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少女、英断

「ここに使い魔さんが居るわけですね………」


エルフの里を一望できる丘に本陣を敷き、護衛兵500人に守られた馬車の中でアルシーは言う、アルシーの隣では魔女が魔法道具を駆使して精密にボスの居場所を探ろうとしている。


「うん、晒しインクにはここだって記されているから間違いないよ、でもよりによってエルフの里だなんて、運が悪いね」


魔女が少し眉を顰めながら、やや難色な表情を浮かべる、その魔女の発言が気になったアルシーは、魔女にどういうことか尋ねた、すると、魔女は視線をアルシーに向け


「エルフはね、縄張り意識が凄く激しいの、その上エルフにはオスの出生率が少ないから周りの村の子供を襲って拉致していくんだよ」


「? それおかしくないですか?」


魔女の説明に納得の行かない様子でアルシーが、はてなを浮かべ、

首を傾げる。


「労働力が欲しいなら大人を拉致すればいいじゃないですか、なんでわざわざ子供なんですか?」


「大人だと力じゃ抗えないからね、子供の頃に拉致して逆らえないように教育していくんだ」


「じゃあなんで使い魔さんはエルフの里なんかにいるんでしょう? わざわざ使い魔さんを拉致する理由なんてあるんでしょうか?」


「うーん、それは何故かわからないね、せめて明鏡石が使えれば良かったんだけどね〜」


そう言って魔女は馬車の外でボスからくすねた煙草とライターで一服しているデュランタルに視線を向ける、明鏡石が使えればボスの目に映る光景が見えるので、更に詳しい状況把握が出来るのだが、デュランダルが何故か見せようとせず、特に夜になると頑なに明鏡石の映像を見せようとしなかった、唯一魔女とアルシーが見ることのできた映像は、下着姿でくねくねしながら近づくエルフだった。


「………大丈夫、私が見た限りだと元気にしてるみたいよ」


アルシーと魔女の視線に気づいたデュランダルが、紫煙を吐き出しながら言った、なんだかデュランダルは少し不機嫌で、明鏡石を取り上げた時からこんな感じである、一体何が写っていたのだろう。


「………たかだかメスエルフ一匹に惑わされちゃって、バカみたい、なんだか悔しいわね」


アルシー達には聞こえない声でデュランダルがボソッと言った、その直後エルフの里から火の手が上がり、先鋒隊の旗がなびくのが良く見える。


「報告いたします、現在先鋒隊3000がエルフの里に突入致しました、その際に火矢を放ってエルフの達を混乱させ、混乱に乗じて突入した様です」


「見りゃわかるわ」


伝令兵の報告に生返事で返し、デュランダルは燃えているエルフの里をずっと眺めた。


「しかしデュランダル様、わざわざ里一つ制圧するのに3000の兵は大げさではありませんか? 少なくとも1200もいればこと足りるかと」


筋骨隆々な将兵がデュランダルにそう尋ねると、デュランダルは睨みつけるような目で将兵を見つめた。


「貴方達の領主が捕まっているというのに大げさなんてことがあるかしら? それにエルフ族は油断のならない民族なのよ」


「そうですか? だって都に行けばエルフ族など……」


「油断は禁物、よ」


そう言ってデュランダルは再び燃え上がるエルフの里を眺めた。


――――――――――――――――――――――


「衛兵たちは今まで何をやってるんだ!」


アポライト神殿の会議室にアーシャ女王の怒鳴り声が響きわたる、側近たちは玉座の前で跪き、震えながら女王に報告をする。


「お、恐れながら女王様、敵は衛兵達に見つかる前に森に火を放ち、里の民たちを混乱させてから攻め込んだゆえ、衛兵達も身動きが取れなかった次第です……」


「だからって報告も無いのはおかしいだろ!」


「そ、それは……女王様が朝の【奴隷の奉仕】の最中だったので……」


アーシャ王女はギリっと歯を鳴らし、頭を抱えだした、その様子に側近たちは心配になり、アーシャ王女に懇願した。


「王女様! 何卒、何卒民を救うためにも出兵の準備を!!」


「分かっている! お前達も兵をこのアポライト神殿に集めるんだ!それから僕の鎧も! 」


そう言うと側近たちは立ち上がり、すぐさま自分の責務を全うしに席を離れた、誰も居なくなった会議室で、アーシャ王女はひとり震えていた。


「くそっ……まさかここもバレてしまうなんて、このままでは他の同胞のようにびどい辱めを受けることになってしまう、なんとかしないと……」


アーシャ王女は立ち上がり、会議室からアポライト神殿の外を眺める、外はまさに戦場、救うべき民がなすすべなくウィルデット王国兵に蹂躙され、刻一刻とアポライト神殿に近づいていた。


「………ごめんね、みんな、仇は取るからね」


一粒の涙をアーシャ王女は流し、踵を返して会議室から出ていった。


―――――――――――――――――――――――


ぎゃぁぁぁぁ!

突撃! 隊列を崩すな! 民間人だからといって容赦はするな! 敵をビビらせてやれ!

ザシュッ ビリッ ビチャビャ……


「へっ、なんだか懐かしく思っちまうぜ」


怒号と悲鳴の飛び交うなか、ボスはひたすらに走り、ついにウィルデット王国兵が絶賛殺戮中の最前線に到着した、すぐさまエルフたちより前に出て、大声で叫ぶ。


「やめいやめい!! これ以上の侵略行為はわがルセイン・キルクが許さんぞ!」


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