27私すごく幸せです(最終話)
アンディ殿下が下に降りたがったのでそっと下ろすと。
「ごめんなしゃい。おとうさまゆりゅしてくだゃしゃい。おねぎゃいしましゅ」
アンディ殿下がぺこりと頭を下げて誤った。
キャディ公爵令息がアンディ殿下の前に跪いた。
「一国の国王陛下と殿下がそこまでされてはもう何も言えませんね。どうやら私の誤解だったようです。彼女は幸せ者ですね。これほど愛されているなんて‥さあ、皆さんパーティーを楽しもうではありませんか」
「ありがとうございます。キャディ公爵令息」
「とんでもない。これからは仲良く付き合いをしていきましょうアリス。僕のことはスロートと呼んで下さい」
屈託のない破壊的な笑顔で彼が言った。
アインベック様とお父様はそんな彼を威嚇するように眉間を寄せたが。
「はい、スロート様、よろしくお願いしますね」
この一言で帝国とアフラシュタイン国の関係はぐっと深くなった。パーティーは大成功をおさめて終わった。
あの後部屋に戻りながらアインベックから耳打ちされた。
「アリス君は心変わりなんかしてないだろうな?俺の事好きだよな?」
「もちろんです。この世で一番愛してます。あっ、でも、一番はアンディ殿下やうちの弟や妹たちですね。アインベック様は2番で我慢して下さい」
「いや、そこはみな同じ一番って言うべきだろう?俺は世界中でアリスが一番好き‥いや、アンディも一番だな‥二人とも一番好きだ。な‥」
彼がしょんぼりして部屋に戻った。可愛そうになった。
「ほら、アインベック様だって‥でも、男としてならあなたが一番好きです」
「そうか、男をして俺が一番好きか!ハハハハハ」
アインベック様は笑いながら私を抱いてくるくる回った。
二人で並んでソファーに座る。
「なぁアリス、そういう事になったとみんなに知られたんだ。もう、遠慮しなくていいな。今夜も俺と一緒に寝るだろう?」
「いえ、さすがにそれは‥弟たちに何て言えば良いんです?あなたと一緒に過ごすのは結婚式が終わってからに決まってます。さあ、私はお父様と一緒に帰りますので後はよろしくお願いします」
「じゃあ、明日会えるか?」
「明日は仕事です」
「そんな、婚約しただろう?」
「では、デートに誘ってください」
「ああ、では、明日の夜ディナーを王宮でその後は俺の寝室に行こう」
「それってデートじじゃないです」
「それはわかっている。でも、劇場とか行く暇がない。だからおうちデートだ」
「そんなの」私はちょっとむくれて言う。
「そうだ!アリス仕事をやめてくれ。アンディの子守りがいないだろう?だから、しばらくアンディの世話を頼めないか。デートは無理でも、それなら昼食を一緒に食べたりお菓子を作ったり、どうだ?楽しいと思わないか?」
「それなら我が家の弟や妹も一緒に」
「ああ、一緒に住もう。みんなで家族になろう。庭でバーベキューなんかもいいな。そうだ、庭に遊具を作るか。一緒に遊べば楽しいだろう?」
楽しそうに話をするアインベック様についついつられて私もそう思ったのだが。
それはだめだと父様が譲らなかった。
後日談になったが、父からはキャディ公爵となったヘンリーは一番父をいじめていた王子だったらしい。国王になったトマス王子は王太子ということもあり常に勉強や武術などに忙しくそんな余裕もなかったらしい。だから父はスロートがあれ以上ごねるならねじ伏せるつもりだったと言った。
父様、うれしいけどそれはだめよ。でも、アインベック様があんな真摯な態度を取ってくれた事にはすごく感激した。
何だか愛されてるって気がしてすごくうれしかった。
それから我が家は新たな子守りやメイドを雇うことになった。私は仕事をやめて王妃教育にいそしむ日々の合間に、アンディ殿下や陛下とも一緒に過ごし、夜には我が家に帰る。いつものようにアルたちの様子を見て休むという生活が半年続きやっと結婚式。
誓いの言葉の後、アインベック様からの熱いキス。会場が盛り上がる中アンディ殿下が登場して言った。
アンディ殿下はアインベック様に抱っこされて「アンディ、練習しただろう?」
「うん、えっとねぇ、ありしゅじゃなくちぇ、おかあたまこれからよろしゅくおねがいしましゅ」
ぺこりと下げられたおつむのてっぺんがほんの少し跳ねていて、私はその髪を優しく撫ぜる。
「アンディ、こちらこそよろしくね。これからはお母様として甘えてくれると嬉しいな」
「おかあたま~」
その瞬間涙がぽろぽろっとこぼれ落ちた。
「おかあたま?いちゃいでちゅか?」
心配そうに瞳が揺らいで私は溜まらずアンディを彼から奪い抱っこした。
「違うの。アンディのお母様になれてうれしいの。だから‥大好きよアンディ」
「ぼくもだいしゅきでちゅ」
アンディは私の頬にキスをしてくれた。
そこで会場から大拍手が沸き起こり結婚式は終わった。
結婚して王宮に移るのは寂しかったけど、いつでも会える距離だしアンディもいるから。
何よりアインベック様といれる。
アッサムはヴェストル帝国に留学を希望し、アーシャとアナも女学園の寮に入る事になった。
残ったアルが寂しがって結局父様とアルは王宮に住むことになった。
庭にはブランコが作られガーデンパーティーの為のかまども出来た。
アルとアンディは兄弟のように毎日一緒に過ごしている。
ロイド様は辺境の鉱山の労働刑になりスーザンは修道院に送られた。
ミレイユさんは妊娠が分かり仕事は休職していてケビンさんは前にもまして張り切っている。
時々王都に出向いて八百屋のドアンさんやパン屋のシキムさんの店に立ち寄ると残り物じゃない売り物の新鮮な野菜や焼きたてのパンを持たせてくれる。
街を歩けばみんなが声を掛けてくれる。こんな王妃がいてもいいのかなって思うけどアインベック様はうれしそうにアリスはいつまでのそのままでいいと言ってくれる。
本当にあの時ロイドと婚約破棄して良かった。すごく傷ついたけど今はその分幸せ。
卒業式の日に偶然アインベックが我が家に来て、その後偶然アンディに会ってロイドに襲われたと思ったら彼と結ばれて、偶然にしては出来過ぎよね。
これって絶対運命だったんだと思う。
今回もたくさんの方の応援ありがとうございます。もう少し短めの予定でしたがやっと最終話を迎えることが出来ました。また次回作も頑張りますのでよろしくお願いします。はなまる




