ボス、出世
「ふう、なんとか敗走させたな」
戦場の遠くからボスはぼそっと言った。
「司令殿!今回の戦は素晴らしい結果ですな!」
ボスの近くにいた高官が満悦を浮かべながらボスに言った、しかしボスは
「いや、負け戦だ」
「へ?」
高官は首を傾げた。
「な、なぜですか?敵の進行を抑えたのですぞ?」
「だが敵は侵攻してきた、しかもこの森の向こうは敵の陣営があるだろう、つまりはこの国の領土を掠め取られたも同然、それに敵の司令だってあの領主ってわけでもあるまい、当分は手出ししてこないかもしれないが、再び進行してくるのは間違いない」
そう言ってボスは頷いた、すると後ろからエディターが声をかけてきた。
「ふむ、まさか本当だったとは」
「お、きやがったか没落領主」
「誰が没落領主だ」
「事実だろ、俺がいなきゃお前の領土全て焼け野原だぞ?」
ボスがそう言うと、エディターは頭を下げた。
「それに関しては感謝している、ありがとう」
「ふ、領主から言われたら悪い気はしないな」
そう言ってボスはブラブラ町を見ようと歩こうとした、するとエディターが止めた。
「待て」
「ん?なんだ」
「今回の件はたいそう立派な事だ、王に今回の件を報告する、その際に一緒に来て欲しい」
エディターがそう言うと、ボスは少し面倒くさそうに言った。
「それは必ずいかないと行けないのか?」
「ああ、戦闘指揮をしたのはお前だからな」
「…………はあ、面倒くさ」
そう言ってると馬車が出迎えに来た。
「さあ、行くぞ」
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「さすが中世、国王の城まで何日かかってんだよ」
愚痴をこぼしながらボスは馬車から出た、すると目の前にはまるで要塞のような城が立っていた。
「でか、税金の無駄だな」
ボスがそう言うと、エディターに殴られた。
「バカ!王の城の前でなんてことを」
「いでで………だってよ、ホワイトハウスだってこんなにでかくねえよ」
「ホワイトハウス?」
「大統領が住んでるとこ、俺の母国」
「大統領ってなんだ?」
「お前の国で言う国王、俺は大統領の部下」
「お前結構重役なんだな」
「ふ、すげえだろ?」
そう言ってボスは城門までいって謁見の間まで案内された。
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「表をあげよ」
ひれ伏しているエディターとボスは顔をあげた、すると目の前には無処髭を生やし、顔には多数のシワが作られ、傷跡まであるおっかないじじいが王座に座っていた。
「さて、今回の件はそちらに出向いた警邏隊によってわかっておる、コージュラ皇国の軍隊を退けたそうだな?」
国王が質問すると、エディターが答えた。
「は!敵の侵攻は抑えました、しかしいくらか敵に領土を奪われてしまいました」
「よい、コージュラ皇国はかなりの強国、退けただけでも戦果と言えよう」
そうに言った後、今度はボスに視線を向けた。
「そういえばこいつは誰だ?」
国王が尋ねると、またエディターが答えた。
「このものは敵の侵攻を食い止めた軍師です」
「ほう、貴様が…………」
軍師ではないんだなあ………………。
「まあ、何はともあれ今回の件は見事だ、両者に褒美を渡そう、エディター、お前は今日から官僚だ、元老院に入ってもらう」
「は!」
「ついて軍師」
俺の名前は軍師なのか?
「一万もの兵を引かせるとはなかなか、その才を民のために使え、よって領主になってもらう」
「は!」
ボスは貴族になった。