少女、武闘会
さて、王都について数日経ち、武闘会の日になった。
「いや〜、武闘会って食事まで付いてるんだな」
ボスが武闘会会場に並べられている料理を目の前にして言った、雰囲気はもはや貴族のパーティーだった。
「まあ、武闘会は出場するのは王都に召喚された奴だけだが、見物するのは別に誰でもいいからな、ほれ、そこ見てみろ」
そう言ってエディターは指を指した、指した方向には一般民衆用の観客席が用意されていた。
「武闘会は民衆にとって娯楽の一つだ、民衆からの支持を集めるのにも使えるしな」
………なんか、古代ローマ帝国みたいだな、そう思いながらボスはテーブルに置かれているワインを手に取った。
「すいません!よけてください!」
突如そんな声が聞こえ、何事かと振り向いた瞬間、顔面からワインを被った。
ビシャ
「……………」
ボスはしばらく無言になり、やがて一本の青筋が浮き上がった。
「ごごごめんなさい!」
そうワインをぶっかけてきた張本人が頭を下げた、見た目貴族の娘、という格好と雰囲気がした。
「………いや、いい」
ボスがそう言うと、貴族の娘はホッとしたように頭を上げた、が
ビシャ
ボスが持っていたワインを貴族の娘にぶっかけた。
「これでおあいこだ」
「うう………」
貴族の娘は手で顔を拭き始め、なんだか惨めな気がしてボスがハンカチを取り出した。
「使うか?」
「あ、ありがとうございます」
貴族の娘はハンカチを受け取り、綺麗な金髪の髪を拭き始めた。
「あ、あの、あなたは武闘会で見たことないんですけど、軍人ですか?それとも貴族ですか?」
貴族の娘が体を拭きながらボスに質問してきた。
「貴族だ、といっても一介の領主にすぎんがな」
「そうですか、あ、申し遅れました、私レイサー家長女、レイス・レイサーです」
そう言ってレイスはスカートの裾を掴んで一礼をした。
「うむ、ならこちらも挨拶した方がいいのかな?」
そう言ってボスは胸に手を置き、礼をしながら自己紹介した。
「俺は…………キルク家当主、ルセイン・キルクだ」
この名前が果たして本当にボスの名前なのか、それは秘密です。
「しかし女も参加するんだな」
「はい、私の家は貴族では珍しいんですけど、代々魔導師の家系で、魔法の研究を生業にしてるんです」
「なるほど、学者か」
ボスがそう言うと、レイスは顔を赤くしながら手を振り、否定した。
「学者なんて、そんな大層なことはしてませんよ、あはは……」
「んで、その研究を重ねた魔法をこの武闘会でお披露目するわけかい」
「はい、武闘会には国王も見に来るので、その時に国王が私の家の魔法を採用してくだされば、軍の魔導師達に、魔法の技術を売ることができるので」
なかなかシビアだな。