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異世界バディ ー 男装&僕っ娘内政チートなシスコン妹と始める異世界転生無双 ー  作者: こみやし
01.災禍の予兆

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01-03.恋と政治




「おお。参ったか。ラクティ辺境伯」


「ご無沙汰しております。陛下」


「少し痩せたか? 飯は食っておるのか?」


「はい。食事は欠かしておりません。姉にも言い含められておりますので」


「人手が足りねばいつでも申すのだぞ」


「ご厚意、痛み入ります。陛下」


「よいよい。そなたも先代もよく尽くしてくれておる。もちろん、そなたの姉君もな」


「大変申し訳ございません。陛下。我が姉は」


「よい。全て承知しておる」


「寛大な御心に感謝致します」


「すまぬな。不自由をかけた」


「いえ。全ては我が姉の」


「姉君は最善を尽くしてくれておるよ」


「それは何よりにございます」


「今あの者を縛るわけにはいかぬ」


「……仰せの通りです」


「しかし我が息子は見る目があるのう」


「……姉は」


「或いはお主ならば」


「お言葉ですが陛下。我らは平民の生まれです。姉に至っては未だ」


「くっくっく♪」


「申し訳ございません」


「いや、よい。お主らはその力を示したのだ。口にするだけの権利はある」


「感謝致します」


「しかし惜しいのう。欲をかけばすり抜けていくとはわかっていても手を出したくなるものだ。お主らにはそれだけの価値がある。奴も夢中になるわけだのう♪」


「……お戯れを」


「うむ。このくらいにしておこう」


 お人が悪い……。こっちは気が気じゃないのに。


 いつあの奔放な姉が絡め取られるか。はたまた全てを投げ出してしまうか。ステラはどこへ行こうと生きていけるだろう。僕の隣でなくとも構わないのだ。認めたくはないけど。



「出禁の件は息子への罰だ。少々行き過ぎておったのでな。すぐに解こう。代わりに一つ頼まれてはくれぬかね?」


「なんなりと」


「うむ。実はな。息子には伝えておらんのだ」


「……と言いますと?」


「今宵の宴にもその姿で参じるのであろう?」


「はい。……なるほど。そういう事ですか」


「うむ♪ お主には奴を焚き付けてほしくての♪」


 本当にお人が悪い……。



 今宵は第七王女殿下の生誕に因んだ祝賀会だ。


 今現在、王には七人の娘たちと三人の息子たちがいる。


 第七王女は第一王子と歳が近い。それ故か互いにライバル視しているような関係なのだ。どちらかと言うと第七王女の方が突っかかっているだけなのだけど。


 第一王子は女児ばかりが続いた中ようやく生まれた待望のお世継ぎだ。しかも正妃の御子息だ。生まれたばかりの頃はそれはもう、蝶よ花よと甘やかされて育ったそうだ。


 数年早く生まれた程度の兄がそんな扱いを受ける反面、第七王女の母君であらせられる第三王妃は、娘の誕生に酷く気落ちしてしまったそうな。扱いも推して知るべし。兄に反感を抱くのも致し方のないことだったのだろう。


 そんな二人の関係を承知の上で、国王陛下は僕に第一王子と諍いを起こせと唆しているのだ。僕が男装姿でステラと共に祝賀会に参加すれば、必ず第一王子は声を掛けてくることだろう。陛下は僕とステラに恋人のふりをしてほしいのだ。



 実は僕とステラが実の姉妹であることはあまり知られていない。そこまで知っているのは陛下始め数人くらいだ。苗字が違うのもあるし、僕自身、周囲には男性だと思わせているのもある。それ以前に血縁関係を探るのがほぼ不可能だ。僕らを拾った御爺様や育ててくれた集落の皆くらいしか知り得ない情報だ。


 領内の情報通ならば僕が女性であることは把握しているが、少々離れたこの王都や他領の情報に疎い者たちにはそれすら気付かれていない筈だ。あいにくうちの領は嫌われた土地だからね。他国にこそ面していないものの、未開拓領域と呼ばれる、凶悪な魔物たちが跋扈する森に接している。彼らは恐れていると同時に、魔物狩りで地位を守る特異な辺境伯を内心蛮族と蔑んでいる。それでも先代であるお父様は功績が大きすぎたが故に一目置かれてもいるのだけど。それも高齢の者たちだけだ。若輩者からはより顕著に軽視されている。僕が娘か息子かなんて大して興味もないのだろう。そっちは調べれば簡単にわかる事でもあるのだけどね。お父様の時代には隠していなかったのだし。



 ともかく、第七王女の祝賀会で第一王子と諍いを起こせば、当然第七王女の不興を買うことになる。その怒りの程は想像に難くない。陛下はその辺りをフォローしてくれることなんてないだろう。僕がどう対処するかも見たいのだ。


 本当にお人が悪い。たびたびこうやってイタズラめいた指示を出してくる。もちろん陛下には陛下なりの考えがある。ただ徒に子供たちの仲を裂く筈もない。


 なんにせよ。今ここで僕に出来るのは同意する事だけだ。事前にステラの口を割らせられなかった僕の落ち度だ。王都の近況を把握していなかったのは言い訳のしようもない失態だ。ステラも陛下から何か言われていたのかもしれない。あの姉はそういう事をする。惚けた顔で何を考えているのか。



「畏まりました。陛下。仰せのままに」


「うむ♪ 期待しておるぞ♪」


 考えようによっては都合が良い。第一王子からステラを引き離す大義名分を頂いたのだから。もちろん陛下の命は公に出来るようなものではないけれど。


 或いは第七王女も良い気味だと笑ってくれるかもしれない。それよりも第一王子が自身の誕生会で騒ぎ出した事に対して怒りを覚えるタイプか。噂を聞く限り。


 上手く味方に付けるのが吉か。第七王女ならば王位継承争いに巻き込まれる事もないだろう。或いはそれが狙い? 僕たちを後ろ盾にしようとしてる? 陛下は第七王女にこそ期待を寄せているの? それとも僕たちに押し付けて厄介払い、いや、逃がそうとしている? その辺りも探ってみよう。もしかしたら僕の夢の実現に役立ってくれるかもしれないし。


 ふふ♪ なんだか面白くなってきたね♪

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