少女、至極の剣
「うわっ!」
視界があの黒い薔薇の野原からまた闘技場に戻った瞬間、自分の首元に剣の切っ先が斬りかかり、間一髪でボスは回避した。
「………どうした、死ぬのが怖くなったか?」
紅騎士が再び剣を構え直し、不敵な笑みを見せながら言った。
「…………デュランタル」
ボソッとボスが呟いた、するとボスが握っている剣もといデュランタルの持ち手の部分から黒い液体のような物がボスの腕に登り、やがてボス全体を包み込んだ、やがてその黒い液体はやがて鎧の形になった。
「不滅の鎧………………」
その様子を見た紅騎士は眉をひそめ、少し声を荒らげてボスに言った。
「貴様…………そうか、そういう事か、貴様も選ばれたわけか、その鎧を見る限りではそうらしいな」
そういうと紅騎士は剣を地面に刺し、しゃがみこんで詠唱し始めた。
「ガラディン!」
紅騎士がそう唱えると、紅騎士が持っている剣の持ち手から火が吹き出した、するとボスの時と同じように火は紅騎士の全身を包み込み、次の瞬間に火は一気に消え、代わりに紅騎士はもともと来ていた鎧にも劣らない真紅の色をした鎧を来ていた。
「どうやらもう小細工は効かないようだな、久しぶりにこの姿で戦うぞ」
そうこの戦いを楽しんでいるような表情をして紅騎士は言った。
対してボスは、さっきから頭の中に直接話しかけてくるデュランタルに耳を傾けていた。
「あの男が持っている剣……………ガラディンね」
「なにか知ってるのか?」
ボスが尋ねると、デュランタルは少しめんどくさそうに溜息をついて、ええ、と答えた。
「ガラディン、私が最も苦手な堅物よ、彼はとにかく礼儀がどうとか忠義がどうとかうるさいの……………はあ」
デュランタルがそう言うと、ボスは頷きながらうすら笑いを浮かべた、あいつにはお似合いだと思いながら。
「火竜の爪【リントヴルム・クロー】」
そうこう考えているうちに紅騎士はもう詠唱をしていた、ついさっきならこの魔法を必死こいてよけていただろう、しかし、今は違う。
「魔法を使うまでもねえ」
そう言ってボスは、向かってくる三本の火の斬撃を切り裂き、火をかき消した。
「不滅の悪夢【インモンタル・ナイトメア】」
今度はボスが詠唱する、すると突如、二つの黒い球体が出現した。
「唱えたはいいけど、これどんな魔法なんだ?」
ボスは呑気な様子でデュランタルに質問した、するとデュランタルはほくそ笑んだ様子で
「ふふ、相手を蜂の巣にするの」
刹那、黒い球体からマシンガンのようにトドドドと細長い黒槍を連射した、つかさず紅騎士はこの攻撃を避けるため、闘技場を円を書くように走り出した、紅騎士の後ろには無数の槍が後を追う、
「ちっ小賢しい、リントヴルム・タリスマン【火竜の護符】」
紅騎士がそう唱え、こちらに向かって走り出した、これを不滅の悪夢【インモンタル・ナイトメア】が漏らさす撃ちまくるが、紅騎士に近づいた瞬間に槍が燃え尽きてしまう。
「おい、魔法効いてねえぞ」
徐々に近づいてくる紅騎士を前に、ボスがデュランタルにそう言うと、デュランタルはしれっと、
「大丈夫、相手の魔法で防げるのは魔法だけだから」
「つまり?」
「直接切りかかって」
「まじかよ」
そう言ったのも束の間、紅騎士は目と鼻の先まで近づき、剣を振りかざした。
ガギン!
つばぜり合いがおき、火花が巻き起こり、次第にその剣戟のスピードは増していった。
カリリィィンッキンッギシャャ
ワァァァァァァァァァァァァ!!!!!
その剣闘を閲覧している貴族や国民からは熱狂と興奮の声が闘技場内に剣闘の金属音と共に響きわたった。
「素晴らしい!あんな剣闘見たことがない!」
「ああ!しかしあの紅騎士様と対等に渡り合うとは、一体何者……………」
色々な声が聞こえる中、紅騎士とボス両者は更に剣戟のスピードを上げ、最後に両者闘技場の隅に離れ、そして次の瞬間
「ダーク・ソレムニティ【暗黒の聖厳】」
「リントヴルム・リファインレント【火竜の洗礼】」
闘技場の地面に二つの魔法陣か形成され、闘技場は光に包まれた。




