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少女、大会議

「……結構集まるもんだな」


アポライト神殿地下牢、そこでボスは腕を組んで地下牢の中に入っている逃亡奴隷を見て呟いた。ボスが想像していた通り、やはりエルフの里に逃げ込んだ逃亡奴隷は多く存在し、これで逃亡奴隷が全部かは解らないが、少なくともこれだけ捕まえたならば、これからくる近隣領主も文句はたれないだろう。


「……これで、全部なのかい?」


階段の方から声がして、ボスは振り向いてみると、そこにはアーシャ女王が階段からこちらを見ているのである。閉じ込められている同胞を見て、今のアーシャ女王の心境がどんなものかボスには想像することは出来ないが、少なくともいい気分ではないのは考えなくても分かることである。


「じょ、女王様!!」


アーシャ女王の姿を見た逃亡奴隷達は、さっきまで生気のない顔をしていたにも関わらず、まるで撒き餌に集まってきた魚のように群れをなして鉄格子を掴み、ガシャガシャと音を鳴らして懇願の声を上げた。


「女王様! お願いします、我々をここから出してください! 女王様、女王様!」


「………っ」


「女王様! なぜ人間の言いなりになっているんですか! ここはエルフの里、唯一無二のエルフだけの王国じゃないですか!

貴女はエルフの誇りを人間に売ったのですか!?」


「ち、ちがっ」


「何が女王様だ! こいつはただ人間に媚びて自分の地位を保持しただけだ! 役たたず! 出せ!ここから出せよぉぉぉぉ!!」


「………う………ぐしゅ………」


逃亡奴隷の罵声の嵐に、アーシャ女王はずる、ずるとへたりこみ、ぺたんと床にうずくまって静かに泣き出した。泣いているアーシャ女王を見て更に腹が立ったのか罵声は留まるどころか更に高まる一方。やがて何事かとエルフ近衛兵が駆けつけ、直ぐに騒ぐ逃亡奴隷の鎮圧を開始した。


「貴様ら、黙らんかぁ!!」


ガッガッと容赦のないエルフ近衛兵の警備棒で逃亡奴隷を突きまくり、鉄格子にしがみつく逃亡奴隷を引き剥がした。これ以上は酷であろう、ボスはアーシャ女王を抱きかかえ、素早く地下牢から退出した。


―――――――――――――――――――――


地下牢から退出をして直ぐにアーシャ女王は体調を訴え、しばらくアーシャ女王は自室に篭り面会謝絶。あんなことがあった後なので心配をしていたボスは、部屋から出てきたエルフ近衛兵から話を聞き出すことにした。


「アーシャ女王殿はどんな塩梅だ?」


「……今はぐっすり熟睡しておりますが、熟睡なさるまではかなり落ち込んでおられました、一体何があったのですか?」


「………すまん、話すことはできん」


ボスの言葉に、エルフ近衛兵は察してくれたようで、それ以上特に深く質問してくることはなく、またそそくさとエルフ近衛兵はアーシャ女王の自室に戻っていった。これは有難い、正直言って今回のことが他のエルフの耳に入っていたらまた争いが始まってしまうところであった。


「領主様、領主様はいらっしゃいますか?」


廊下からエルフ近衛兵がボスを呼ぶ声が聞こえる、珍しいこともあるものだと、領主は手を挙げてエルフ近衛兵を呼び寄せる。エルフ近衛兵が呼ぶくらいだ、もしかしたらすごく重大な報告かもしれない。


「そこに居られましたか、今関所で領主様をお呼びになっている方がおります」


「何、本当か?」


「はい、なんでも高貴なお方だと……」


高貴なお方? 俺に高貴な身分の知人なんぞエディターぐらいしか知らん、ならば一体誰なんだろう。


「まあいい、急いで会いにいくとしよう」


―――――――――――――――――――


「あれかぁ、なんか警護兵もいるなぁ」


関所でボスが目に写ったもの、それは豪華な馬車が二台並列してならび、その周りを警護兵が馬に乗って万全の態勢をとっている。興味半分、警戒半分で周りを取り囲むエルフ近衛兵を掻き分けて進み、ボスは警護兵に声を掛ける。


「俺がルセイン領主、ルセイン・キルクだ、どこの誰かは知らないが俺に何のようだ?」


ボスが質問すると、警護兵は返事をするわけでもなく、くるりと反転して馬車の方に行き、何やら馬車の中の人と話しているようだ、ある程度話が終わると馬車の中の人が顔を出してこちらを見た。顔を見る限り頭が白髪で少し堀の深い初老の男であった。やはり見覚えがない。


「貴殿がルセイン殿か! 私はアルフレッド領主のアルフレッド・マーリンである、事前通達せずの訪問申し訳ない!」


アルフレッド? 全く聞いたことのない名前であるが、今確かに領主と言っていた。もしかしてこいつが近隣領主なのか?

疑問に思うのもつかの間、並列していたもう片方の馬車からも顔が出てきた。こちらは栗色のふわふわとした髪に優しそうな笑みを浮かべた女性でこちらに声を掛ける。


「私はフランドル領主、フランドル・マルカトルと申します、以後お見知りおきを」


深々とフランドルは頭を下げると、ボスも返すように軽く頭を下げる。一通り挨拶が済むのを見て、アルフレッドが本題を切り出してきた。


「ルセイン殿、忙しい所悪いのだが今すぐ会談を設けたい、今すぐこの馬車の中に入って欲しい!」


会談、それは恐らくあの逃亡奴隷の回収率を聞きたいのだろう。もしこのことを周りで傍観しているエルフ近衛兵が知ったらどうなるだろう、声には気を付けねばなるまい。


「わかった、今すぐ行く!」


ボスは駆け足で馬車まで近づき、馬車に足をかけて一回り馬車の中を見回す。とくに罠が仕掛けられている様子はないが、壁の厚さを見るに外には声が聞こえないようになっているようだ。階段用に特別に作ったのだろう、忙しい領主は大変だ。


ボスが馬車に入るとフランドルも馬車に入り、警護兵がバタンと扉を閉めた。神妙な顔をしているアルフレッドに相変わらず笑の絶えないフランドル、この二人からどんな言葉が出てくるのだろう。


「……ではルセイン殿、まず何故急にルセイン領を訪問しに来たのか

、理由を聴いて欲しい」


アルフレッドがなぜ訪問しに来たのかは確かに気になる。ぼすはここは聞くことにした。


「はぁ、では、なぜ?」


「我々と、エルフ族解放の共同声明していただきたい」


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