3無駄だったもの
アフラシュタイン国の貴族はほとんどの人が何らかの魔法が使える。と言ってもランプの火が灯せるとか、お風呂に水を入れるとか、扇であおぐ程度の風とか、主に生活魔法程度。
たまに、火に放ったり強い風を起こせたりする攻撃魔法が使える人もいるが殆どの人は生活で使える程度の魔法で大抵10~15歳前後にその能力が現れると言われている。
だが、私は魔法が使えなかった。いわゆる落ちこぼれ。
でも全く魔力ゼロとは。
学園はほとんどが貴族の子で、そんな中で魔法が使えないと言うのはかなり肩身が狭かった。
元々小心者の私はそれを気にしている事を気づかれまいとした。
でも、好奇な視線や陰口に何度も心を痛めた。それにロイドさえも私を馬鹿にした。浮気する理由にもされた。
悔しかった。けど、言い返したりなんか出来なかった。
入学前には家の事も考えて頑張って勉強をして特待生として入学したと言うのに、私に向けられたのは欠陥品という周りの視線。
辛かった。
でも、父や弟や妹の手前弱音を見せれなかった。
それに私はもともと卒業したら父のように宮廷で働きたいと思っていた。
だから悔しい気持ちや辛い思いを勉強に向けた。経理、言語、歴史などの勉強を必死で頑張った。
おかげで常に主席を確保した。けれど、妬みはいつもついて回った。欠陥品のくせにって言うひそひそした声が聞こえるように囁かれた。
ささやきではない悪意だ。
こんな私だけど卒業後は王宮で警務局に就職が決まっている。結婚するのに?だってロイドは伯爵家の次男。後を継ぐわけではない。ということは父と同じような仕事をするか騎士になるかだろうと思った訳で。
まあ、あれからロイドが騎士になる気だとは聞いているが騎士の試験に合格したか結果は聞いていなかったけど。
私ったら今までは一応結婚するんだからロイドが騎士になったら同じ職場になるから警務局で良かったって喜んでた。
もう今となってはどうでもいい事だけど。
仕事先はきっと騎士隊関係になるはず。もしかしたらロイドと顔を合わせる事もあるかも知れない。気まずいな。
うん?私がそんな事思う必要ある?
そうよ。気にする方がおかしいわよ。あんな奴!!って思うけど、またみんなからいろいろ噂されるんだろうなって思うと気が重い。
そんなの気にしなくていいって思えたらどんなにいいだろう。
そうそう、父は1年前前国王が亡くなり新たに国王となったアインベック国王の側近となり毎日多忙を極めている。
だが、ヴァルト伯爵家に肩代わりしてもらった借金はすべて完済して今では暮らしはずいぶん楽になっていた。だから私が婚約解消したところで別に困る事はないはずなのでその分気持ちは楽だけど。
*~*~*
その昔、父レスターは学園を卒業してこの国で就職をした。帝国に帰るつもりは最初からなかったらしい。それで宮廷で働き母に出会った。そして結婚。
父の生活は平民とほぼ同じ程度で母もその生活に慣れて私が物心つく頃は母も元王女の面影を感じることはなかったと思う。
いつも明るく太陽のような人だった。
だが、そんな母アリソンも4年前に亡くなった。
我が家は王都ルグレイに会って母が国王の妹という事もあって屋敷も譲渡され毎年王族への援助金も入っていた。
それで子供を5人も生んだのかはわからないが、母が亡くなると王族の支援金も父が断った。
そんな中、父が友人の借金の肩代わりをした事で我が家は困窮した。
私の下の弟はアッサム。14歳。金髪で琥珀色の目をしている。母と同じ色。風魔法が使える。
次は双子の妹でアナとアーシャ。8歳で金髪で父と同じ濃い碧色の瞳。まだ魔力は出現していない。
そして一番下の弟がアル。髪色は父と同じオレンジパール、瞳は琥珀色で5歳だ。
私は髪色は父と同じオレンジパール。瞳は琥珀色。アルと同じ色。
その頃、父は王城の経務局の局長をしていて忙しく使用人が子供たちの面倒を見ていた。それで結婚をしたんだろう。
でも、借金が増えると使用人の数も減った。なので必然邸に私も家の手伝いをする事に。
そこからは子守りや食事作り、掃除なども出来る事は何でもやるのが当たり前みたいになって。
学園に通い始めると宿題は昼休みなどを利用してやり、家に帰れば弟や妹の面倒を見た。
食糧だって弟のアッサムがパン屋でパンの耳を貰って来たり、私だって学園の帰り道に野菜や果物のくずを貰って帰ることも度々ある。
服も私の昔の服をリメイクして妹たちの服に作り替えたりもする。さすがに男の子の服は無理なので知り合いからいただいたりしている。
学園で見聞きする令嬢たちの会話に少し羨ましいと思ったこともあるが宮廷貴族の大半は領地持ちの貴族とは違っていたのであまり気にしていなかった。
そんな状態なので着飾ったりドレスを新調することなどなかった。
婚約中にロイドから送られたのはデビュタントの時のドレスだけだった。あの頃は婚約したばかりで私はまだ夢見る令嬢だったけど。
ロイドからもしみったれていると嫌味を言われた事も何度かあったが、あの頃はそんな事も言っていられなかったから。
だからか今でもあるものは何でも利用するという合理主義は身についてしまった。
学園生徒は舞踏会の参加も親と一緒という事になるので参加しなくても良かったし、この3年ロイドからパーティーに誘われたこともなかったからドレスは必要なかったし。
でも、決して平気だった訳じゃない。他の令嬢の婚約者から送られたプレゼントの話とか聞くと羨ましかった。でも、私はロイドにプレゼントが欲しいなんて言えなかった。
それにしてはイザベラやスーザンはドレスを作っていた気がする。どこからお金が?まあ、父も気を使っていたんだろうけど。
ふん、何もしないくせに?いや、あの人たちは他人だから。
帰り道、私は一人そんな事を考えていた。
彼との事は全くの無駄だったって事だ。いや、無駄ではなかった。我が家はヴァルト家の支援に助けられたのだから。
ただ、私の恋心だけは無駄だった。
そしてイザベルとスーザンも。
空しかった。




