03-07.黒幕
奴らは全てを奪っていった。
敵軍は人気の無くなった村々を踏み荒らし、略奪と破壊の限りを尽くした。
彼らが進んだ後には何も残らない。精々灰と荒れ果てた土地だけだ。
戦線は伸び切っている。愚かな指揮官は我らの姿勢を及び腰と断じ、兵たちを調子付かせている。
典型的な悪手だ。あの指揮官は禄に軍学を学んでこなかったらしい。あれでは兵站も行き届くまい。
或いは最初から略奪で補給を賄うつもりだったのかもしれない。しかし解せない。どうせなら無傷で手に入れたいとは思わないのだろうか。魔道具以外は眼中に無いのだろうか。
必要なものだけを刈り取って、隷属させた我々にこの地の守護を続けさせるつもりなのだろうか。
我らに絶望を与えることだけが目的で、占領は二の次なのかもしれない。前線に出ている彼らは黒幕の真意なんて想像すらしていないのかもしれない。
そういう意味でなら、彼らは優秀な軍と指揮官と呼べるのだろう。何も考えずに非道を行ってくれるのだ。そうそう出会えはしない貴重な人材だ。よくぞ集めたものだ。洗脳でもしているのだろうか。反吐が出る。
「通信魔道具はそろそろ届く頃かな」
「はい。アミ様。もう直に」
「結構。ならば動くとしよう」
「本当に出られるおつもりで?」
「陛下のお言葉を届けてあげたいからね」
「だからと言ってアミ様が前線に赴かれる必要は」
「必要だよ。彼らの目を釘付けにしてやらないと」
正面から僕が出る。両翼の軍が挟み込む。シンプルだけどこれが手っ取り早い。
「任せて。これでも僕は結構やるもんだよ」
「ならばわたくしも」
「ダメに決まってるでしょ。本部に総指揮官が不在なんて」
「アミ様が残られるべきですわ」
「マリー。どうか聞き分けておくれよ」
「……ご武運を」
「うん♪ いってきます♪」
----------------------
「諸君! 長らくの辛抱大儀であった!!」
本当に待たせてしまったね。よく我慢してくれた。
「敵は我らの故郷を土足で踏み荒らし! 略奪の限りを尽くしてきた!! だが! それも今日ここまでだ!!!」
「「「「「「「うぉぉぉおおおおお!!!!」」」」」」」
打って出よう。我らが故郷を守り抜こう。
『……ラクティ……辺境伯』
届いた! やった! ワンチャン城の結界に阻まれて繋がらない可能性もあったけど! ちょっと荒いけど届いてる!
「陛下! どうか御裁可を!!」
『……なら……ぬ』
は?
『戦っては……ならぬ! 逃げ……延びよ!!』
なっ!?
「領主様! ステラ様が!! ステラ様が現れました!!」
え?
「敵軍に!! ステラ様が合流しました!!!!」
……は?
----------------------
「あら~♪ ふふ♪ やぁ~っと来たのね~♪ アミ~♪」
……。
「いやねえ~♪ そんな風に睨まなくてもいいじゃない♪」
「……誰だお前は」
ステラじゃない。敵軍の上でふわふわと浮いてほくそ笑んでいるあの少女はどう見てもステラじゃない。服や持ち物だけでなく、顔も何もかもがステラと一致するけれど、それでもあれはステラじゃない。僕にはわかる。
「一人で来たの? もしかして時間稼ぎかしら?」
こちらの問いに答える気は無いようだ。
「君は誰だ。何故そこにいる。彼らは仇討ちのために攻め込んできたんじゃないのか?」
そこに真犯人がいるじゃないか。何故この領に侵攻をかける必要があったんだ。
「当然♪ 私が黒幕だからよ♪ 決まっているでしょう?」
今度は答えた。
「決闘を申し込む」
「無茶よ♪ だってほら♪ 見て♪ 私飛んでるわ♪」
……力までステラと同じなのか?
「ステラをどこへやった!」
「私がステラよ♪ アミのお姉ちゃんよ♪ うふふ♪」
こいつ……。
「決闘、受けてあげるわ♪」
気が変わったとでも言わんばかりに近づいてきた。
「私が勝ったらあなたは私のものよ♪」
「僕が勝ったらステラを返せ」
「ふふ♪ それは私が欲しいって意味ね♪」
「お前はステラじゃない」
「まあ。お姉ちゃん悲しいわ」
「お喋りは終わりだ」
「ええそうね♪ 始めましょう♪」




