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少女、板挟み

その声にボスとデュランダルは顔を部屋の入口 に向けると、マリーが仁王立ちでデュランダル を睨みつけていた。


「部屋に戻ってもルセインが夜這いにこないと 思ったら、こんな所に毒牙があったなんてな」


考えてることはデュランダルと同じか、とがく んと首から力が抜けるボスを尻目に、デュラン ダルも負けじとマリーを睨みつけ、地が震える

ような恐ろしいオーラを放ちながら牽制する。


「あーら、毒牙とは失礼ね、私は正妻よ? 貴方 がつまみ食いしようとしてるだけでしょ?」


媚薬をもる正妻なんて嫌だな、と他人事のよう にボスは聞き流したが、どうやらこれが喧嘩の 着火点になってしまったようで、マリーの対抗

心に火をつけてしまった。


「正妻? ハッ、そんな貧相な体でルセインが満 足するわけ無いだろ、見栄を張るな、惨めに見 えるぞ」


そう言ってマリーはポージングをして、デュラ ンダルを嘲笑する、確かにマリーとデュランダ ルを比べると、マリーのほうがグラマーであり

、特にあの豊満な胸になると右に出るものはな いだろう。


「ふん、いくら胸があっても品のない淫乱エル フなんて、娼婦でもやってたほうがいいんじゃ ないかしら? ルセインなら教養があって優しい 私に懐くわ」


「なにぃ?」


「何よ?」


両者立ち上がり、お互い血管をこめかみに浮か してメンチを切り合う、まずい、雰囲気がやば い、このままだと館が壊されてしまう、だがし

かしこの二人を止める手立てなど思いつかない 、いや、なくも無いが関わりたくない、もうだ めだ、あたいもう知らない。


「「うがぁぁぁぁ!」」


賽は投げられた、デュランダルとマリーによる 血で血を洗う大ゲンカの始まりである、まず両 者肩をつかみ合い、お互いの力をぶつけ合う、

その見た目にはそぐわない力に床に敷いてある 絨毯にシワがより、ミチミチと悲鳴をあげてい る。


「おりゃあ!」


雄々しくマリーが叫び、デュランダルを部屋に 設置されているテーブルに投げ飛ばした、デュ ランダルはテーブルの上に置いてあったワイン

をぶちまけ、バキバキと音を立ててテーブルを まっぷたつにして床に尻餅を着いた。


「うぅ…………こ、の!」


デュランダルは足元に転がっているワインボト ルを拾い上げ、血走った眼で立ち上がり マリーにジリジリと近づいていていく。ま、ま

さかとボスが汗を垂らした刹那、マリーの頭め がけてワインボトルが炸裂した。マリーの頭か らゴツンと鈍い重低音が部屋中に響きわたり、

これにはマリーも頭を抑えて蹲る。


「…いたぃぃぃ、うう」


ん? 口調が子供っぽくなったぞ? ということは …………。


「たんこぶ出来たらどうするんだよぉぉぉ…………ぐす」


そう言ってマリーは顔を上げた、その顔は目尻 に涙を貯め、ただデュランダルに泣いている顔 を見られるものかという意地だけでなんとか持

ち堪えている状態である、まずい、これは何と かしないと………。


「お、おい、デュランダル……」


ボスがそっとデュランダルの耳元に近づき、小 声で話しかける、するとデュランダルが、横目でボスに応える。


「何よ? ベッドはお預けよ」


「ちげえよ、マリーを泣かせないで欲しいんだ よ」


ボスの一言に、デュランダルははぁ?と声を上げた。


「なんで私がアイツに考慮しなきゃなんないのよ」


「なんでもだ、あいつが泣き出したら大変なことに………」


ちらっとボスがマリーの様子を伺いながら告げるが、デュランダルはどうにも納得いかないようだ。


「……なら、あなた何してくれる?」


「は?」


「だから、泣かせないように配慮したら何してくれるのって聞いて るのよ」


なるほど、ただで引き下がるのはどうにも癪らしい、デュランダルが納得しそうな物を用意できるかと言われると疑問だが、乗るしかない。


「…マリーにはしていないことをしてやる」


「……! がっかりさせないでね」


………まあ、うん、マリーを泣かせないならとりあえずいいか、あのデュランダルの目が妙に鋭いのが怖いが、うむ…。


「ル、ルセイン! さっきからそいつと何話してるんだ! そ、そいつの味方する気なのか?………ふぇぇん…」


さっきからぼそぼそと話し合っているボスとデュランダルに、孤立無援状態が続いているマリーの孤独メーターを上げるのには充分であった、ここからマリーが泣き出すのは時間の問題、後はデュランダルの腕の見せどころである。


「…………エルフ、来なさい」


そう言って何故かデュランダルは両腕を広げ、まるでマリーを受け入れるような体勢を取る、あれでは相手の攻撃を防ぐには適さない、まさに丸腰に近い体勢である。


「う…………うう?」


マリーはなぜデュランダルがそのような体勢を取るのか分からず、少し警戒しながらもデュランダルに一歩、また一歩と少しづつ近づいていく。


遂にはデュランダルの有効攻撃範囲とも言える間合いまで近づき、そこでマリーは立ち止まった、一体デュランダルが何をしようとしているのかを探るように、デュランダルを注意深く見張っているようだ。


ボスもデュランダルのやろうとしている事の意図が読めず、ただただ惨事にだけはならないでくれと内心ハラハラしながら見ていると、デュランダルが意外な行動に出た。


…………ギュウ


デュランダルはマリーをハグしたのである、この行動にマリーも驚き、慌てるように身じろぎしだすが、デュランダルはマリーを離さない。


「な…………なな………!」


「ごめんね、貴女は自分以外の女とルセインがいる事にほんの少しびっくりしただけなのよね………」


まるで聖母のように語りかけるデュランダルに、マリーはデュランダルの移り身に更に驚くが、不思議とデュランダルのハグを解く気にはならならず、寧ろ心地良くなっていく。


「…………んぅ…………」


恐らくマリーの精神状態が後退しているのも原因の一つとなっているのだろうが、それでも絶大すぎるデュランダルの聖母オーラがマリーを安心させているに違いない、さっきまでの剣幕が嘘のようにマリーは目を閉じ、母の前で眠る子供のようだ。


「さあ、言いたいことは明日聞くわ、今日は眠りなさい」


かくして、今回の騒動は意外な形で幕を閉じた。


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