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異世界バディ ー 男装&僕っ娘内政チートなシスコン妹と始める異世界転生無双 ー  作者: こみやし
01.災禍の予兆

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01-01.仲良し姉妹




「マズいぞ! 奴だ! 奴が来た!!」


「くそっ!! またかよっ!?」


「逃げろ! 焼き尽くされるぞ!!」


「逃げろだって!? こいつはどうすんだ!?」


「そんなの放っておけ!! 命が惜しけりゃぁな!!」


「まさか噂は本当だったのか!?」


「いいから走れ! そうすりゃお前にもわかるだろうよ! 生きて帰れさえすりゃぁな!!」


 屈強な冒険者たちが逃げ惑う。まるで最強種である竜でも現れかのように。……いや。それなら彼らは逃げなかっただろう。街を守る為、大金を稼ぐ為、名声を得る為、彼らは必ずや立ち向かったことだろう。


 しかしこれはダメだ。残り数秒。それでこの地には何一つ残らない。全てが灰燼に帰すだろう。魔物だけではない。周囲の草木の一本たりとて残りはしない。それだけの破壊を齎す者が現れたのだ。人々が何より恐れる最強の存在。現代唯一の赤金オリハルコン等級冒険者。歩く災害。ディザスター。灼炎の覇王。様々な名で呼ばれるたった一人の少女。


 そう。少女だ。見た目は可憐な美少女だ。華美な衣装を身に纏い、クマのぬいぐるみを決して手放さない。何も知らぬ者であれば、世間知らずの箱入り娘と言われても信じることだろう。そんな出で立ちだ。


 彼女はある日突然現れた。またたく間に冒険者の頂点へと上り詰めた。彼女の功績は数知れず。彼女の齎した破壊も数知れず。彼女が通った後には何も残らない。残るのは人の命だけだ。けれどその事実は知られていない。彼女が実は人命を何より優先している事はあまり知られていない。それだけ鮮烈な破壊を撒き散らすからだ。あれは災害だ。人の範疇にないものだ。だから人の心なんて持ち合わせていないのだ。それが彼女の存在だけを知る者たちの印象だ。



「ふふ♪ 避難は済んだわね♪」


『いつも悪いね。今回も頼むよ』


「ええ♪ いつも通りよね♪」


『うん。この森もダメだ。汚染されてる』


「塵一つ残さないわ♪」


『お願いね』



 少女は眼下の森を見下ろした。手のひらを掲げ、巨大な火の玉を生み出した。


 これは最終警告だ。避難を促す為のパフォーマンスだ。冒険者の男たちは死に物狂いで駆けている。後少し。十、九、八、七、六、五、四……。



 火の玉はまるで太陽のように広がり森の上空を埋め尽くした後、そのサイズを急激に縮めて少女の手の平に収まる眩い光球へと姿を変えた。



「零」


 少女は光球を無造作に放り投げた。少女の制御を離れた光球は爆発的に広がった。一瞬、周囲が強烈な光に包まれた。


 直後、轟音と共に火柱が上がる。森の全てを覆い尽くす巨大な火柱だ。隣町どころか遠く離れた王都からだって見えたことだろう。そうして一つの森が完全に姿を消した。




「ひ、ひでぇ……」


「あんまりだぁ……」


「ちくしょう! この狩り場もかよ!」


「ギルドは何やってやがる!? なんであんな奴が野放しになってんだぁ!? これじゃあ干上がっちまうぞ! 片っ端から消し炭にしやがって! いったい俺たちに何の恨みがあるってんだぁ!!!」




