16アンディ殿下の看病2
それからアンディ殿下に絵本を読んでいるうちに一緒に寝てしまった。
「あ、あり、す。くっ、かわい、すぎ、る‥‥」
いきなり何かの気配でパッと目を開けた。
あれ、ここはどこだ?うん?すぐ横に小さな子がいて大人より高い体温を感じて‥
がばっ!
「うおっ!アリス。いや、起きたか。こ、これはアリスが良く寝てたからつい声を掛けずらくて、なっ」
「あ、アインベック陛下?どうして‥私は‥あっ、すみません。アンディは?」
アンディはぐっすり眠っていた。小さな腕がしがみ付くように私の腕にある。
「こんな穏やかなアンディは見たことがない。いつだってぐずって寝るのもカミルを困らせるんだ。一人になると恐がるし、母親がいないと思うとついわがままになってしまう。いけないと分かってるんだが‥このままではアンディの為にもならないって思ってるが、再婚となるとなぁ‥」
「あっ‥そうですね。アンディには母親が必要ですね。陛下、きっといい人が見つかりますよ。陛下もアンディも愛してくれる女性が」
「そうかもな。でも、最初の結婚は政略だった。だから今度こそは想い合った人と一緒になりたいと思うんだ。そうすればきっとアンディも受け入れてくれると思うから」
「ええ、そうですね。陛下もしかして好きな人が?」
「ああ、彼女は俺たちのそばにいてくれるって約束してくれたんだ。だから、思い切って告白してみようかって‥」
もう日が暮れかかり窓から入る光は薄っすらと紫色帯びている。そんな中、アインベック陛下の顔はすごく嬉しそうで、また照れ臭そうにはにかんだ顔がやけに眩しい。
こんなに彼に思われている女性って幸せだな。
もう、そんな約束までしてるなんて、だったら私お邪魔じゃない?その人にアンディの看病をしてもらった方が。
いやいや、アンディは病気。今すぐ知らない女の人の看病は嫌がるかも。
まあ、今後はなるべく距離を置いた方がいいのかも。
私はそんな事を瞬時に脳内で決める。
「失礼します。そろそろ夕食が出来上がってありますが」
サーニャが知らせてくれた。
「そうね。アンディもそろそろ起こした方がいいですね。少しでも食べれるといいんですけど」
「アリス、俺もここに一緒にいてもいいか?」
「ええ、もちろんです。お父様が一緒ならアンディも喜ぶでしょうから」
運ばれて来たのは、コンソメスープのゼリー、マカロニグラタン、プリン。プリンの上にはたっぷりの生クリームも乗せてある。
「アンディ?そろそろ起きなきゃ」
私はアンディの身体をゆっくり揺すって目を覚まさせる。
「う~ん、むにゃむにゃ・・あしゃでちゅか?」
「良く寝てたからね。アンディは私と絵本を読んでいて寝ちゃったんですよ」
アンディは目をこすりながらも起き上がった。
「ねちゃっちゃだでちゅか‥ありしゅと?」
「ええ、ほんとは私は寝ちゃいけなかったんですけど、アンディと一緒だと気持ち良くて‥つい」
「ぼくもでちゅ」
「お腹空いてます?そろそろ夕食ですよ。料理長が張り切っておいしそうな料理を作ってくれたんです。せっかくです。頂きませんか?」
アンディを抱っこして運ばれた料理を見せる。
「うわぁ、ゼリーのなか、ねこしゃん、ましゅね」
「ええ、ねこさんオレンジ色です。こっちは犬さんです。黒色は何でしょうね?」黒い食べもの?何だろう。トリュフかな?子供にトリュフ?
「ぼく、ねこしゃんたべまちゅ、ありしゅいぬしゃんたべちぇ」
おっと、そう来たか。
「はい、じゃ、一緒にいただきます」
「父様も一緒に食べるぞ」
陛下がコンソメスープゼリーを取ってくれる。
「まずはアンディ、あ~ん」です。
「あ~ん」
満足そうな顔でゼリーが口の中に入って行く。
「‥ちいでしゅよ。ありしゅも‥とうたまあ~んしちぇ」
はっ?アンディ何と言うことを!
アインベック。どうしてそんな嬉しそうな顔で私を見るんです。
「仕方がないな。アンディがそう言うなら‥アリス。はい、あ~んして」
「えっ?そんなの‥わかりましたよ。あ~ん‥ごくり、うん?冷たくておいしい。するりとしたのど越し、野菜とチキンの味が素晴らしくマッチして何とも言えない美味しさが‥黒いの、ああ、これは‥えっ、もぐもぐ・・甘酸っぱい美味しさで‥プルーンですね。って意外と合うじゃないですか!」
「アンディ、黒いのはプルーンだって、アリスは説明がうまいな。すごく美味しそうだ。じゃあ俺も‥そうだ、アリス俺にもあ~んしてくれ」
「そ、そんな。不敬ですよ」
そう言ったがアンディはその様子を楽しそうに見ている。
「とうたまあ~んしゅるでしゅね。ふふふ」
ぎくり。これはやるしかないのでは‥‥
アインベックは口明けて今か今かと待ち構えている。
ああ、もう、仕方がありません。
「では、失礼して‥陛下「アリス。そこはアインベックで!」
「ひっ、はい。アインベック様。あ~ん‥」
金色のコンソメゼリーを一口スプーンで掬って彼の口の中に滑り落す。
スプーンを引こうとするとその手をぎゅっと握られて‥一緒にスプーンを口から引き出される。
「‥‥うん、これはほんとにうまいな。意外とプルーンがあうな」
「ぼくもほちいでちゅ」
アンディいいことを言った。
「はい、アンディにも今度はプルーンのほうをあ~んです」
こうやってアンディとアインベックに交互にあ~んする羽目になった私。
グラタンやプリンも同じようにあ~んしながら食べ合って‥
まあ、アンディが喜んでたくさん食べてくれて良かったし、今夜は一緒に寝て欲しいとせがまれてお泊りすることに。
今頃アルは寂しがってるかな?ううん、久しぶりにお父様と一緒に寝れて大喜びしてるだろうな。
アンディ殿下が一人で寝ていると聞いて驚いた。まあ、一人しかいないんだしお母様もいないんだから‥まして陛下は忙しいんだろうから。
「アリスありがとう。アンディがすごく喜んで‥あんなアンディ初めて見た。おかげで助かった。今夜だけじゃなくこれからはずっとこんな時間が持てたらいいんだが‥どうだろうアリス。考えてくれないか?」
「アンディのお世話ですか?私も仕事がありますし‥いえ、出来ることはお手伝いしたいと思ってますが」
「いや、そういう意味じゃなくて‥いいんだ。またゆっくり話そう。今日は疲れただろう。アンディももうこのまま寝るだろう。ゆっくり休んでくれ。もし、夜中に何かあったらいつでも呼んでくれて構わないから‥じゃ、おやすみ」
「はい、おやすみなさいアインベック様」
アインベックは私の額にそっとお休みのキスをして部屋から出て行った。なぜかこぶしを握り締めて。
私はその夜、隣で無邪気に眠るアンディを抱きしまたまま眠った。
陛下はどういうつもりなんだろう?思い合ってる人がいるならその人とアンディを近づけるべきじゃない?私、お邪魔なんかしたくないのに。
そりゃ親戚の一人としてアンディとは遊んだり手伝いをするのはいいと思うけど。
あんなこと言われたら私、勘違いしますよ。ってそれはないか。




