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少女、取引

翌日、ボスは褐色エルフと色白エルフとの間に交わ されていた約束により、今日色白エルフにボスの身 柄を渡されるはずであった、が……。


「………いつまで奴隷の腕に引っ付いているんです か?」


あらかしめ決めておいた取引場所に設定していたエ ルフたちの公園施設に到着した色白エルフは、ボス の腕を抱え込むように抱きついてベンチに座ってい

る褐色エルフを見て呆れた様子で言った。


「…………ずっと」


褐色エルフは頬をほんのりと赤く染め、少し不貞腐 れたような様子で色白エルフに告げる。


「はぁ………あのですね、昨日の約束は覚えていま すか? 今日この奴隷の所有権は私にあるんですよ ?」


約束を破られてはたまったものてはない色白エルフ は、昨日のアポライト神殿で交わした約束を確認す るように褐色エルフに尋ねた、すると褐色エルフは

ボソッと呟くように言った。


「だって……お前もやるんだろ?夜になったらこい つと…」


褐色エルフは少し睨みを効かせ、まるで威嚇するよ うだ。


「そりゃその為に捕まえたようなものですからね、 ヤることはやりますよ?」


さも当然のように色白エルフは褐色エルフに言うと 、褐色エルフは更にボスの腕に抱き着いている自身 の両腕に力を込め、ボスは少し顔を歪めた。


「私はそれが嫌なんだ、こいつは私のにしたいんだ 」


どこか真剣な表情で話す褐色エルフだが、当初の約 束を破られる色白エルフにとってはわけのわからな い我が儘としか捉えられなかった。


「約束を破る気なんですか? 性欲処理なら他の分 配された奴隷でも使ってやればいいじゃないですか 」


「…………こいつじゃなきゃ嫌だ」


いつまで経っても聞き分けの悪い褐色エルフに、色 白エルフは業を煮やし、遂に声を荒らげた。


「いい加減にしてください!! 昨日何があったか 知りませんが約束は約束です! 貴方も子供じゃないんだからそんな我が儘通るわけ

ないことぐらい理解できるでしょう!」


ギャンギャンと声を荒らげる色白エルフに、褐色エ ルフはただじっと黙っている、察するに自分でも自 分のやっていることが我が儘と言う事が理解できて

いるのだろう、しかし、色白エルフの暴言はまだま だ続く。


「もしかしてあれですか!? 奴隷にハメられちゃ って恋しちゃった感じですか! 全くとんだ夢見る 乙女ですね! 処女なんてずっと昔に失っているく

せに!! 大体ですね、貴方は昔っから――――――」


そこからは聞きたくもない関係ないような話が延々 と続いた、段々怒っているうちに疲れてきたのか、 色白エルフは息せきを切り始めていた。


「はぁ………はぁ………と、とにかく今日は私が持っ ていきま………」


す、と言い切ろうとしている所で色白エルフはある 事に気付き、顔を真っ青にした、それは褐色エルフ の顔が涙目になっているからだ。


まずい、こいつ、泣くッッッ!!


褐色エルフとは長年の付き合いであろう色白エルフ は、褐色エルフの泣き声がうるさいのをよーく理解 していた、徐々にしゃくり上げ、今にも泣き出して

しまいそうな褐色エルフに、色白エルフは戦慄と恐 怖を覚え、額には汗がにじみ出ていた、しかしそん な色白エルフよりも恐怖を感じていたのはボスであ

った、今のボスは片腕にいつ爆破するかわからない 爆弾をくっつけているようなものであるわけである のだ、そんな現状にボスは目を閉じ、これ以上色白

エルフが余計なことを言わないことを祈る他ない。


「な、泣けばいいというわけじゃないですわ! 泣 いてもこの奴隷は私が持っていきます」


ボスの祈り虚しくがしっとボスの腕を掴み、色白エ ルフはボスをひきずってでも連れ去ろうとした、普 通に考えて泣かせないようにしようという考えはな

かったのか、とボスは思ったが、色白エルフも譲れ なかったのだろう。


「ゃだぁぁぁ……………」


まだ大声で泣く準備段階なのか、褐色エルフは涙を 浮かべ、少し子供のようにボスの腕を放すまいと力 をさらに込める。


「……………なんとかしてくれよ、俺が泣きそうだよ 」


先程から右にも左にも身動き出来ず、ただ去れるが ままになり、黙っていたボスであったが、至近距離 で褐色エルフに泣かれるという絶体絶命の危機に、

ボスは色白エルフに向けて救援を求めるような眼差 しを向けた。


「俺の身柄は一体どうなるんだ、一日中こんな感じ なんて嫌だぜ、なんとかしろよ…………」


「う、うるさいですわ!! 奴隷の癖に主人におね だりなんて! 今話しをつけます! 」


そう言って色白エルフはボスを引きずるのを一旦止 め、今度は褐色エルフをボスから引っペがそうとす る、しかしそう簡単に褐色エルフが離れることはな

く、力強くしがみつき、やがて


「うぅぅぅっやぁぁぁ!」


ドンっズシン!


褐色エルフは色白エルフを突き飛ばし、色白エルフ はうわっ! と声を出して倒れ込んだ。


「いったぁぁぁ…………」


色白エルフは腕を擦りむき、血が滲んでいく患部を 抑えた、褐色エルフは悪びれもせず、ただボスの腕 に顔を押し付け、ボスの服に涙を滲ませる。


「うぅぅぅ…………わたしからうばっちゃやだぁぁぁ ぁ………」


…………もう、疲れた、色白エルフはため息をつい てつぶやき、腕を抑えながら言った。


「もう疲れました………その奴隷あげますよ……」


そう言って色白エルフはトボトボと帰路につこうと する、すると余りにも可哀想すぎると思ったボスは 、おい、と声をかけて呼び止めた。


「ちょっと待て、あんた怪我してんだろ」


「…………ただの擦り傷ですわ、ほっといてくださ い」


「いやいや、そんなわけに行くまいよ」


そう言ってボスは褐色エルフの頭を軽く撫でて立ち 上がり、懐からガーゼと消毒薬とテープを取り出し た。


「俺も怪我しやすくてね、持ち歩いてんだ、治療してやるからまってろ」


「奴隷からの施しは受けさせん」


「まあそういうな、この位しないとあんたが可哀想すぎる」


そう言ってボスは嫌がる色白エルフをはんば無理やり治療する。


「…………ふん」


今日一日で初めての優しさに、少し胸打つ色白エルフであった。


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