----------------------




「戻ったわ」


「お帰りなさいませ。ステラ様。お疲れ様でございます」


「ええ。ありがとう、ヴィオラ」


「ご夕食とご入浴、どちらからになさいますか?」


「うふふ♪ ヴィオラから頂こうかしら♪」


「畏まりました」


「冗談よ。服を脱ごうとしないで頂戴」


「他の者をお呼びしましょうか?」


「冗談だと言っているでしょう。先にお風呂を頂くわ。夕食はアミのお仕事が終わってからにしましょう」


「申し訳ございません、ステラ様。領主様は本日も夕食は摂られぬと」


「呼び出して。お姉ちゃん命令よって♪」


「畏まりました」


 もう。アミったらすぐに籠もってしまうのだから。




----------------------




「困るよステラ。僕は今ダイエット中なんだ」


「あら。そんな必要はないのよ? あなたはとっても可愛いんだから♪」


「可愛いだけじゃやっていけないんだよ。領主ってやつは」


「なら尚の事ね♪ お肉に比例して貫禄が付くんじゃないかしら♪」


「うら若き乙女にそんなこと勧めないでほしいなぁ」


「乙女の自覚があるならお風呂くらいは入りなさい。香水で誤魔化すなんて健全ではないわ」


「普通は領主だって毎日風呂に入ったりしないんだよ。この世界では」


「あらあら。すっかりこちら側に染まってしまったのね」


「嫌かい? 僕らも十六年以上生きてきた。そろそろ前世のことは忘れてしまってもいいんじゃないかな?」


「思ってもないことを言うのね。あなたが何の為に頑張っているのか私が知らない筈もないでしょう」


「当ててみるかい?」


「あなたは帰りたいのでしょう?」


「ハズレ。ダメだね。ステラは何もわかってない」


「なら何故調べているの?」


「この世界の為さ。僕はもっと呼び寄せたいんだよ。ステラみたいな存在をね」


「私一人で十分よ。それとも私の働きに不満があるのかしら?」


「勘違いしないでほしい。ステラ一人に委ねる現状が間違っていると言いたいんだ。君はもっと自由に生きていい。僕はそんな世界が作りたいんだ」


「気にしすぎよ。私も楽しくやっているわ」


「そうかい? ここに来た頃はもっと笑顔の絶えない人だったと記憶しているけれど?」


「笑顔を忘れたつもりはないわ♪」


「ごめんね、ステラ。僕が隣に並び立てればよかったのだけど」


「十分よ。あなた王都で何て呼ばれているか知らないの? いいえ。アミが知らない筈はないわよね」


「過大評価さ♪ 僕はしがない一領主貴族に過ぎないよ♪」


「まあ。惚けちゃって」


「御爺様にもう一度弟子入りしようかな」


「お姉ちゃんが教えてあげるわ♪」


「ダメだよ、ステラ。例え唯一無二の姉妹だからって手の内はそうそう明かすもんじゃない」


「いつもそんなことばっかり言って。アミったらすっかり大人になってしまったわ」


「ステラもね」


「どうかしら? いっそのこと、領主なんて辞めてしまっては?」


「お父様に申し訳が立たないよ」


「呼び戻せばいいじゃない。ご存命なのだから」


「僕を信じて託してくれたんだ。精一杯守り抜くよ」


「手を広げすぎてしまったものね」


「少しばかり調子に乗りすぎたとは思っているよ」


「けれど必要なことなのでしょう?」


「うん。奴らがようやく尻尾を掴ませてくれたんだ。一刻も早く摘み取らないと」


「それがあなたの夢なのね」


「こんなのただの通過点さ。言ったろ? 僕は世界平和が望みなんだ」


「私の為に?」


「それもあるね。何度も口にするのは気恥ずかしいけれど」


「ふふ♪ 可愛い妹だわ♪」


「それは光栄だね。ステラの妹として生を受けたことは僕の今世において何より得難い幸福だ」


「まあ♪ 今日は随分とご機嫌なのね♪」


「というより気を遣っているんだよ」


「ハッキリ言うのね。気にしすぎよ。今更森一つを焼いたくらいで揺らいだりしないわ」


「これも先程言ったことだけど、やっぱり近頃のステラは笑顔が少なくなってしまったから」


「それはそうよ。可愛い妹が食事も一緒にしてくれないんだもの」


「悪かった。ダイエットは諦めるよ」


「ふふ♪ そうしなさい♪」


「なんならお風呂も一緒にどうだい?」


