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少女、同盟

「おうおう、予想していた通りだぜ」


馬を走らせながら、ボスは目の前に広がる光景を睨み付けるように見ながら、舌打ち混じりにそう零した、アーシャ女王の住処、アポライト神殿を中心に野営テントが貼られ、恐らくエルフ達の軍であろう鎧を着たエルフ達が防御陣形を形成するように展開し、正に戦争に備えていた。


「まあ、引いたとは言うものの、一度攻め込んできたから当然といえば当然ね」


いや、お前が攻め込んで来るよう命令したんだろ、とツッコミをいれたかったが、またデュランダルに拗ねられてもめんどくさいのでボスはそっと胸の内にしまうのであった。


「で、どうするの? あんなに守備兵で固められた神殿に近づくなんて至難の業よ」


デュランダルが眉を顰めて言うと、ボスはまるで秘策があるかのように余裕ぶった態度でデュランダルに返答した。


「ああもちろん、ちゃんと考えがあるに決まっている」


ボスの返答にデュランダルはほほぅ、と感嘆し、期待に満ちていた、その言葉を聞くまでは


「俺が作戦だ!」


そう言うやいなや、ボスは勢い良く馬の腹を蹴りあげ、防御陣形を組んでいるエルフ守備兵に突撃を敢行した、砂埃を巻き上げながら徐々に近づいてくるボスにエルフ守備兵の面々の視界に写り、エルフ守備兵達は即座に戦闘準備に移り、武器を構えて待ち構えた。


「な、何が俺が作戦よ! 正面から突撃しただけじゃない! これじゃエルフ達にリンチよぉぉぉぉ!?」


期待を見事に裏切ったボスにデュランダルは、これから起こりうるエルフ達の集中攻撃とわざやざその術中にかかったボスに対する怒りをあらわにして、ボスの耳元に叫んだ、しかしボスは未だに余裕の表情である。


「安心しろ! 俺から奴らに危害を加えるつもりはない、だから戦闘は極力少なくする!」


ボスはそう言うが、エルフ達から見ればボスはただの敵の斥候ぐらいにしか見えず、次の瞬間、鋭く風を切る音が聞こえ、空から無数の矢が降ってきた。


ドス、ドス、ドスと矢は行き良いよく地面に刺さり、ボスの周りには無数の矢による針山が形成された、幸運にもボスやデュランダル、そして馬には当たっていないが、これが第一射だとしたら、すぐさま第二射が打ち込まれるに違いない。


「うわわわわ! う、射ってきたわ! ちょっと! 射ってきたわよ!」


「うるせえな! 見りゃわかるよ!」


涙目で訴えてくるデュランダルをボスは一蹴し、ハッハッ!

と声を張り上げながら馬の腹を蹴っていく、馬は怒声の様な唸りをあげ、地を蹴りとばす四本の足を更に早め、続く第二射が空から降り注ぐ頃にはエルフ守備兵の前列を捉えていた。


「どけどけどけぇ〜!!」


遂に、馬はエルフ守備兵の前列に食入り、ボス達は防御陣形の侵入に成功したのである、足元で弓を構えていたエルフ守備兵が列を崩して退避し、足並み崩して前列は大混乱である。


や、やつは斥候じゃないのか!?


小隊長ぅ! 列が乱れて奴を狙えません! 小隊長、指示を!


ぐぅ!? ば、馬鹿者! どこを狙ってる!


お、落ち着けぇ! 早くやつを殺らんかぁ!


あちらこちらから罵声やら怒声やらが鳴り響くが、これは混乱している、一応エルフ守備兵達に被害を出さないように考慮して、馬を走らせてはいるが、防御陣形などという人の密集した陣形だと何人かは轢いてしまう、まあしかたない。


「どうだ! 単騎で突っ込んでも意外と引っ掻き回せるもんだろ? 敵は混乱していてこちらに攻撃するのもままならんらしいぞ!」


ボスは少し興奮気味でデュランダルの方を振り向いた、しかしデュランダルは前方を食い入るようにガン見して、顔を青くしていた。


「そ、そうね、でも、前………」


言われて前に視線を戻すと、前列の弓兵隊から打って変わって、中列の大勢の重装甲歩兵隊が所狭しとハルバードを構えて待ち構えていた

、どうやら前列を突破したのは間違いないが、前列のように楽にことは進まなそうである。


「ああ、いっぱいいるな」


なんでもないようにボスが言うと、デュランダルが現状を理解してないのかとボスに掴みかかった。


「ちょっと! そんな簡単に言うんじゃないわよ! 例え馬に乗っていたとしてもあの重装甲歩兵の中を突っ切るのは無理よ!!」


「なんで無理なんだ? あんなん見た目ごついだけだろ?」


「あんな重たい鎧、馬が蹴り飛ばすことなんて出来ないし、あの中で馬の足が止まったら最悪ミンチよぉ……」


ああ、今生ともお別れか、とひとりシクシク涙を流すデュランダルに対し、頼りにならない剣だなあ、と聞こえない声でボスはボソッと言った。


「もう敵さんとの距離はそう長くないぞ! デュランダル! 剣になれ!そうすりゃお前が怪我することはないだろ」


ボスがそう言うと、デュランダルは素直に応じ、デュランダルはその身を剣に変えてボスの手の中に納めた。


間もなく重装甲歩兵隊の先頭に激突するまであと200m、重装甲歩兵隊は横3列に並び、一列目はハルバードを前に突き出し、2列目は一列目の重装甲歩兵の頭の上にハルバードを突き出す、三列目は真上にハルバードを突き出し、単独で突っ込む騎兵に対する密集陣の完成だ。


あと50m、もうあと数秒で馬が串刺しになるか―――――。


ガッドガ!


その時、ボスは思いっきり手綱を引き、思いっきり腹を蹴ると、馬はひらりと一列目の重装甲歩兵の兜に足をかけ、高く飛んだ。


足をかけられた兜はかなり深く凹み、踏まれた重装甲歩兵はそのまま後ろに倒れる、するとまるでドミノ倒しのように後ろの重装甲歩兵も倒れ、更に三列目の重装甲歩兵も倒れた、上に突き上げていたハルバードも後ろに倒れ、馬は串刺しになることなく地面に着地し、快調に走り出した。


ドカッパカラッパカラッ……


「ふう、流石に肝が冷えたな、だがあとは突っ切るだけだ」


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