第六話「ついに」
――白の世界と、神を名乗るもの
それは、旅があまりにも順調すぎた日のことだった。
森を抜け、街道を歩き、特に大きな戦いもなく−
四人はいつも通り、雑談しながら進んでいた。
「なあ、今日なんか平和すぎない?」
天音がそう言った、その瞬間。
視界が――白く染まった。
「……え?」
足元が消える。
音が消える。
空も、地面も、何もない。
あるのは、ただ白。
「ちょ、ちょっと!」
零が声を上げたが、その声すら吸い込まれるように遠ざかる。
次の瞬間。
二人は、真っ白な空間に立っていた。
ーー神・エンドゥー=ロリヘリメース
「……やあ」
前方に、人影。
白いローブ。
穏やかな笑顔。
そして――
「……円堂?」
天音が思わず口にする。
目の前に立っていたのは、
どう見ても同じクラスの円堂にそっくりな男だった。
「正確には違うけどね」
男は軽く手を振る。
「僕はエンドゥー=ロリヘリメース」
「この世界の“管理者”みたいなものさ」
「……神ってやつ?」
エンドゥーはにこやかに頷く。
「うん、まあ。神でいいよ」
「説明すると長いから」
「今日は君たち異世界転移者に“力”を渡しに来ただけ」
「いや説明省くなよ」
「というか、見た目が完全に円堂なんだけど」
「それは君たちの認識がそう変換してるだけ」
「安心して。中身はちゃんと神だから」
「逆に怖いわ」
ーー零の覚醒― マキナ=ノイマノス
エンドゥーは零の前に立った。
「君は、元の世界で数学が得意だったね」
「……まあ」
「論理、計算、推論」
「世界の構造を“式”として見る才能がある」
エンドゥーが指を鳴らす。
その瞬間、零の視界に―
無数の数式、確率、軌道、因果の線が浮かび上がった。
「……っ!?」
「君に与えるのは――」
《マキナ=ノイマノス》
「高性能演算能力」
「そして、“運命改変”」
「運命……改変?」
「確率を操作するだけ」
「100%を101%にはできない」
「でも、10%を30%にはできる。確率が低いものほど大きく変えられる」
零は息を呑んだ。
「……それ、相当やばいね」
「うん。だから使いすぎると壊れるよ」
「さらっと言わないでよ!」
ーー天音の覚醒― アルギュロス=シルヴァリス
次に、エンドゥーは天音の前へ。
「君は……そうだね」
「反射神経、集中力、瞬間判断」
「元の世界では、卓球が得意だった」
「……なんで知ってんだよ」
「神だから」
エンドゥーが手を掲げる。
白銀の光が集まり、一振りの“弓”のような形を作る。
「君に授けるのは」
《アルギュロス=シルヴァリス》
「目で捉えられず、概念すら貫く銀の矢」
「狙ったものは、必ず射抜く」
「……え、強すぎない?」
「うん、かなり」
天音は少し考え、腕を組む。
「じゃあさ」
「この技、名前つけていい?」
「はぁ…」
「好きにして」
天音は目を輝かせた。
「よし」
「――天之銀矢命」
沈黙。
数秒。
「……長」
「え、かっこよくない?」
「世界観」
「うん、ちょっと浮いてるね」
「神にまで言われた!」
ーー現実へ
「力は与えた」
「でも、使いこなせるかは君たち次第」
エンドゥーは一歩下がる。
「あと―」
「仲間を大事にしなよ」
「君たちは、ひとりで戦う運命じゃない」
その言葉と同時に、視界が反転する。
光。
風。
そして―
「……おい!」
九条の声。
気づけば、元の森の中だった。
天音と零は同時に息を吸う。
「……今の、夢?」
「いや……」
手を見つめる。
そこには、確かに“何か”が残っていた。
「なあ」
「俺さ……なんか撃てそうな気がする」
「撃つなよ、絶対撃つなよ」
遠くで、九条が言った。
「……嫌な予感しかしない」
「それな」
四人の旅は、
ここから“本当に”動き出す。
次回、別視点です




