## 零細生活者の生態### 第二十一章 四角関係の再来②
「よいしょっと……」
柚希の囁きとともに、
小さな影がテントから這い出してきた。
「おい」
ヨシオは小声で咎めた。
「何してる?」
「寝返り打ったら落ちちゃった」
柚希は無邪気に答えた。
「だからここでもう一度寝る」
彼女はヨシオの毛布の隣に潜り込んだ。
腕が自然とヨシオの胴に巻き付く。
「バカ」ヨシオは顔をそむけた。
「中で寝ろ」
「でも暖かいから」
柚希の呼吸が速くなる。
「叔父さんの匂い……安心する」
さらに—
**バサリ**
第二の影。紗月だった。
「私も……」
彼女は顔を赤らめながらヨシオの反対側に横たわった。
「眠れないの」
「何だこれは?」
は目眩を覚えた。
そして決定打—
**バササッ**
第三の影。
最も大胆に動いたのは花音だった。
「不公平ですわ」
彼女の声は密やかだが強さがあった。
「一人だけ優遇されるなんて」
彼女は巧みに二人の間に割り込み、
ヨシオの胸元に顔を埋めた。
「ちょっ……」
ヨシオは抵抗しようとしたが—
「お願い」
三方向から囁きが届く。
「このままでいさせて」
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深夜の橋の下。
川の流れだけが時を刻む。
左には柚希。右には紗月。中央には花音。
三人の体温がヨシオを包み込む。
「これは……どういう状況だ?」
彼は天井を仰いだ。
「俺は夢でも見てるのか?」
「現実です」
花音の声が胸元で震える。
「逃げないでください」
「逃げるんじゃない」
ヨシオは静かに答えた。
「ただ……」
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次の瞬間、
三人の少女が同時に力を入れて抱きついてきた。
肩を抱かれ、腰に手を回され、膝が絡みつく。
「暖かいですね」紗月が眠たそうに呟いた。
「こうしてると落ち着く」柚希の声が弱々しくなる。
「私たちは離れません」花音が宣言した。
ヨシオは長い息を吐いた。今夜は眠れそうにない。
「わかった」
彼はついに観念した。
「でも約束してくれ。明日になったら家に帰ること」
三つの頭が同時に上下する。
「そして……」
ヨシオは付け加えた。
「このことは秘密にしておくんだ。誰にも言わない」
同意の印に三つの手が同時にヨシオの腕を握りしめた。
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星空の下。
川に映る灯り。
四人分の呼吸だけが夜を彩る。
「俺は何をしているんだ?」
ヨシオは自問した。
「どうしてこんなことに……」
だが答えは明白だった。
彼女たちのぬくもりが教えてくれた—
誰もが孤独に戦っているということを。
そして時々、誰かに寄り添うことでしか癒されない痛みもあるのだと。




