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少女、常識

「なんか、貴族になった」


解放された少女の前でボスが告げた。


「そ、それはおめでとうございます」


「ありがとう」


「えっと、それでどのような役職に疲れたのですか?」


「なんでも領主らしい」


「………内政、出来るんですか?」


「俺の友人は政治家だ、きっと俺もできる」


そう根拠のない自信を持ちながらボスはうんうんと頷いた。


「とりあえず屋敷に入ろうぜ?ドアぶっ壊れてるけどな」


自分で壊したドアに指をさしながらボスが言った。


「え、いいんですか?」


「あんなでけえ屋敷に一人は寂しすぎる、お前も住め」


そう言って尻尾を振りながらボスは屋敷に入っていった。


――――――――――――――――――――


「あ、そういえばお前の名前聞いてなかったな、名前なんて言うんだ?」


食堂にて女中に用意された食べ物をむしゃむしゃ食べながらボスが聞いた。


「え、名前ですか?」


少女は食べる手を止めて、ボスの方を向いた。


「ああ、いつまでもお前って言うわけにもいかんしな、名前はなんて言うんだ?」


「えっと、アルシーっていいます」


「そうか、よろしくな、アルシー」


「あ、宜しくお願いします」


そう言ってアルシーはまた食べ始めた。


「あ、食べながらでいいけど質問に答えてくれないか?」


「…………?はい」


「親御さんはどうした?」


ボスが聞くと、アルシーは食べる手が止まり、震え始めた。


「………失礼、この質問は忘れてくれ、んで次の質問に答えてくれ、どうやって俺を呼び出した?」


「………この、ペンダントに祈ったら」


そう言ってアルシーは首にかけてあるペンダントをボスに見せた。


「そうか、魔法ってやつか」


ペンダントを見ながらボスは頷いた、するとアルシーが質問してきた。


「えっと、使い魔さんは魔法を使えるんですか?」


「魔法?無理無理、俺は魔法のない世界に生まれたからな」


「魔法のない世界?」


「ああ、魔法がない代わりに科学が進歩しているんだ」


「科学って何ですか?」


「んん?そうだなぁ…………」


ボスは周りをキョロキョロしながら部屋の隅に指をさした。


「例えばこの隅、目に見えない何かがうようよいる」


「え?え?」


何を言ってるのか全くわからないと言った表情でアルシーは首を傾げた。


「ああ、んー………アルシー、この世界には病気ってあるのか?」


「病気?それはあります」


「例えば?」


「黒死病とか、風邪とか、梅毒とか…」


「黒死病は恐ろしいか?」


「はい、一度大流行すれば多くの人が死にますから」


「俺のいた世界では黒死病はよっぽどなことがない限り死なない」


ボスがそう言うと、アルシーは目を真ん丸にして驚いた。


「そ、それはどんな魔法ですか!?」


「いったろ?俺のいた世界では魔法がないって、科学の力ってやつだ」


そう言ってボスは用意された茶をすすりながら話を続けた。


「まあ、なんつーかな、病気ってのは細菌が引き起こすもんなんだ、祟でも呪いでもなく細菌が原因なんだ、んで、その細菌を殺す物質を作るんだ、かなり時間がかかるけどな、んで、出来た薬は抗生物質って言われるんだ」


ボスが説明すると、アルシーは首を傾げたままボスに聞いた。


「………つまりはその抗生物質があれば黒死病が流行っても大丈夫ってことですか?」


「ああ、つか大流行すらしねえ」


「そんな異世界が存在するんですね」


「俺からしたらこの世界は異世界なんだけどな、言語が通じるのが不幸中の幸い」


そう言ってボスはまた茶をすすった、そしてトイレに行きたくなった。


「あ、女中さん、トイレってどこにあります?」


食器を片付けに来た女中にボスが尋ねた。


「トイレですか?こちらです」


そう言って女中がボスをトイレに連れていった。


――――――――――――――――――――


「………これがトイレ?」


ボスは呆然としていた、なぜなら案内されたのは屋敷の中庭だったからである。


「はい、便や尿は中庭でするものです」


「いやいやいやいや、折角綺麗な中庭が糞まみれになっちまうよ」


「庭ってそういう物じゃありません?」


………そういや、ホワイトハウスの庭園で野グソしたら蜂の巣にされかけたな、もしかしたらあの国王も庭園で野グソしてんのか?便所作ろ。


「………あの、使い魔さん、早くしてくれませんか?」


後ろから声をかけられ、振り向いてみると

アルシーがもじもじししていた。


「も、漏れちゃいますよ………」


「………まじかよ」


――――――――――――――――――――

翌日、ボスは領内にいる彫刻技師達を呼んだ。


「領主様、今回は一体何用で?」


急に集められた技師たちは戸惑いを隠せず

動揺していた。


「ああ、今回呼んだのは他でもない、便器を作ってもらう」


「べ、便器?」


「ああ、お前たちは普段用を足す時、どうする?」


「え、壺にいれて道に捨てます」


「だろうな、だがそれだと衛生的に悪い、そう思わないか?」


「まあ、汚いですけど………」


「だろ?だから今日から公衆便所を作る、仕組みは汲み取り式だ」


「ん?話がよくわかりませぬ」


「この領内に空き地が存在するな?そこに多くの公衆便所を作るんだ、便器の仕組みはこの紙に書いてある」


そう言ってボスは紙を手渡し、技師たちはそれを見た。


「ふむ、壺に排泄物を貯めるわけですか」


「そうだ、贅沢を言えば下水道を作りたいが、時間がかかりすぎる、と言うわけその場しのぎとして公衆便所を作る」


「なるほど、で、我々にこの腰掛けに穴が空いているような物を作ればいいんですな?」


「ああ、頼んだ」


















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