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部屋から出てみる

 この物語は主に一人称が主体です。

 定期更新ではありません。完結するかも分かりません。気分次第です。

 日本を舞台としますが、ファンタジー日本です。細かな設定など気にしないで貰えれば幸いです。

 感想やご指摘などは、基本的に返信しません。活動報告で質問などに答える事にしています。

 登場する人物、団体名は全てフィクションですので、あらかじめご容赦下さい。


 以上の注意事項はありますが、それでも読んで頂けるなら幸いです。



 注意書きはこんな物でいいですかね? 急に書きたくなったので書いてみました! もう、他にも投稿している作品があるのに馬鹿ですよねぇ……でもさ、何か書きたくなったんですよ。我慢は身体によくないよね?

 もしも~、~たら、~れば……過去を振り返ってやり直せれば、どんなに良い事か考える事は誰にでもあるだろう。僕、【大谷 優(オオタニ ユウ)】も確かにそんな事を考えた事がある。でも、これは流石に酷いのではないだろうか?


『おぉ、君が平行世界の僕か! なんだか冴えないけど、この際仕方がない。君がまだ高校生らしいから、僕の人生と交換しようよ』


 一人暮らしの僕が、高校から帰ろうとしていると急に電話がかかってきた。その相手の電話番号は、不思議な事に僕の使っている番号と全く同じだった。そして第一声が、先程の言葉である。最初は驚いた。だって自分の声とは違う声が、僕だといって来るんだから。


「あ、あのぉ……何かの悪戯なら止めて貰えませんか。僕はこれから忙しいので」


 嘘をついて電話を切ろうとしたのもあるが、半分は本当だ。僕はアルバイトをしながら生活している。両親の残してくれたお金だけでは生きていけないからだ。


『そんなこと言わないでよ。そこの世界は平和なんだろう? ここは酷い世界だから、僕みたいな頭脳派は評価されないんだ。君は高校生だから常識とか無いだろうけど、社会って酷いんだぜ』


 何をいっているのか理解できない。それが素直な感想だった。けど、電話を切ろうとすると向こうが叫んできた。


『待ってよ! お前年下だろうが! 僕はこれでも二十一だから、大人だからな』


 大人……大人ならもう少し対応という物があるような? アルバイト先の店長はしっかりしているのに、話している相手からはそんな大人な雰囲気を感じられない。


「いったい誰なんですか? 悪戯なら切りますよ」


『本当にムカつくな……これから君にメールを送るからさ、詳しい事はそのメールを見れば分かるよ。簡単にいうと、僕と君の世界を交換するんだ。僕は、平行世界の安全な世界で自分を評価して貰うの! 君は高校生だからここの危険でイカレタ世界を楽しむといいよ』


 二十一歳でこんな事をいうなよ。僕じゃないとしても、二十一歳の僕がこんな事をいっているかと思うと泣きたくなるぞ。そう思いながら僕は電話を切った。一度自宅に戻ってから、会うバイト先に向かわないといけないのだ。



 アルバイトを終えて、アパートに帰宅すると夜になっている。帰りがけに買ってきたコンビニのおにぎりと、お惣菜が夕食だ。冷蔵庫から麦茶を取り出して、それで晩飯を胃に流し込む。お腹が空いているからなんでも美味いのと、成長期で沢山食べられる身体だ。質よりも量が大事だ。


「あぁ、このお惣菜も食べ飽きたけど、これ以外だと量が少ないんだよね」


 独り言をいいながらお惣菜のトレイを片付け、もう一度麦茶を飲む。一人の暮らしがだいぶ慣れてきたけど、今でも時々寂しくなる時もある。中学生の時だ、両親や弟が事故で死んでしまった。


 修学旅行中の事故で、家に帰ると家族はいなかった。そして対面したのは遺体安置室で、家族の変わり果てた姿。あの時は何が何だか分からずに、僕も相当荒れていた。親戚は助けてくれる人もいたけれど、明らかに遺産目当てで集まる連中もいた。そんな連中から少なくないお金と家を奪われると、生活するためにアルバイトをする事になった。


 高校や、無理すれば大学の学費までは出せそうなお金はある。それでも、生活費を考えると、少しでも働かないと不味い状況だった。親戚が面倒を見るといってくれたが、僕は一年ほど凄く荒れていて迷惑をかけ過ぎた。これ以上面倒を見て貰うのは気が引ける。


「それにしても、評価されないから世界を変える? 羨ましい発想だよ」


 アルバイトの前にかかってきた電話を思い出すと、僕は感想を呟いた。今まではそんな事を考える暇が無かったのだ。聞いた時は馬鹿な事を……そう思ったけれど、落ち着いた今ならそれもいいかな? そう思えてくる。家族がいて、家があって、幸せだった時の事を思い出した。


