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学徒、異世界転移す。  作者: Harun
第二章「使徒」
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第七十六話「決着」

ーー最大出力


戦闘開始から約十八分。


抉れた地面。崩壊した高層建築。焼却痕と、増殖した根が入り混じり、景観は生命と破壊がせめぎ合う戦場へと変貌している。


その中心で。


純白の神機――セリオンが、巨木のような蔓を斬り裂いた。


剣の軌跡に沿って、白熱した焼却線が空間を走る。


無数の虫が蒸発し、植物が炭化して崩れ落ちる。


だが、そのすべてを押し返すように、生命の濁流は止まらない。


アピロゾイオスが空中に浮かび、静かに腕を振る。


「……見事だ」


「ただの道具ではないな」


セリオンの内部。


零の視界には、数百万単位の生命反応が立体的に表示されていた。


演算層は限界寸前。


神経同期値が、危険域に迫っている。


(……まだ)


零が歯を食いしばった、その瞬間。


空間が歪む。


セリオンの左後方に、光の転移陣が展開された。


次の瞬間。


そこに――テニカが現れる。


零の瞳が、わずかに揺れた。


(来た)


アーティファクトが完成した。


言葉にしなくても、理解できた。


アピロゾイオスが、ゆっくりと視線を向ける。


「……“技術”か」


その声音に、わずかな警戒が混じる。


直後。


零の意識に、柔らかな思念が触れた。


――大きな隙を作って。


――そうすれば、終わらせられる。


零は、短く息を吐く。


「了解」


次の瞬間。


セリオン内部に、警告表示が灯る。


【稼働出力 制限解除】


【神経同期 最大化】


【停止まで 約二十五秒】


零の瞳が、静かに細まる。


「……十分だ」


セリオンの背部ユニットが、咆哮するように展開する。


羽状演算装置が高速回転し、光の数式が空間に展開される。


次の瞬間。


セリオンが――消えた。


否。


超加速。


巨体が残像を残し、アピロゾイオスの目前へ出現する。


剣が振り下ろされる。


アピロゾイオスが、腕を掲げる。


無数の蔓が盾となり、衝突。


衝撃波が都市を揺らす。


「焼却連動――重層展開」


剣が裂いた蔓の内部から、白熱した光が爆ぜる。


再生が、間に合わない。


アピロゾイオスの眉が、初めてわずかに動く。


「……!」


次の瞬間。


セリオンが左腕を展開。


装甲がスライドし、内部から演算砲が露出する。


「射線固定」


熱線が放たれる。


アピロゾイオスが咄嗟に高度を上げる。


だが。


背後から。


背部ユニットが分離し、回転。


多角的な焼却波が、逃げ道を封鎖する。


虫の群れが盾となる。


しかし、蒸発。


生命が、間に合わない。


アピロゾイオスが両手を広げる。


地面が裂ける。


超大型の根が、槍のように突き上がる。


「予測済み」


セリオンが回転。


巨剣が、円弧を描く。


根が粉砕される。


残り時間表示が――減る。


【残り 十五秒】


零の呼吸が、浅くなる。


だが。


攻撃は、止まらない。


セリオンが突進する。


踏み込み。


斬撃。


焼却。


演算誘導。


すべてを同時展開。


巨体とは思えない速度で、連続攻撃が叩き込まれる。


アピロゾイオスが、初めて後退した。


空間に、生命の壁を何層も展開する。


だが。


セリオンの剣が、それを貫く。


【残り 八秒】


アピロゾイオスが、低く呟く。


「……想定以上だ」


彼の背後で。


巨大な蔓が螺旋を描きながら伸びる。


零は、構わず踏み込む。


セリオンが腕を伸ばす。


あと、わずか。


届く。


【残り 三秒】


アピロゾイオスの瞳が光る。


次の瞬間。


背後の蔓が、爆発的に収縮。


彼の身体を絡め取り――


超高速で、空中へ。


零の剣が、空を裂く。


届かない。


【残り 零秒】


その瞬間。


零が叫んだ。


「天音!」


―――――


崩壊した高層ビル。


瓦礫の影。


そこに――天音は立っていた。


テニカが転移した瞬間。


零により、運命は僅かに歪められていた。


半ば強制的に、意識を引き戻された身体。


万全ではない。


視界は霞む。


呼吸も乱れている。


だが。


その瞳だけは、死んでいなかった。


ずっと、機会を待っていた。


遠すぎる距離。


聞こえるはずのない声。


それでも。


零の叫びが、聞こえた気がした。


空中へ打ち上げられるアピロゾイオス。


勝利を確信した、無防備な姿。


天音が、静かに呟く。


「……アクラトス」


光が、収束する。


その手に――弓が顕現する。


長弓。


純銀の紋様が、弓身を走る。


天音が、矢を番える。


銀の矢。


アクラトスによって、極限まで底上げされた一射。


「――天之」


弦が、震える。


音は――なかった。


次の瞬間。


矢が、消えた。


そして。


蔓が、裂ける。


アピロゾイオスの腕が――貫かれる。


銀の軌跡が、空間を穿った。


アピロゾイオスの瞳が見開かれる。


「何が起こった!?」


制御を失う。


空中で姿勢が崩れる。


そのまま――落下。


そして。


地上に降り立ったテニカが、静かに両手を掲げた。


「――起動」


「バシレイア・アポクリュフォス」


彼女の前に、巨大な箱型アーティファクトが展開される。


幾何学紋様が、空間を包み込む。


光が、広がる。


虫が。


植物が。


そして――


アピロゾイオス自身が。


抗う間もなく、光へ引き寄せられる。


圧縮。


封入。


収束。


最後に。


静寂が訪れた。


箱の表面に、封印紋様が浮かび上がる。


戦場に残ったのは。


焦土と、静かな風だけだった。

アピロゾイオス戦はこれで終了です!

いやーこれが使徒!他にもたくさんいるなんて恐ろしいですね!

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