13やる気なら買うわよ!
数日後、昼食を友人エリナ・フォルナー子爵令嬢と一緒にする事になっていた。彼女は王宮で書記官補佐として働いている。
前回は卒業式の後だった。あの時はロイドがしつこくてあの後カフェで悪口を言いまくった。
あれからロイドは何度か屋敷に来たけど、お父様が護衛を付けてくれて結局ロイドも諦めたみたい。
もう、ほんとにしつこいんだから。
それにイザベラ様はどこかの商人に囲われているなんて噂も聞くし、そう言えばスーザンはどうしたんだろう?卒業式に見かけてからは一度も会ってない。
王宮のすぐ近くのカフェで待ち合わせていた。
「アリス、ごめん待った?」
「ううん、今来た所」
私達は、道沿いの明るい席に座り早速人気のパンケーキとお茶を頼んだ。
「何でもここのパンケーキって言うのが人気みたい」
「そうなんだ。もし家でも作れそうならアルたちに作りたいな。作り方とか教えてくれるかな?」
「もう、アリスったらいつだって弟の事ばっかり、アリスは可愛いんだしきっといい人がいるわ。だから」
「エリナ、私もう男は、こりごりなの。うちにはまだ4人の手のかかる弟や妹がいるし、今はそっちで手いっぱいよ」
「まあ、それがアリスのいい所だものね。そんな家庭的なアリスの良さがわってくれる人がきっといるはずよ」
「私の事はいいから、エリナこそどうなの?」
「私?今は仕事を覚える事で手いっぱい」
「そうよね。男なんか構ってる暇ないわね」
「ふふふ、そうね」
ふたりで笑い合う。
パンケーキがテーブルに運ばれて来た。私達はしばしクリームとフルーツがたっぷり乗ったおいしそうなパンケーキに見惚れていた。
すると私の横をスーザンとその連れの友人が通った。私の斜め前の席に座った。すぐに友人と話を始めた。
スーザンは私に気づいたみたい。ちらりとこちらを向くとすぐに顔を反らした。
「それでどうなの?彼とは」友人がスーザンに聞いた。
「もう、リリーったら彼ったら私に夢中なの」スーザン。
「スーザン、あなた子爵家元に戻るんでしょう?だったら彼と婚約したらいいじゃない」
「ええ、そのつもりよ」
スーザンがこっちを見てほくそ笑んだ。
うそばっかり。って言うかロイドが嘘をついているのかもね。
まあ、どうでもいいけど。
私はパンケーキを頬張りながらエリナに話しかける。お行儀が悪いけどまあいいか。
「あいつこれまでに何人も浮気してたじゃない。もう、次を探してるらしいわ」
「もう?婚約破棄までして慰謝料も払ったばかりだって言うのに?」
「まあ、早くしないといいところの令嬢はすぐに埋まるだろうから必死みたいよ」
スーザンが唇を噛みしめてこっちを睨んでいる。でも、これほんとだから。本気で爵位が戻って来ると思ってるの?信じられないけど。
「まあ、出て行った人とは終わったみたいだし、アリスにやり直そうって言ってたのに?」
「そんなのありえないわよ。それに思ってた当ても外れたみたいだしね」
「えっ?ああ、ルフナート子爵家?当たり前じゃない。あなたのお母様は王族お父様も帝国の王子なのに。ったく舐めてもらちゃ困るわよ!」
「もう、エリナったら言い過ぎよ。まっ、あんな男と婚約破棄で来て良かったわ。ほんとあの子が誘惑してくれて助かったわぁ~」
ふん。少しは懲りた?
ばたばたばたばた!
バシャ!!
スーザンが真っ赤な顔で私に紅茶を掛けた。すでに冷めていたので火傷はなかったがちょっとどうしてくれるのよ。このワンピース染みが残るじゃない!
「あなたが何かしたんでしょ!私が子爵位を授かれないように。卑怯よ!」
「卑怯?婚約者を誘惑して奪うのは卑怯じゃないと?ふざけないで!ぐちゃ‥」
私は残ったパンケーキをぐしゃりとスーザンの顔に押し付けた。
「表で見えたからってわざわざ入って来て嫌味を言える立場?あなた不敬にも問えるのよ。私はこれでも王族の一員なのよ。ご存知ないのかもしれないけど‥いえ、知ってたわね。それであんなことまでして奪ったんでしょう?ねぇ、あいつを二度と私に近づけさせないで、邪魔なの。しっかり餌を与えて繋いでおいてくれなきゃだめじゃない。じゃ、お願いね。エリナ帰りましょうか。ああ~せっかくの休日が台無しだわ!」
私は席を立つ。
スーザンは店員が持って来たタオルで顔を拭くと今度はテーブルに会ったカップを思いっきり私に投げつけようとした。
「おっと、それは危険行為だろう?これ以上店の中でこんな事をするなら騎士隊に連行させるが」
「こ、こくお「アリス、俺は従兄妹のアインだろう?いいからここは任せろ」‥‥」
アインベック陛下がどうしてこんな所にいるの?
スーザンは国王とは気づかず食って掛かる。はぁ、知らないわよ。不敬で首が飛んでも‥
「何よこいつ!こんな奴まで連れてるなんて卑怯よアリス!」
あなたが人の気持ちを逆撫ぜるような事を言うからじゃない。文句の一つも言いたかったけどあなたはもういなくなってたくせに。どっちが卑怯なのよ。
ピキピキピキ!!
私はアインベックの前に出てスーザンに指を突きつける。
「卑怯?スーザンあなたが売った喧嘩じゃない!まだ文句があるの?私からあいつを奪っておいてどの口が言うのよ。言って見なさいよ。ほら、早く。言いなさいよ!!!」
「な、なによ!‥リリー帰るわよ!ったく!!」
「おい、二度とアリスに近づくな。今度はただじゃ澄まさないからな。。いいか?わかったな!」
スーザンはアインベック陛下にも追い打ちを掛けられて走ってカフェを出て行った。
アインベック陛下が私を見た。
「いやぁ~アリス、カッコよかったぞ!」
きっと私の眉間には青筋が立っていただろう。何てこと‥‥
「冗談きついですよ‥」
私は顔から火が出るほど恥ずかしくなったのは言うまでもない。