 そして思い出したのだ。あの男はメールを送るといっていた事に……メールアドレスまで知っている事に、僕は不気味に思いながら確認する。そうすると、確かに僕と同じアドレスから受信していた。何とも不思議な光景だ。


「悪戯もここまで来るとなぁ……ッ! 何だよこれ!」


 メールに添付された画像と、そこに入力されたデータを見て僕は驚いた。そこには痩せ細った自分と、昔住んでいた家の自分の部屋が汚れきった画像。そして、窓から撮影したであろう家族の画像がハッキリと写っていた。幼かった弟は、高校生くらいだろうか? 両親も記憶からしたら少し老けて見える。


 そして入力された文章は、想像も出来ない事が書かれていた。


『このイカレタ世界と君の世界を交換する事にした。僕はここでは正しく評価されないし、周りがアホ過ぎて僕が理解できない。それで高校時代の僕がいる平行世界を探して、世界を交換する事にしたんだ。ここまでは理解できるだろ僕なんだから? メールでデータは送るけど、詳しい内容は僕のPCに入っているから。パスワードは……』


 青白い顔をした鏡で見る自分に、僕は驚いて言葉が出なかった。でも、その中には確かに家族がいた。昔住んでいた家があった。その事が僕を惹きつける。また会える……そう思ったんだ。そうすると、僕の身体から光が溢れてきた。


「何だ、何なんだよこれは!」


 慌てるけど、一向に収まらない光。そして薄れ行く意識の中で、僕は何かを左手で掴んだ気がした。



『それは【異能】だよ。平行世界へ渡る時に現れる、チートだと思えばいいさ』


 僕は現在、汚いゴミだらけの部屋に座る場所も無いので立ったまま携帯電話で通話している。時刻はもう日付が変わる前である。画像で見るよりもさらに汚い部屋で、汚れたベッドを見ながらイライラとした気分で話していた。相手は勿論、この世界の自分である。


「いい加減にしろよ! いいから早く僕を元の世界に戻せ!」


『う~ん、無理かな。だってこの世界には魔力も無ければ魔法も無いじゃん。そこの世界から平行世界へ渡る魔法を習得するか、知り合いにでも頼むんだね。あぁ、僕が頼った知り合いは、僕と一緒にこの幸せない世界に来ているから無理だよ』


 頭の痛くなる会話を、もう一時間近くも行っていた。気が狂いそうになるのを我慢して、僕は平行世界の自分に叫ぶ。


「二十一歳で大学にも通わなければ、仕事もしていない! お前何してんの!? 僕は学校もアルバイトもあるんだぞ! そんな所でお前が生きていけるかよ!」


 叫ぶが、向こうにいる僕はあまり驚かない。寧ろ……


『平和な世界だろ? 寧ろ喜んで学校にもアルバイトにも行くね。僕たちはそんな世界を待っていたんだ。君の方こそ気を付けないと生きていけないよ。だって、その世界は……』


 そう、この世界は僕のいた世界と全然違うのだ。先ず、この世界の日本は技術大国であると同時に、資源大国でもある。経済大国は健在で、世界でも類を見ない発展を遂げているのだ。その理由は、日本にある【ダンジョン】が原因だった。


 昔、弟と遊んだダンジョンRPGの世界と現代日本が融合したような世界。それがこの世界なのだ。僕の携帯電話と違って、高価で高性能なスマートフォンには、嫌味のように僕のステータスが表示してある。


「大体おかしいだろ! 働きもしない癖に、なんで職業が【戦士】なんだよ! それも技能なんか一つもない状態で……コメントに『もっと頑張りましょう』とか表示してるぞ!」


『あれ? それはおかしいな……僕の時は『基礎からやり直しましょう』だったよ。君は意外と体力とかある方? まぁ、僕は頭脳派だけどね。それなのに、産まれた時の職業だからって変更不可とか、人生を決めつけられて迷惑してた所だよ。ここはいいよね、自由がある』


 頭が痛い! イライラして部屋を歩き回りたいが、部屋は歩く事も不可能なほど汚れている。


『適当に頑張ってよ。あ! でもPCは大事にしてよ。中にはお宝があるんだ。こっちで新機種のスマホを買うか、PCを買うまでにデータを送れるようになっててくれよ』


「知るかそんなもん!」


 通話を終了すると、息を切らして座り込むのを……我慢した。座る場所も無い。いや、座っていたであろう場所はあるが、座る気が起きなかった。黄ばんでいたし、なんか湿っぽい。


