04-05.再戦
再び戦争が始まった。戦火はまたたく間に広がった。
敵軍の動きが想定よりずっと早い。既にカラミティは準備を済ませていたのだろう。各地に自身の分身を派遣していただけじゃない。各地のトップを懐柔していたのだ。
彼らは一斉に軍の準備を進め始めた。まるで示し合わせたように同時期に。まるでも何も、カラミティが音頭を取ったのは間違いない。やはりあの子は世界を巻き込むつもりだ。
ベルナールが商人のネットワークを使って集めた情報を元に、僕らはガルディオンの魔石を組み込んだ偵察機を飛ばして確認を進めた。
もちろんカラミティに鹵獲されるリスクもあったが、それはそれで都合が良いと考えることにした。
未だ魂のパスを辿る技術は完成していない。今回放ったのは魔石を差し替えただけの通常の偵察機だ。だからカラミティの居場所が掴めるなら都合が良い。向こうがこちらの情報を抜き取れるのと同様に、こっちだってカラミティの情報を掴めるのだ。悪いことばかりでもない筈だ。
偵察機の操作は全てガルディオンが自ら行っている。流石は長き時を生きた守護竜だ。すぐに偵察機の扱いをマスターしただけでなく、数十機の偵察機を自在に操ってみせた。
それでも世界全てを調べ尽くすには時間が足りていない。だから最低限だ。情報と推測を元に敵の動きを探るだけだ。カラミティを見つけ出すにはやはり別の方法を考えねば。
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「ありがとう。ベルナール。君たちは避難しておくれ」
「何をおっしゃいます! 最後までお付き合いさせていただきますとも!」
「いいや。もう十分だ。君たちはよくやってくれたさ。すまない。これはささやかだが。脱出には何かと入り用だろう」
「見くびらないでいただきたい!!」
ベルナール……。
「すまない。侮辱するつもりはなかったんだ」
「わかっておりますとも! 閣下がそのようなお方であることは!! だからこそ多くの者たちが付き従うのです!!」
……困ったね。
「おい。辺境伯」
目付きの鋭い大柄な女性が口を開いた。
「うちの旦那がやるってんだ。精々こき使いやがれ」
「……感謝するよ」
本当に。
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「あら。ここにお客様がいらっしゃるなんて」
「ふむ。随分と見違えたな。スライムよ」
暗がりから声が返ってきた。人間の老人の声だ。そして不遜な声音だ。
「……あなた何者?」
「なんだ。この顔を見忘れたか」
「っ!? そんな!! どうして!?」
「さてな。儂にはわからぬよ」
「……そう。あの時ね。してやられたわ」
忌々しいトカゲだわ。
「どうしてここに来たのかしら? 全てを思い出したのなら娘の下に帰るべきだったと思うのだけど」
「其の形をしている以上はお主もまた我が娘だ。放蕩娘は躾け直して連れ戻してやろう」
「あら。私に勝てるつもりなの?」
なっまいき~。一度は負けたくせに。
「構えよ。稽古の時間だ」
老人は踏み込み一つで距離を詰めてきた。
「くっ!?」
吹き飛ばされて壁に叩きつけられる。まったく反応出来なかった。どうしよう。この御爺様強すぎる。前回と同じ手は喰らわないだろう。
「付き合いきれないわ」
こういう時は逃げるに限るわね。ここでやるべきことは既に終えているし。
「アデュー♪ 御爺様♪」
「逃さぬ」
また距離を詰められた。
なんなら進行方向に回り込まれた。
「告げた筈だ。躾け直すと」
「あらま」
再び投げ飛ばされる。ぶっちゃけ痛い。今はスライム体なんかじゃない。私は少しでもアミに近づきたい。だから肉体もそのまま真似している。この痛みも人間のものだ。愛おしい感覚だ。正直笑い出したいくらいだ。痛みを与えてくれた御爺様に感謝してもいい。
しかし満喫している場合じゃない。ここで私が捕まるのは得策ではない。まだまだ計画は始まったばかり。分体の一体とて無駄には出来ない。増殖だって言うほど簡単じゃない。各個体が蓄える魔力だって無駄には出来ない。特にこの個体は大切なものだ。少し本気でやらせてもらおう。
「どうか死なないでね♪ 御爺様♪」
魔術を放った。ステラの十八番の爆炎だ。
「ふんっ!」
え!? うそっ!?
「安心しろ。この程度で死にはせん」
なに今の!? どうやってかき消したの!?
「続けよう」
「いいわ♪ 今の教えてね♪ 御爺様♪」
私はもっと強くなる!
姉を倒して妹を手に入れるために!!




