少女、鎮圧
まずいことになった、俺が想像していた遥斜め上を行きやがった、ボスは窓の外の情景を見て、額に汗を滲ませ、目を離すことが出来ず、意識を取り戻すのに数分かかった。
「おい、起きろエルフ!」
ボスは褐色エルフの体を両腕を使って大きく乱暴に揺すり、目を覚まさせる、急に起こされた褐色エルフは、少し不機嫌そうに体を起こし、少しボスを睨みなつけた。
「んん、何だよ、昨日の続きがしたいのか? 絶倫だな〜」
「今そんなこと行ってる場合じゃない! 外を見ろ!!」
ボスは怒号をあげながら窓を指さした、やれやれと面倒くさそうに褐色エルフが身を乗り出し、窓の外を眺めた、すると褐色エルフの表情は蒼白になり、何だこれ、と呟いた。
「も、森が………エルフの里がッ…!」
褐色エルフが見た光景、それは所々で火が木を焼き付くし、黒煙が天高くまで登っている
、地面にはエルフ達が何かから逃げ惑い、四方八方を走り回っている、そして、火の上がっている木ときの隙間から、時折、ちらっと旗が見える、褐色エルフが目を凝らして見ると、そこには真っ赤な薔薇の花が描かれている。
「………あの旗は、やっぱりか、少し長く居すぎたようだな……」
ボスは溜息をつき、額に手をつけて目を閉じた、一体ボスが何を言っているのか解らない褐色エルフは、不安そうな声で質問した。
「お、おい、お前何か知ってんのか!? なんでエルフの里が燃えているんだ? 教えてくれよ!」
「あの旗はウィルデット王国のルセイン領の旗だ、つまり俺の旗なんだ………」
「ち、ちょっと待て、余計訳がわからないぞ?」
「…………つまりだ、お前が奴隷にしたのはお前のショタコン女王なんかよりも広い領土をもった領主だったって訳だ」
開いた口が閉じない、とはまさに今の褐色エルフにぴったりな言葉であろう、唖然とした様子の褐色エルフに、ボスが両肩に手を乗せて、力強く言った。
「大丈夫だ、被害は最小限に止めるように努力する、ここで待ってろ」
ボスはベットから飛び出し、急いで外に出ようと廊下に出た、すると廊下の隅でミアとケイトが二人で固まって蹲っているのが見えた。
「おい、大丈夫か?」
二人のそばに駆け寄って、トントンと二人の肩を軽く叩いた、すると一瞬ビクッと震えて、二人が同じタイミングで振り向いた、二人の目は涙で赤く腫れ上がり、恐怖に取り付かれてるのが見てわかった。
「うぐっ……おじさぁぁぁん……怖いよぅぅ」
怯えるケイトとミアを軽く抱きしめ、ボスは二人の頭を軽くなでた、二人とも外の光景を見たのだろう、そうでなくとも外からは悲鳴と大きな足音と地鳴り、そして物が焼ける音が鳴り響いている、こんな非日常な空間にいて怯えないわけがない。
「大丈夫、大丈夫だ、二人ともあのエルフの近くにいろよ?」
そう言ってボスは立ち上がり、玄関のドアを開けようと手をかけた、その瞬間にケイトが大声で叫んだ。
「だめ! ドアを開けちゃダメ!」
ガチャ………ケイトの忠告虚しく、ボスはドアを開けた、目に入ったのはすがりつく様に体を家の壁に寄りかかった見知らぬエルフだった、腹部から多量の出血と、吐血をしていて瀕死の状態なのだと、見てわかった。
「………た、すけ、て……」
ボスの存在に気が付いたのか、ボスの足を掴んでエルフは助けを懇願する、ケイトとミアがおそれていたのはこのエルフのようだ、確かに子供のうちにこんなショッキングな物を見せられたら震えが止まらない。
とりあえずボスは応急処置が出来るか調べるために、患部の状態を調べることにした、エルフの服を破いて患部を眺めた、傷口は鋭利な刃物できられた傷、と言うよりは乱暴にえぐられたような、釘バットで殴られた様な傷口で、恐らくメイスによる傷だと判断できた。
「………こいつは、うーむ」
正直言ってこれは重症だ、いや、メイスによって負った傷が重症じゃない場合なんかあるのかと聞かれれば、十中八九重症なのだろうが、とにかく、こんなに滅茶苦茶な傷口だと、縫いつけることが出来ないし、布で止血しても余り意味が内容に思える、となると一つしかない………。
「おい、気をしっかりもてよ、助かるかもしんねーぞ」
ここは必ず助かるぐらいのことを言っておいた方がいいのだが、ボスは医者では無いので100%は保証できないので、あえて曖昧な答えをセレクトした、だが、ボスの言葉を聞いたエルフは、軽くニコッと笑った、気休め程度にはなったのだろう。
一度家の中に戻ったボスは、油と火のついた枝と濡れた布切れと包帯を持ってきた。
「正直言ってかなり痛いから覚悟しろ?」
そう言うとボスは油をエルフの患部に塗り、火をつけた、油は行き良いよく燃え上がり、ジュウジュウとエルフの患部を燃やしていった。
「ぐぅッ!……ガアアアアッアアガガウゥウッ!!!」
エルフが苦痛の表情で歯を食いしばり、今にも暴れだしそうで、頃合を見てボスは患部に濡れた布切れを被せ、火を沈下した、患部は酷いやけどを負ってしまったが、止血をすることは成功した。
「よし、これで大丈夫だ、火傷は一生ものになっちまうが、許してくれ」
そう言うとボスは、火傷に包帯を巻き付け、褐色エルフの家の中にエルフを入れ、廊下から見ているミアとケイトに話しかけた。
「ミア、ケイト、このエルフを見てやってくれねえか?ちょっと俺は仕事があるんだ」




