04-01.Calamity - Ami Lacty
「お姉様!?」
「ハロー♪ マリー♪」
「ハローじゃないよ。まったく。他にもっと言う事あるでしょ?」
「あはは~♪ ごめんなさいね~♪ 心配かけたわね~♪」
「その話は後ですわ!」
そうだね。先ずは皆を領都に戻さなきゃ。ステラが来てくれたなら防衛プランの練り直しが必要だ。しかも援軍はステラだけじゃないしね。
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領民たちの保護が完了した後、僕らは再び対策会議を始めた。
「陛下と連絡が取れない?」
「はい。あれ以来一度も」
「ステラは何か知っているかい?」
陛下は偽ステラ……「カラミティ」と名乗った少女の存在を知っていた、或いはステラが敵に回ったと考えたようだった。それにステラは王都から飛んできた筈だ。ならば直前まで王都に居たのではなかろうか。
「……その話は後にしましょう。一先ず心配は要らないわ」
「カラミティは? あいつだって飛べるんだ。向かっているかもしれないよ?」
領主たちの兵では足りなかった。ならば王国の主力を手に入れようと考えるのではなかろうか。
今のステラには魂の秘術に対するカウンターがある。洗脳が通用しないのはカラミティも理解しているだろう。こちらも次は手段を変えてくる筈だ。例えば王一人を洗脳して、間接的に兵を差し向けてくる手段のような。
「その心配も要らないわ。陛下の側には御爺様がいるの」
「御爺様が!? 手を貸してくれているのかい!?」
「ええ。だから順を追って説明するわね」
そうだね。こちらから質問を続けても埒が明かなそうだ。
「少し前。私は御爺様の下を訪れたの」
ステラが姿を消してから……だいたい二、三ヶ月程前の話だね。
「目的はガルディオンの復活」
『……』
そういえば……。
「また随分と可愛らしい姿だね」
フィリーの代わりにステラの膝に座り、大人しく撫でられている子竜。先程は生前の姿そのままだったのだが、気付いたらこんな小さな姿に変化していたのだ。
「私の使い魔になってもらったの」
『うむ』
それは心強い。どうやらガルディオンはステラの唯一の弱点である、細やかな魔力制御にも長けているようだ。……そこは僕の居場所だったのに。ちょっとじぇらしー。
「ガルディオンを陥れた何者かを探るために、どうしてもガルディオンの意識を蘇らせたかった。そのために御爺様のお知恵を借りることにしたの」
「意識どころか肉体まで蘇ってるじゃん」
「いいえ。これはアストラル体よ。お化けみたいなものよ」
あらま。
「そして私の魔力を使って構成された投影体でもある。私はガルディオンの魔石の一部を取り込んだの」
「はぁ??」
やばい。ちょっとキレそう。
「その話は後でね。アミ」
はいはい。大人しく聞きますよ。今はね。
「アミは知っていたかしら? 魔石は魔物にとっての魂であると」
「うん。さっき彼女から聞かされたからね」
どうして二人は同じ知識を持っているのかな?
「あの子はあのスライムよ。アミもよく知っているあの子」
「……まさか」
「そう。あの子は逆のことをしたの。アミの魂の一部を自身に取り込んだのよ」
「いったいいつから!? けど僕は!」
「アミはまだ生きているから。ガルディオンみたいにはならないわ」
それは……。
「ガルディオンが生前の肉体を投影出来たように、あの子もまた、アミの肉体を再現出来るの」
……それで僕の姿なんだ。ステラではなく。
「始めから話しましょう。数百年前。御爺様がこの国の王であった頃の話」
御爺様が……。
「どんなキッカケだったか。誰が原因だったか。それはもうわからない。御爺様はそれを重要視していないから」
……。
「彼らは呪われた。永遠の命という牢獄に囚われた」
そんな……だから……。
「御爺様の目的は呪いを解くこと。そのために研究を続けてきた。長き時を経て尚、自身に付き従う者たちを解放するために。彼らの長き時を終わらせるために」
知らない……僕はそんなこと……聞かされてない……。
「その呪いは原型よ。今魔物たちを狂わせている呪いも同じものなの。正確にはその出来損ない。あの子が各地で実験を繰り返していたのはアミのため。そして何よりあの子自身のため。アミに永遠の命を与えて共に生きるため」
……は?
「何を言って……あの子はステラに懐いて……」
「私に? アミこそ何を言っているの?」
え……。
「あなたはあの子の世話をよく焼いていたじゃない。自らの魔力と魂を分け与え、毎日仲良く暮らしていたじゃない」
「……そんな……はず」
違うよ。逆だよ。僕じゃないよ。ステラだよ。
その……はずなのに……。
「アミが魔力を十全に扱えないのは魂が欠けているからよ」
……そっか。……けれど魂は……魔石は……どれだけ細切れになったとしても、完全に繋がりが失われることはない。
だから魔力の総量は変わらない。ただその魔力を引き出す入口が狭まってしまうだけなんだ……。
「あの子は魔物なの。そしてアミだけじゃない。御爺様の魂の一部も取り込んでしまった。私が旅立つ頃には既に姿を消してから随分と経っていた。てっきりアミを追いかけたのかと思っていたけど、そうではなかった。或いは追いつけたのかもしれない。再会して記憶を弄ったのかも」
いったい……なんのために……。
「そうして世界中で暗躍を始めた。その経緯は私の知るところではないわ」
あの子はずっと見ていたのか……。僕の目を通して。
「フィリーを奪ったのは私をおびき寄せるため。そしてフィリーの中に残ったアミの魂を回収するため。より完全な存在へと至るため。あの子は私を恐れているの。ううん。本当はただじゃれて遊んでいるだけなのかもしれない。あの子は人の心も持っているけれど、それでもやっぱり魔物だから」
「……全ては僕のせいなんだね」
「ええ。私たちの罪よ」