「残念ね。先に済ませてしまったわ」


「もう一度くらい良いじゃないか」


「仕方ないわね♪ そこまで言われたら断れないわ♪」


「よし行こう。すぐ行こう」


「食事が済んでからよ」


「僕はもう食べ終わったよ」


「私はまだよ。次からはよく噛んでお食べなさいな」


「本当に忙しいんだけどなぁ」


「今度はどんな企みごとかしら?」


「近々一緒に王都に行ってくれるかな?」


「構わないわ♪ ボディーガードでも何でも任せなさい♪」


「ダンスパートナーを務めてもらいたいんだ」


「ダンス? 私たちは女の子よ?」


「もちろん僕が男装する。知らなかったのかい? 僕はいつもそうしているんだよ」


「そう。道理で」


「ふふ♪ どんな噂を聞いたのかな?」


「皆夢中みたいよ♪ ご婦人方もご令嬢の皆様も♪」


「それは困ったな。僕には心に決めた人がいるのに」


「まあ♪ それは初耳ね♪ いったい誰のことかしら♪」


「言っておくけど彼ではないよ。あの冒険者の」


「何故クラヴズの話が出てくるの? まさか本当に? これはちょっと問い詰める必要がありそうね」


「ふふふ♪ お手柔らかに♪」


「まあ。からかったのね?」


「ステラこそその後はどうなの?」


「あら? 知らなかったの? 私は可愛い女の子が好みのタイプなのよ♪」


「冗談じゃないだろ。それ」


「まあ? どうしてそう思うの?」


「屋敷のメイドたちが君を影でなんと呼んでいるのか知らないのかい?」


「さあ? そういうのって本人の前では口にしないものでしょう?」


「『お姉様』だってさ。勘弁してほしいよ。ステラは僕だけの姉なのに」


「ふふ♪ 虐めちゃダメよ♪」


「そんなことはしないよ。彼女らも大切な従業員だ。僕がもっと自由に動く為には欠かせない人財たちだ」


「お貴族様も大変ね♪」


「ステラだって立場は似たようなものだよ。僕の献身に気付いてほしいものだね」


「もちろんよ♪ いつも感謝しているわ♪」


「本当に?」


「あなたは大切な妹ですもの♪」


「解像度が足りないね」


「どういう意味かしら?」


「僕は姉さんのファンなのさ♪」


「ふふ♪ 嬉しいことを言ってくれるわね♪」


「本当だよ? 僕の姉さんは凄いんだから♪」


「私の妹だって凄いのよ♪ その若さで王様ですらも一目置く貴族領主様なんですもの♪」


「偶然だよ。お父様が人格者だっただけさ」


「その表現には疑念があるわね。たった十五の娘に全てを押し付けて隠居生活だなんて」


「ほらやっぱり。ここに来た頃の姉さんは誰かに悪意を向けることなんて無かったのに」


「……そうね。今のは失言だったわ。私ったらどうにもアミのことになると冷静ではいられないのよね」


「ふふ♪ 嬉しいことを言ってくれるね♪」


「あなたはこの世で最も大切な存在ですもの」


「そのクマのぬいぐるみよりも?」


「まあ。意地悪ね」


「少し意外だね。妹の方が大切だって即答してくれるかと思ったのに」


「そういう比較は好まないというだけよ」


「それは失礼」


「ごちそうさま。お待たせしたわね」


「いいよ。今晩は寝ないで頑張るから」


「ダメよ。ちゃんと眠りなさい。夜はベッドに入るものよ。その代わり私も手伝うわ」


「絶対ダメ。まつりごとは僕の専門だ。ステラに取られてしまったら立場が無いじゃないか」


「そんな事を気にしていたのね」


「棲み分けは大切だよ。僕は政治こっち。ステラは武力あっち。二人で天下を取ろうじゃないか♪」


「ふふ♪ 大きな野望ね♪」


「後悔はさせないよ♪ どこまでも付いてきておくれ♪」


「まあ♪ まるでプロポーズみたいだわ♪」


「僕はそのつもりだよ」


「ふふ♪ アミはお姉ちゃん子ね♪」


「酷い姉さんだ。また弄ばれた」


「弄ぼうとしたのはアミの方ではなかったかしら?」


「ちぇ~。姉さんのイケズ」


「どうか機嫌を損ねないで。ごめんね。もう少し乗ってあげるべきだったわよね」


「もうそれでいいよ。ほら行くよ。姉さんに背中流してもらうんだから」


「ええ♪ お姉ちゃんに任せなさい♪」

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