第七話「終わりと少女」
ーー村の異変
森を抜けた先にあったのは、小さな村。
だが―
「……静かすぎる」
人の気配がない。
風の音だけがやけに大きく聞こえる。
そして。
「……助けて」
微かな声。
四人が振り向くと、そこに立っていたのは―
水色の髪の少女だった。
震える指で、腕を押さえている。
「お願い……」
「このままじゃ……」
彼女の腕には、黒い紋様。
脈打つように光っていた。
ーー終止符、接近
「なるほど」
空から、声が落ちてきた。
「やっぱり、ここに来たか」
巨大な影が、村の外れに降り立つ。
人型兵器。
その肩に立つ男が、笑う。
その時少女が口を開く。
「フィナーレ……っ!」
空気が凍る。
九条が前に出る。
「……デカブツか」
「嫌いじゃない」
だがその時。
少女が膝をつく。
「っ……!」
「呪いが……」
フィナーレは肩をすくめる。
「動力源だからね。止めたきゃ―」
「僕を殺すしかない」
ーー天音、初めて撃つ
「……だったら」
天音が、一歩前に出た。
「俺がやる」
「おい、無茶だ」
零も止めに入ろうと−
「天音、まだ使い方―」
「いいから!」
天音は前を見据え、叫んだ。
「―来い!!」
その瞬間。
空気が裂ける。
銀色の光が、手元に集まる。
「これが……!」
アルギュロス=シルヴァリス
矢が、形を成す。
天音は思わず叫んだ。
「―天之銀矢命!!」
「だから名前長いって!!」
放たれた矢は―
音もなく消え、
次の瞬間、兵器の装甲を正確に撃ち抜いた。
「……っ!?」
フィナーレの兵器が、明らかに動揺する。
が、致命的ではない。
フィナーレも動揺を見せはしたが、すぐに嬉しそうに話しだした。
「僕の兵器に傷をつけるなんて、やるね」
「いいね、君らを敵だと認めてあげる」
「僕はセクステット第6位【終止符】フィナーレのコニシーだ」
「さ、楽しもう」
天音と九条が攻撃を仕掛け、零が演算をし、的確な指示を出す。
早乙女は零と章を守るように魔法を展開して攻撃を防いでいる。
そんな均衡がしばらく続いた。
ーー急変
消耗してきたところにそれは来た。
巨大な兵器が、地面を揺らしながら歩を進めていた。
砲身が展開され、無数の魔力反応が集束していく。
「……っ、まずい」
九条が歯を食いしばる。
「一発でも直撃したら、村ごと消し飛ぶぞ」
フィナーレは空中で腕を広げ、愉快そうに笑った。
「いいねぇ……」
「やっぱり君たち、思ったより面白い」
「だからさ―」
「ここで終わりにしよう」
その瞬間。
戦場の周りに、さらに“同型”の兵器が次々と出現した。
一体、二体、三体、……六体。
「……は?」
天音の声がひっくり返る。
「増えたんだけど!?」
「最初から出し惜しみしてただけさ」
フィナーレは軽く指を鳴らす。
「これで終わり。まとめて消えてよ」
ーー絶望の一瞬
次の瞬間。
無数の砲口が、同時に光った。
「来る……!」
天音が、矢で撃ち抜いていくが、数が多すぎる。
早乙女が結界を張るが、軋む音がする。
「無理だ、押し切られる!」
少女が、震えながら叫んだ。
「やめて……お願い……!」
だが、フィナーレは笑うだけだった。
「君はもう役目を終えた」
「安心して。痛みは一瞬だよ」
光が、放たれる。
―その瞬間だった。
「……待て」
零の声が、妙に静かに響いた。
周囲の音が、すっと遠のく。
彼の視界に、数式が溢れ出す。
弾道。
加速。
衝突角度。
魔力干渉率。
「……見える」
「全部、見える……」
天音が叫ぶ。
「零!?」
零は一歩前に出た。
「フィナーレ」
「計算したことある?」
「“偶然”が重なる確率を」
指先を、わずかに動かす。
「俺は今―」
「その確率を、変えた」
ーー運命改変
光が放たれる。
本来なら、全員を消し飛ばすはずの一斉砲撃。
だが―
軌道が、歪んだ。
ほんの数センチ。
だが致命的なズレ。
「……は?」
フィナーレの顔から、余裕が消える。
「な、何をした……!?」
砲撃は互いに交差し―
次の瞬間。
自分たちの兵器に直撃した。
爆発。
衝撃。
連鎖。
「――っ!?!?!?」
巨大兵器が、次々と誘爆していく。
「ば、馬鹿な……!」
フィナーレが初めて叫ぶ。
「そんな計算、できるはずが―」
零は、静かに言った。
「“できるはずがない”を」
「できる側に回っただけだ」
ーー終止符
爆煙の中。
フィナーレの身体が、ゆっくりと崩れ落ちる。
「……く、くく……」
「なるほど……」
「君たちが……」
そう言い残し、消えた。
同時に。
少女の腕の紋様が、光を失い、消える。
ーーカノン
静寂。
膝から崩れ落ちる少女を、天音が支える。
「……終わった?」
カノンは、震えながら頷いた。
「……はい」
「もう……聞こえない……」
ゆっくり顔を上げる。
水色の髪が揺れ、涙がこぼれる。
「私……カノンって言います」
「ずっと……怖かった」
「でも、あなたたちが……」
彼女は深く頭を下げた。
「一緒に、行かせてください」
「私、少しは役に立つと思います、ヒエレイアなので」
零は少し考え、頷いた。
「歓迎するよ」
天音も笑う。
「回復役、超重要だし」
九条は腕を組みながら言った。
「……守る価値はあるな」
こうして――
ヒエレイアのカノンが、仲間になった。
水色の髪の毛の美少女っていいですよね