「くっそ……取りあえず片付けてから寝るか」


 時間はすでに一時前である。夜中まで電話で騒いでいたのに、家族が文句をいわないのが不思議でしょうがない。それにしても、何でこんなに壁に穴や殴った跡があるんだ? そう思いながら、寝るだけのスペースを確保するとそのまま寝ようとした。


 だが、何か変な臭いがして眠れなかった。外が雨でなかったら窓を開けていたのに! それでも部屋から出なかったのは、部屋の外にあいつの家族がいるからだ。この世界の自分の家族……僕はどうやって話したらいいのか悩む事で時間を潰した。



 朝、僕は部屋の窓を全開にすると、そのまま深呼吸をした。雨も上がっており、外は少しだけ湿っぽい感じの空気だったが、それでも部屋の空気よりはましだ。時間はすでに六時半、今までの習慣で起きてしまうが、僕はこの後どうするか悩んだ。


 悩んで悩んで、スマートフォンのメールや着信履歴を理由に、この事実を話す事にした。魔法が普及しているのなら、理解はある筈だ。そう思ったから意を決してドアを開けようとする。開けようとするが、何故こんなに鍵が厳重に取り付けられているのか? 自分で取り付けたのか、斜めに取り付けられた鍵が三つもついていた。


「おかしい、おかし過ぎる……」


 そう呟きながらドアを開けると、そこには懐かしい顔がある。今では見る事も出来なくなった母さんの顔だ。少し老けた印象はあるが、それでも忘れる事の無い母の顔は、目を見開いて驚いている。手に持っているお盆には、朝食らしきトーストがサラダやスープと共に乗っていた。


 だが、驚いた顔の母さんは、そのままお盆を落として叫ぶ。


「ゆ、優が、優が……お父さん!!!」


「い、いやこれ、アッツゥゥゥ!!!」


 説明しようとした所で、そのままスープが足にかかる。暖かいスープが足にかかって叫ぶ僕。そして父さんを呼んだ母さんの叫びで、隣の部屋から大きくなった弟が飛出し、階段を駆け昇る父さんらしき足音……それに気を取られていたら、弟が僕の前に現れるなり……


「この屑が!!!」


 殴られて吹き飛んだ僕は、何が何だか理解できなかった。息を切らして乗り込んできたのは、懐かしい父さんだ。だが、その顔は昔に悪さをして怒らせた父親の鬼のような顔である。倒れ込んだ所に、父さんが近付いてくるとそのまま胸ぐらを掴んできた。


 どうでもいい事だが、この時の服装は汚れたパジャマのような格好だ。暗い部屋にいたから気付かなかったのか、気が動転して気付かなかったのか……本当に今思う事では無い。


 そのまま胸ぐらを掴まれると、父さんはそのまま引きずるように僕を部屋から出した。出して、そのまま廊下に投げつけられる。久しぶりに会った家族は、母さんが泣きだして、弟は僕を殴り、父さんは鬼のような形相だ。……僕は何もいえなかった。


 ただただ、家族の顔を見るだけだ。会えてうれしいと思う反面、こんなに怒らした平行世界の僕自身に呆れてしまう。



「散々母さんに迷惑をかけて、恥ずかしくないのかこの馬鹿息子! 毎日毎日、壁を叩いて蹴って……俺はな、情けなくてしょうがなかったんだぞ! それでも母さんがいうから……」


 父さんが仕事に行く支度をしながら僕を怒鳴り、弟も制服を着たらすぐに一階の居間に降りてきて僕を軽蔑した目で見ている。昔は懐いていたというのに……


「評価されないからって引きこもりやがって、お前が兄貴とか俺は最悪だぜ! それに母さん泣かせるわ、働かないわ……何で生きてんのお前?」


「ふ、二人とも! 折角、優が三年ぶりに部屋から出たのよ。もう少し褒めてくれても……」


「お前は甘いんだ! こいつには厳しいくらいが丁度いい、と何度も話し合っただろう!」

「そうだよ母さん。折角出てきた今だから厳しくしないと、また部屋に籠るだろ」


 優しい母さんらしい対応に、父さんと弟が反論する。不謹慎? だが、僕はこの時少しだけ嬉しかった。記憶の中の家族がこうして生きていてくれた事に、涙がこぼれる。


 この時なのかもしれない。僕が平行世界に来たと確信したのは……ただ、いい加減に許して欲しい。引きこもっていたのは僕ではなく、あいつだ! 色々と文句をいわれても困るだろ!


「だから二人とも、優にはもっと優しく」

「帰るまで絶対に部屋に入れるな! こいつはすぐに引きこもるからな」

「父さん、俺は今日部活ないから、こいつの部屋のドア取り外すよ」


 あぁ、嬉しいのか悲しいのか分からない涙が出てきた。

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