめた。
「人間かよ……」
「はい、彼らは人間ですよ」
そう言いながらレイスは両手にワイングラスを持ち、ワインを差し出してきた。
「飲みます?」
そう言われてボスは、レイスからワインを受け取り、ワインを飲もうとした、すると闘技場から氷が飛んできた。
「うおっ!?」
ボスはびっくりして避けたが、レイスは気づかす、レイスが持っていたワイングラスに直撃し、またレイスはワインで濡れた。
「う、うう…………」
不運すぎる。