26ガーデンパーティー2
アインベック陛下に手を取られて一段一段と上がって壇上の上に立った。
ひそひそ、あちらこちらから声が。
「まあ、陛下の新しいお相手が決まったらしいわ」
「いきなりで驚くわね」
「でも、お相手は王族のサンバイン伯爵家、やっぱり血筋で選んだって事かしら?」
「何でも、アンディ殿下をすごく手なずけているって噂よ」
「小娘と思ってたらとんだ女狐だったってわけ?」
「見て、陛下ったらいい年をしてあんな若い娘に鼻の舌を伸ばして‥いやねぇ」
「こんないきなりって事は‥すでにお腹に‥」
「皆さん、あんまりくだらない事は言わない方がいいんじゃないんです?陛下の耳が人一倍いいのは皆さんご存知のはず?」一人の女性がそう言った。
「まあ、大変!陛下はそう言う特技もお持ちだったわね」
途端に雲の子を散らすように令嬢たちが散らばって行く。
「アリス気にするな。俺たちは相思相愛。最高のパートナーだからな」
「はい」
このくらいどうってことないわ。学園時代に散々噂された事を思えば‥まさかあんな経験が生きるなんて‥
アインベックの言葉に後押しされて国王と一緒に並ぶ。
ファンファーレが鳴りアインベックが挨拶をする。
「今日、わが国にヴェストル帝国の使節団をお迎えしてその歓迎のパーティーを開くことになった事を心よりうれしく思う。今後は帝国との関係を更に深めてこれからの両国の信頼を築いて行きたいと思っている。ヴェストル帝国からお越しの皆さんどうかゆっくりパーティーを楽しんでもらいたい。個人的な報告になるがこの場を借りて報告がしたい。私は二度目の結婚をすることにした。お相手はアリス・サンバイン嬢。知っての通り彼女と私は従兄妹の関係だが、彼女のすばらしさにこの先の人生を共に歩む決意を固めた。幸いにも第一子のアンディもアリスに非常に懐いていて結婚生活の不安もない。どうか、私達の門出を祝福して欲しい」
そして割れんばかりの拍手が起こった。
「アインベック国王陛下、ばんざい!」
「ご婚約おめでとうございます」
「おめでとうございま~す」
そんな歓声の中一人の男がアインベックの前に出て来た。
「陛下。これは一体どういうことです?私は彼女に婚約を申し込むつもりだったんですよ。陛下、あなたは昨日アリス・サンバイン嬢は心神喪失状態にあると仰いましたよね?うそだったんですか?」
これって‥
ヴァストル帝国の最も権力のあると言われているキャディ公爵家の嫡男が怒りを露わにして文句を言った。
私はまじまじと彼を見る。
って言うか、彼も私と同じオレンジパールの髪じゃない。それに瞳は憧れのエメラルドグリーン。うわ、なんて綺麗なの。
父様から聞いてはいたけど(ヴェストル帝国の王族はオレンジパールの髪色で瞳はエメラルドグリーン何だ。私は平民の母の色を貰って平凡な色だったがなって言ってた)
「まあ、彼って端整な顔立ち。それに意外と王族らしからぬはっきりとしたものいい。好感が持てるわ」
「アリス?!まさか、俺よりあいつの方がいいのか?」
心の中でつぶやいてつもりが‥
「まさか‥昨日あなたに純潔を奪われたばかりなのに?そんなこと思うわけ!!」
それに思わず凄い事を口走ってしまった。
「サンバイン嬢?まさか無理やり?許せません。あなたはこんな男と一緒になるべきではない。良ければ私が助けるが?」
スロート様が走り寄って来て私の手を取ろうとする。
「いえ、誤解です。私は無理やり奪われたわけでは‥」
「いえ、あなたは私の従兄弟なんです。どうも話がおかしいと思ったんです。後は私に任せなさい」
グイっと手を掴まれた。
「いえ、本当に誤解なんです!どうか、その手を離して下さい」
アインベック様はがぜん敵対意識を発揮する。
「いくらヴェストル帝国の公爵令息でもそれは困ります。婚約者も嫌がってる。さあ、その手を離してください」
国王陛下の左側には護衛騎士が詰め寄る。反対側にはヴェストル帝国の護衛が。
いきなりお父様が走り出て来た。
「キャディ公爵令息、その手を離してもらいたい」
パ~ンとふたりの手の間に手が振り払われた。
お父様がこんなに感情をあらわにするなんて珍しい。きっと、さっきの純潔発言で頭に血が上ってるんだわ。
「お父様何もそこまでしなくても」
「いいや、この際はっきり言っておくがアリスをヴェストル帝国の者と一緒にさせる気はない。悪いが諦めてくれ!」
「まあまあ、どうせアリスは私と婚約したんだ。もう、そんな話はやめないか」
何だか雰囲気がすご~く悪い。どうしたらいい?気まずすぎる。
「あとうたま~ぼくもぱーちぃでるでちゅ」
突然アンディ殿下がケビンに連れられて乱入して来た。
アンディ殿下いいところに。まさに神の助け。
私は二人の手を振り切りアンディに駆け寄る。
「アンディ殿下、そんなに走っては転んでしまいます。さあ、私が抱っこしましょう。まあ、正装がとってもお似合いですね。うふっ、可愛い」
思わずアンディ殿下の頬にキスをする。
「おねえたま、くちゅぎゅちゃいでちゅよ~うふふふ‥」
アンディ殿下がクッション材となって空気は一気に和やかになる。
アインベック様がキャディ公爵令息の肩を軽く叩いて手を取るとがっちり握手を交わすような格好になった。
「いやぁ、これは大変失礼した。キャディ公爵令息勘違いをさせて悪かった。昨日の時点では私も彼女を口説いている最中だったもので、恋敵は一人でも減らすべきだと思ったんだ。何といってもアリスは魅力あふれる女性だ。もし、会わせて君がアリスに一目ぼれでもしたらと気が気ではなかった。私はこの小さなアフラシュタイン国の小心者の国王なんだ。これだけはわかってほしい。私は帝国の強大な力を持っているキャディ公爵家の嫡男であるスロート君と対抗しようなどという気はさらさら持ち合わせてはいなかった。ただ、恋する男のしがないヤキモチがあんなうそを言わせただけなんだ。それに昨夜あった事は全くの予想外のことだった。でも、結果的にアリスと婚約出来る事になれて俺はすごく幸せ者だと思う。誤解をさせた事許してほしい」
アインベックは驚くことに素直に非を認めて彼に謝った。
「私からも誤解があったようで申し訳ありません。でも、これからは親族でのお付き合いを是非させて頂けるとうれしいですわ。ほら、お父様も」
「まあ、そう言うことだ。失礼した」
キャディ公爵令息は矛を収めてくれるといいけど。




